小川フミオのモーターカー

広くて長い、カッコイイ車の基本形 ランボルギーニ・エスパーダ

  • 世界の名車<第222回>
  • 2018年8月6日

全長4740mm、全幅1860mm、全高1185mmの2ドアボディーは四つのシートを持つ

広くて長い。これがカッコいい自動車のひとつの基本形である。そう確信させてくれるのが、「ランボルギーニ・エスパーダ」だ。

ガラス面積が大きく後方視界も確保されている

創業者はフェルッチョ・ランボルギーニ。イタリアのエミリオ・ロマーニャ州のブドウ農家に生まれ、戦後、農業用トラクターの製造販売に乗り出した。

この州にはモデナやパルマといった都市があり、グルメにはプロシュットという生ハムやパルミジャーノ・レッジャーノチーズ、クルマ好きにはスポーツカーで知られる。

食材とクルマが有名になった背景には共通点がある。この州出身者が機械製造にたけていたことだ。生ハムには機械式スライサー、パルミジャーノチーズには巨大なチーズの塊を運ぶリフトが欠かせない。

もとは、中世の十字軍のための携行用食料製造販売を契機に大きく商業が栄えていった同州だけに、道具や機械づくりが早くから盛んになったそうだ。

このアイボリーの内装色はなんとも豪華

「私にとってのロールスロイス」とフェルッチョ・ランボルギーニは言ったとか

そんな伝統を受け継いだといえる一人が、フェルッチョ・ランボルギーニだ。1963年に「アウトモビリ・ランボルギーニ」を設立。きっかけは一説によると、フェラーリにある。

ランボルギーニは自分が購入したフェラーリの不調に満足な対応をしてもらえなかったことから、フェラーリをしのぐクルマを作ろうと決心したという“伝説”があるのだ。

凌駕(りょうが)しようと思ったポイントは性能と、そして企画力。ぼくが思うに、後者がとくに60年代のランボルギーニ製品を特徴づけている。

その代表例が「ランボルギーニ・エスパーダ400GT」だ。コンセプトは4人乗りの高性能GT。ライバル視したフェラーリは2人乗りのスポーツモデルしか作っていなかった。

3929ccのV12エンジンをフロントに縦置きした後輪駆動

全長4.7mに対して全高1.1m。そこに340馬力(のちにさらにパワーアップ)の4リッターV12エンジンである。当時のイタリアの自動車界には、こんなコンセプトのクルマはなかった。

室内を広くするためルーフを長くとっているが、けっしてバランスが崩れていない上手なデザイン

マルチェロ・ガンディーニが手がけたスタイリングはしびれるほどカッコよかった。ロングフードに低いノーズ。長くて低くて広い。スポーツカーのモチーフをうまく使っている。

大きな4灯式ヘッドランプや、躍動感のあるウィンドーグラフィックス(サイドウィンドーの輪郭)がそこにうまくマッチしている。マッチョな雰囲気もあるし、優雅さも感じられる。

内装もぜいたくで、当時、タン(薄いベージュ)の革で覆われたシートやダッシュボードは、日本にいる僕(たち)には夢のようだった。

実際にエスパーダ400GTは人気が高く、78年まで10年にわたって生産が続けられた。

フェラーリは76年に4人乗りの「400」を発表。これはこれでいいけれど、ピニンファリーナのデザインはエレガントすぎて、エスパーダの迫力にはかなわないと思う。

タイヤ径は15インチといまの水準では軽自動車なみだが、ボディーが薄いので大きく見える

いまでも、時々海外のクラシックカーのイベントでエスパーダに出会う。地をはうようなスタイルの魅力は、発表から50年たったいまでも衰えていない。

1999年からフォルクスワーゲン傘下に入ったランボルギーニはスーパースポーツカーメーカーになり、ごく最近まで2シーターモデルしか作ってこなかった。

2018年に「ウルス」というSUVを発表して話題を呼んでいるが、ぼくとしては、エスパーダの現代版を作ってほしいと思っている。スポーツカーメーカーには低くて広い、カッコいいクルマがいちばん似合うではないか。

画像提供=Lamborghini

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PROFILE

小川フミオ(おがわ・ふみお)

写真

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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