マッキー牧元 うまいはエロい

<60>快感を覚える細いうどんに熱々の揚げ物、背徳感たっぷりの昼間の酒(難波「き田けうどん」)

  • 文・写真 マッキー牧元
  • 2018年8月28日

シンプルなうどん「素ぶっかけ」

そば屋で昼酒。ノンベなおじさんにとっては魅力的な言葉の響きである。

例えば、「神田まつや」や、日暮里の「川むら」あたりに行くと、昼から幸せそうに飲んでいるおじさんたちがいる。明るいうちから飲むのがいいのか、人が働いている時間に飲むのがいいのか。その背徳感が、酒をおいしくさせるのか。昼からやっている居酒屋とは違い、そば屋には昼から堂々と酒を飲んでいいという不文律があって、後ろめたさも少ないように思う。

ところが大阪では、そば屋でなく、うどん屋で昼酒といくらしい。真っ昼間に「き田けうどん」にいくと、そんな人が大勢いた。うどんをつるっと食べて帰るつもりだったが、こりゃあ負けていられないと思い、ハイボールを頼んでしまった。

サクサクの「鳥カツ」

「鳥カツ」と頼み、ハイボールで迎え撃つ。サクッと揚がった熱々の鳥カツをかじりながら、ハイボールを飲んでのどを鳴らす。

酒がすすむ「ちくわ天」

お次は「ちくわ天」を迎え撃つために、滋賀の「松の司」を頼んだ。こちらも揚げたてアツアツに歯を立てれば、「カリッ」と衣が音を立てむっちりと甘いちくわに包まれる。

「ふふ。うまいなあ」。思わず笑みこぼれて、さらに愛知の「長珍」を追加注文する。なにしろカウンターに座ると、酒のケースが目の前にあるのだから困っちゃう。米のうまみを感じさせ、きちんと熟成したキレのいい酒ばかり並んでいて、やんなっちゃう。ああ、昼から幸せだあ。

店内には種類豊富な酒が並ぶ

隣のオヤジも、日本酒の二杯目を追加注文した。そろそろここで、うどんといこうか。「素ぶっかけ」を頼み、たまご天を追加する。

「素ぶっかけ」にたまご天を追加

「つるるるるぅっ」。その細いうどんが、唇を高速で通り過ぎて、上あごを刺激する。

「ああ。気持ちがいい」。うどんを食べたのに、おいしさより気持ち良さが先行する。細いうどんは、唇と上あごをくすぐって、潜在的快感を呼び込む。

たまご天をばっくり割ると……

たまご天を潰し、ぶっかけ汁に溶け込ませながら、「ずるるるるぅっ」。粘度と甘みが少し増した汁が細うどんにからんで、これまたたまらない。高速で入ってきたうどんをかみ締めると、8~9回ほどで口の中から消えていく。そして小麦の香りだろうか。甘い香りの余韻を残す。

そして気づいた。細うどんは、太うどんより軽快で色っぽさもあるので、日本酒のさかなとしてもいけるではありませんか。これは足りません。「きざみうどん」を追加し、長珍もお代わりした。

追加で注文した「きざみうどん」

きざみうどんのお揚げは、大阪風のそれよりお揚げの味のにじみ方が、淡い。だからその分、うどんの淡い味を引き立てる。

「ずるっ。つるるるるぅっ」。うどんを食べるのにちゅうちょしてはいけない。一気に、脇目も振らず、ただひたすらうどんを愛して食べ進む。大阪難波、昼酒の幸せが満ちていく。

き田けうどん

き田けうどん

大阪の讃岐うどんの草分け的存在であった、難波千日前の「釜たけうどん」(去年閉店)の創業者木田武史さんが、今年3月に開店させた店。「釜たけ」時代はもっと太く、うどんはゆっくりと口元に登ってきて、噛み締めながら、うまさを確かめたが、今回は4mmという細うどんである。日本酒の揃えも実に素晴らしい。

【店舗情報】
大阪府大阪市浪速区難波中2-4-17
06-7509-4392
南海電鉄「なんば」駅より徒歩4分
営業時間:11:00~15:00
定休日:月曜

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PROFILE

マッキー牧元(まっきー・まきもと)タベアルキスト&味の手帖編集顧問

写真

1955年東京生まれ。立教大学卒。年間幅広く、全国および世界中で600食近くを食べ歩き、数多くの雑誌、ウェブに連載、テレビ、ラジオに出演。日々食の向こう側にいる職人と生産者を見据える。著書に『東京・食のお作法』(文藝春秋)『間違いだらけの鍋奉行』(講談社)。市民講座も多数。鍋奉行協会顧問でもある。

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