トルコ通貨危機で金急落「買い時か」 経済アナリスト・豊島逸夫氏が解説[PR]

  • 2018年8月27日

予期せぬ金価格の下落を受け、近ごろ金を買い求める人が増えているという。その理由と今後の見通しについて、経済アナリストで金の専門家である豊島逸夫さんに緊急寄稿してもらった。

経済アナリストの豊島逸夫さん

猛暑の夏。日本の貴金属店頭は時ならぬ金地金・金貨買いブームの様相を呈しています。金の小売価格が急落したからです。理由はトルコ通貨危機。トルコリラの年初からの下落率はなんと4割。円相場に置き換えれば、100円が140円の円安になったようなものです。でも、経済危機になると金価格は上がるのではないの? 当然、素朴な疑問が湧きますね。事の真相はこうです。

外為市場は、そもそも外貨の両替。トルコリラが売られるということは、どこかの通貨が買われることになります。それが米ドル。今、米国経済は「一人勝ち」と言われるほど絶好調だからです。いろいろ批判されますが、トランプ流の大型減税、インフラ投資が効いているのですね。そこで動いたのがNY市場の通貨短期投機筋。ドルが買いだ、となると、金も売ってドルに換え、てっとり早く一もうけ狙いに動いたのです。

ところがNYの金売りを冷ややかに見て、安値を拾い地味に買いに動いているのが、中国やインド。NYの先物に対して、こちらは金の現物取引。NYは短期売買で差益狙いですが、現物取引のほとんどは長期保有。そもそもNYの先物金売りは、現物を持っていないのに、例えば1年後に現物の受け渡しをするという約束で契約上、金を売るという行為です。「カラ売り」と呼ばれます。約束の期日までには現物の金を調達せねばなりません。従って、先物の売りは必ず買い戻される宿命にあります。ゼロサムゲームとも言えるでしょう。

対して、現物のほうは長期保有ですから買いっぱなし。1年後に先物はチャラになって何も残りませんが、現物の買いは残ります。

更に重要な点は、トランプ大統領の経済政策で、中間選挙の後も米国一人勝ちの絶好調が続くかということです。ばらまき財政のツケを清算せねばならない時期がいつか来るでしょう。トランプ氏の言い分は、経済が良くなれば税収も増えるから問題ない、というものですが、果たして計算通り事が運ぶものか。トランプ流「ちゃぶ台返し」を散々見てきた市場は懐疑的です。結局、財政赤字が増え、国債が増発され、世界の投資家がドルを手放すことになるかもしれません。そうなれば、ドル買い・金売りに動いている投機筋も、ドル売り・金買いに転換せざるを得ません。プロの用語で、持ち高をひっくり返すという場合です。

要は、トランプ大統領を信じられれば、ドル買い・金売り。それほど楽観的になれなければドル売り・金買いということでしょう。

私もプロとして金相場見通しを聞かれますが、当面弱気、中長期的には今が底値圏と答えています。それ以上、細かく、いつが大底かと聞かれても、それは分かりませんよ。相場に占いの水晶玉など無いことを、身にしみて経験してきていますから。

ですから、個人投資家の皆さんへのアドバイスも、「金はまとめ買いせず、毎月コツコツ積み立てで」。自分自身も「有言実行」しています。

そもそも世界中でトランプ相場がどうなるか、正確に読み切れる人などいません。これは断言できます。だってトランプ自身がどうなるか分かっていないのですから。それゆえ、自分だけトランプ相場に出遅れたと焦る必要も全くありません。焦ってプロのまねをして余計な売買に手を出して、もうかるのは手数料稼ぎの業者だけですよ。

今、株式の世界では、「コツコツ積立型商品」が注目されています。でも、金の世界では1980年代から「純金積立」が普及していました。ですから「株式市場も、分散購入のメリットがやっと分かってきたか」という気持ちですね。

インドの金宝飾店頭。文化的に花嫁の持参「金」として大量に買われる。「婚家との不和」という家庭内有事への備えとして

なお、今世界の市場を揺るがしている中東地域は、中国・インドと並び金の一大消費地です。「世界の火薬庫」と言われるほど政情不安なので、金がサバイバルのため必須の実物資産と見なされています。トルコのエルドアン大統領は「金を持っているなら売り払ってトルコリラに換えよ」と愛国心に訴えますが、国民は軽くスルー。シリア難民には、小さな金塊をボタンのように布で包んでさりげなく着用する事例が見られます。まさに着の身着のままで金だけ持って脱出というイメージですね。

更に、ブルカと呼ばれる女性の黒の民族衣装の下は、ゴールドジュエリーずっしりだったりもします。宗教上肌をさらせないので、せっかくの金宝飾品を着用した姿を人には見せられない。それでもゴールドを買うのは「自己満足」以外の何物でもありません。それほどに文化的に金選好度が高い民族なのです。こういう金需要は根強いですね。

トランプや米国経済といった話とは別の次元で、単に安くなれば有事の備えとして金を買い増しておく、という発想です。それゆえ、市場では「バーゲンハンター」と呼ばれます。金価格の下値は中国・インド・中東のバーゲンハンターにより支えられているので、「鉄板」。セミナーで「金が下がるシナリオ」を聞かれますが、私は「アラブの人たちや中国人が金嫌いになる日」と笑って答えています。

【プロフィール】
豊島&アソシエイツ代表・経済アナリスト
豊島逸夫さん(としま・いつお)
スイス銀行チューリヒ・NYでの豊富な相場体験をもとに金の第一人者、そして国際経済のプロとして活躍中。
公式HP http://toshimajibu.org/

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