キャンピングカーで行こう!

改めて考えたいキャンピングカーの安全 荷重とタイヤとシートベルト

  • 文・写真 渡部竜生
  • 2018年8月29日

旅を「安全」にするのは、普段のちょっとした心がけ次第。旅先で使うテント、ストーブ、アウトドアテーブル、BBQグリル……、荷物の重量と積む場所について考えてみよう

この夏、高速道路を走行中のキャンピングカーが横転、1人が亡くなり2人が重傷を負うという痛ましい事故が発生しました。亡くなった方のご冥福とケガをされた方の早期回復を心からお祈りします。

朝日新聞掲載の記事によれば、茨城県の常磐自動車道を走っていたキャンピングカーには5人が乗っていました。3人が車外に投げ出され、26歳の女性が頭を強く打って死亡、ほか2人も重傷を負いました。茨城県警は、右後輪がバーストしたため、運転していた男性が左側の路肩に寄せて停車させようとしたものの、ガードワイヤに衝突して横転したとみています。

この事故を受けて、キャンピングカー製造・販売の業界団体である一般社団法人日本RV協会は公式Web上に「8月5日の車両事故について」という文章を掲載しました。その中で、ユーザーに対しタイヤ点検を行うよう注意を促しています。

報道されている以上の詳細がわからないので、「タイヤを点検していれば事故が防げたのか」どうかはわかりません。もちろん、RV協会が推奨するとおり「タイヤの点検」は非常に重要ですが、こうした重大事故を防ぐために、改めて考えなければならないことはたくさんあると思うのです。

キャンピングカーはバーストしやすい?

車を買えば、タイヤはついている。当たり前すぎて考えたこともないかもしれません。では、そもそもメーカーがタイヤを決める際には、何を基準にしているのでしょうか。それは車軸の許容軸限度(設計値)に基づいて選ばれるのです。

例えば、シングルタイヤのカムロードならば、許容軸限度は前軸1800kg、後軸1850kgです。これに対し、装着されているタイヤは「195/70R15 106/104L」という規格のものになります。

このタイヤは、空気圧が600kPaの時に1本あたり950kgの荷重に耐えられますから、950kg×左右2本=1900kgで、前後の軸の許容限度より大きな性能があることになります。つまり、車もタイヤも設計値の範囲で使っていれば「問題がない」はずです。

では、なぜ「キャンピングカーはバーストが多発する」などという話になるのでしょうか。

ダイネットでも走行中はシートベルトをしっかりしめよう! 後部居室内の座席にシートベルトがない場合、後付けできないかどうか、ビルダーに相談してみよう

空気圧の管理不足に注意

キャンピングカーに限らず、クルマをお持ちの読者の方におたずねします。最後にタイヤの空気圧をチェックしたのはいつですか?

「毎月必ずチェックしてます」という方は少ないのではないでしょうか。私自身、お恥ずかしながら数カ月に一度がいいところです。それでも、乗用車でバーストしたなんて話は少ないと思いませんか?

実は乗用車の場合、タイヤの許容荷重にかなり余裕がありますから、少々空気圧が低くても問題になりにくいのです。その点、キャンピングカーは架装のこともあり、言うなれば「常にフル積載」の状態。かなりシビアな条件なので、空気圧が少し減っただけでもトラブルになりやすいのです。

では、「空気圧を少し高めにしておけば大丈夫」かといえばさにあらず。タイヤのサイズごとに上限の空気圧は決まっており、それ以上の空気圧にしても耐荷重は上がらず、むしろバーストの危険(過去掲載記事)が増してしまいます。

こういう説明をすると「キャンピングカーの空気圧管理は非常に繊細で、素人には危ない乗り物なんですね!」と思うかもしれませんが、決してそうではありません。大切なことは、愛車の『適正値』を知り、その範囲で乗る意識を持つこと。根拠のない自己判断をせず、愛車が「適正な状態にあるかどうか」を、乗用車より少しだけマメにチェックする。それだけでかなり違うはずなのです。

キャンピングカーで発生しがちな危険な状況を考えてみましょう。

過積載

実はこれが一番多いのではないでしょうか。トラックや商用バンをベース車両に利用しているキャンピングカーですが、登録上、貨物自動車ではないので車検証の最大積載量の欄は空欄になっています。かといって、際限なく荷物が積めるわけではないことはおわかりいただけると思います。実際のところ、家族が乗るのはもちろん、遊び道具、食料、寝具などなど、全部積み込んで出掛けるときに、どれだけの重量になっているのか。それを正確に把握している方は少ないのではないでしょうか?

「キャンピングカーから荷物を全部降ろしてみたら、とんでもない量だった」とはよく聞く話です。また、単純に重量だけの問題ではなくて、積む場所やバランスも非常に大切です。重たいものを前後軸の間に積むのと、リアのオーバーハングに積むのでは、後ろの軸に掛かる荷重は全く異なります。

家庭用エアコンなどをDIYで取り付ける方もいらっしゃいますが、エアコンに加えて室外機の重さも積載量にプラスされます。それが適切な重量バランスの位置にセットできるかどうか。自己判断せず、ビルダーやディーラーに必ず事前に相談するのがお勧めです。

ドイツ製キャンピングカーの荷室に貼られた積載量を示すコーションラベル。この荷室には何キロまでなら積めますよ、という指標だ

スピード超過

キャンピングカーに限らず、どんな車でもスピード超過は事故の元。キャンピングカーに装着されているタイヤの速度記号はL、つまり上限は120km/hです。ということは、法規を守っている限り、問題ないはずなのです。とはいえ、不運な条件が重なれば、トラブルだって起こりえます。たとえば、タイヤが傷ついているのに気が付いていなかった、空気圧が下がっていた、運悪く路上に落ちていたものを踏んでしまった……。

そこにスピード超過が加われば、ますますリスクが高まることはおわかりでしょう。バーストや事故の原因には不可抗力なものもありますが、スピードは運転する人の自覚次第で抑えられます。時々、高速道路でかなりのスピードで走っていく姿を見かけると、どうか事故なく安全に、と願わずにいられません。

キャンピングカーは珍しいから?

キャブコンのベースになるような小型トラックもバーストはしています。ですが、変わった積荷が散乱したりしなければ、あまりニュースにはなりません。その点、キャンピングカーは増えてきたとはいえ、まだまだ珍しい存在。今回の常磐自動車道での事故のように、多数の死傷者が出てしまうケースも少なくないがゆえに、ニュースになりやすい側面もあるのではないでしょうか。

こういう話をすると、必ず「メーカーやビルダーは安全対策をせよ!」という声が上がります。車づくりにおいて。あるいは販売する際の説明責任。消費者として、そのように思うのも当然といえば当然です。

ただ、理解しておいていただきたいのは、

1.自動車メーカーは「この設計値の範囲内で架装してください」とデータを明確にして出荷していること。

2.各ビルダーとも、それを守って架装していること。

例えば前後軸の許容限度を超えたような架装をすれば、そもそも登録ができないのです。

もちろん、作る側・売る側にも努力していただきたい点はあります。ヨーロッパ製キャンピングカーの収納庫には「ここには何キロまで積めます」という表示がされています。こうした取り組みを日本でも取り入れるべきだと思います。

お子さんにはチャイルドシートが絶対必要! 面倒がらず、確実にセットしたい

シートベルトは命綱!

今回の事故で教訓とすべき大事な点がもう一つあります。それはシートベルトです。5人乗車していたうち3人が車外に投げ出されてしまいましたが、運転席と助手席の2人にケガはありませんでした。おそらく、2人はシートベルトを着用していたのではないでしょうか。

国土交通省の資料によると、自動車事故の死者(2014年)のうち、シートベルトの非着用者が車外に放出された割合は、着用者の1.3%に対して、14倍の18.5%にのぼっています。

キャンピングカーの場合、横向き座席にはシートベルトが必要ないといった特例もありますが、今回のような事故を見ればその必要性は十分に理解していただけると思います。シートベルト、そしてチャイルドシートは命綱(過去掲載記事)です。

「自分の車の横向き座席にはシートベルトがないから」「チャイルドシートが取り付けにくいから」といった声を耳にすることがありますが、2点式シートベルトなら後付けできる可能性もありますので、ビルダーやディーラーに相談してみてください。

チャイルドシートも補助ベルトを工夫して搭載している例もあります。「座らせるとぐずるから」なんて理由で、チャイルドシートを使っていない方は、事故の危険性に比べたら、ぐずるぐらいのことで省いていいものでないことは、おわかりですよね?

最新のキャンピングカーにはISOFIX(チャイルドシートがワンタッチで取り付けられるもの)を備えたものも

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どんな人でも事故に遭遇する可能性はあります。楽しいキャンピングカーの旅は、安心・安全あってこそ。タイヤとシートベルト、もう一度チェックしてみましょう。

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PROFILE

渡部竜生(わたなべ・たつお)キャンピングカージャーナリスト

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サラリーマンからフリーライターに転身後、キャンピングカーに出会ってこの道へ。専門誌への執筆のほか、各地キャンピングカーショーでのセミナー講師、テレビ出演も多い。著書に『キャンピングカーって本当にいいもんだよ』(キクロス出版)がある。エンジンで輪っかが回るものなら2輪でも4輪でも大好き。飛行機マニアでもある。旅のお供は猫7匹とヨメさんひとり。

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