小川フミオのモーターカー

半世紀変わらぬ格好良さ 英国自動車文化の象徴ケータハム・スーパーセブン

  • 世界の名車<第226回>
  • 2018年9月3日

全長3.4m、全高1.1mしかない

もっとも“長命”な自動車の1台だ。1975年に発表された英国の「ケータハム(Caterham)・スーパーセブン」。

43年間作り続けられている。驚くのは“オリジナル”の誕生はさらに時代をさかのぼることである。ケータハム社が製造ライセンスを譲り受けた「ロータス7シリーズ3」の発表は1967年(シリーズ1は57年)なのだ。

スズキの660ccエンジン搭載のベーシックな「160」から、300馬力を超えるパワフルな「620R」まで選択肢は多い

67年といえば、日本だと日産が「フェアレディ2000」を発表した年である。トヨタはスポーティな「コロナ1600GT」を出した。ホンダは前年に「S800」。振り返ると実りの多い時期だった。

そこから半世紀以上を経ても、7のみがスーパーセブンとして、ほぼ当時のままの設計で作り続けられている。もはや化石のようなものだ。それでも “新車”を買う人がいまでも少なからずいる。

エンジンに四つの車輪をつけて、余ったスペースを2人の乗員ために割いた、といったかんじの超がつくシンプルな設計。車高は低く、座席の位置は道路に座っているようなものだ。手を伸ばせば実際に路面を触ることだってできる。そんなクルマはそうそうない。

ウィンドシールドに就いている黒いチューブはサイドの雨よけスクリーンを差し込むためのもの

それほど排気量が大きくなくても、車重は500キロを超える程度なので、加速性はよく、ステアリングホイールを切ると機敏に曲がる。その楽しさゆえ、ファンが多いのだ。

道幅が狭く曲がりくねっている英国のカントリーロードを走ったら楽しいだろうと思わせる

サイドスクリーンを立てると風の巻き込みが少なくなるので長距離でも疲れにくい

オリジナルを手がけたのはロータスの故コリン・チャプマン。学生時代からレースに夢中で、50年代にはフォーミュラレースに参戦していた。セブンに代表されるロードカーの製造・販売は、レースの資金稼ぎの目的も大きかった。

セブンが売れたのは、これでレースに出るとおもしろかったからだ。価格も手頃で、さらに節約したいひとには自分で組み立てるキットの形でも販売された。

「セルフアセンブリー」(自分で組み立て)キットはこのようなパーツで成り立っている

いまでもケータハム社はキットを販売している。エンジンをはじめ、配線とか燃料まわりとかサスペンションシステムとか計器とか重要な部分はあらかじめ組み立ててあるが、最終的な組み立てはユーザーの仕事だ。

自宅のガレージでも、指定の自動車整備工場でも、どこにでも届けてもらえる。あとは設計図(ほぼ文字だけ)に従って組み立てていく。

英国に在住していたぼくの知人に、実際にこのキットを購入して組み立てたひとがいる。「おとなのプラモデル」とでも呼べる楽しさがあるそうだ。そうだろうなあと思う。

最終的には組み立てたクルマを検査場に持っていく。そこでチェックを受け、問題なければ、登録が許される。つまりナンバープレートをつけて公道を走れるようになる。

スズキの660cc3気筒エンジン(80馬力)を490キロという超軽量車体に搭載した「160」

ほんとうに自由だ。ぼくはこれこそ、世界に誇るべき英国の自動車文化だと思う。そして、そこがスーパーセブンの最大の魅力ではないだろうか。

写真提供=Caterham Cars

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PROFILE

小川フミオ(おがわ・ふみお)

写真

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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