私の一枚

「自分のやり方で表現すれば必ず伝わる」シンガー・ソングライターAimerの心の軸が生まれたライブ

  • 2018年9月3日

初のヨーロッパ公演となったドイツ・ボンにて。ライン川越しの景色を眺める

2015年8月、ドイツのボンで歌う機会をいただきました。この写真は現地に着いて2日目の午前中、スタッフのみなさんと、ライン川沿いのレストランへ食事に行った時のもの。大きな川なので向こう岸がすごく小さく見えて、その風景がとてもきれいで。時々通る船を眺めたりしながら、ブランチを楽しみました。

ボンで生まれたベートーベンゆかりの厳かなホールでの、2日連続のライブ。会場の雰囲気に押されてしまったことと、ヨーロッパで歌うことが初めてだったこともあって、1日目はすごく緊張しました。ドイツ語でMCをしようと思って頑張って覚えて行ったのに、結局あまりしゃべれませんでした。

お客さんの反応はとても静かで、まるで水を打ったよう。同じ海外でも、ロサンゼルスで歌った時にはライブ中にいろんなレスポンスがあったので、歌いながら「ドイツの人たちには受け入れられないのかも」と思ってしまって。

でも1日目のステージのあと、客席で観ていたスタッフから「みんなすごく感動していたよ」「泣いている人も多かったよ」と聞いて、ちゃんと届いていたからこそ静かだったんだと、ようやくわかりました。私の日本でのライブでも、じっと集中して聴いて下さる方が多いので、ドイツのみなさんの音楽の感じ方は、もしかしたら日本人の感覚に近いのかもしれませんね。

2日目は、自分の中で1日目に悔しかったこと、できなかったことを全部ぶつけることができました。どんな内容のイベントでも、日本から遠く離れた場所でも、自分は自分のやり方で、自分のできる表現をすれば、必ず伝わるんだという確信を持てたライブ。同じセットリストだったのにまったく違う意識で歌った2日間の経験は今、ステージに臨むうえで自分の考え方の「軸」になっています。

ドイツ以降、海外で歌う機会はどんどん増えて、今年はアジアツアーに行ってきました。アジアの人たちは特に熱狂的に迎え入れてくれて、これは普段の私のライブでは起きないことなんですが、私のデビュー曲「六等星の夜」を一緒に歌ってくれたんです。本当にびっくりして、うれしくて。

歌詞の意味をどこまで理解してくれているのかはわからないですけど、日本語の勉強をしながら覚えてくれているのかと思うと、みなさんが本当にいとおしい気持ちになります。

10月末からホールツアーを開催。「みなさんと一緒に楽しめる場面も作りたい」と語るAimerさん

デビュー当時は、MCもほとんどせずに、ほぼ暗闇の中でバラードだけを訥々(とつとつ)と歌うようなライブをやっていました。そういう世界をわかって下さるお客さんに恵まれてここまで歌ってこられたと思いますし、客席が静かなのは、ファンのみなさんが私をリスペクトして下さる、その一つの形なんだとも思っています。

でも国が変わると、音楽で一つになることがリスペクトの形になることもあります。もちろん、どちらの形であっても、私にとってはとてもうれしいことです。

以前は海外に行くと、自分の世界がいかに狭いかを思い知らされる気がしましたし、違う自分に出会えたような感覚もありました。しかし、いろいろな国で歌わせていただく中で考えが変わってきました。普段の生活とは異なる環境の中では、自分という存在や個性が浮き彫りになることに気がついたんです。

いろんな文化に触れ、それぞれの違いを理解することで、より明確に自分が見えてくる。そんなことも、ドイツで歌ったことをきっかけに感じるようになりました。

今、海外で気になっているのは、スコットランド。映画で見た街並みや森の風景がすごく美しくて、いつか行ってみたいと思っています。アイスランドも好きで、仕事で2回行かせていただきました。どちらかというと、南国よりも北の国の景色に惹(ひ)かれますね。

この11月には初めてニューヨークで歌わせていただくことが決まっています。プライベートも含めて初めてのニューヨーク。ライブに来た方がどんな反応をして下さるのか、今からとても楽しみです。また、これからは日本のライブでも、来て下さった方と一緒に楽しめるようなシーンを増やしていきたいなと思っていて、いろいろ挑戦しているところです。

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エメ シンガー・ソングライター。2011年、シングル「六等星の夜」でメジャー・デビュー。以後これまでに14枚のシングルと4枚のオリジナル・アルバム、2枚のベスト・アルバムを発表。2015年発表のシングル「Brave Shine」が日本、香港、シンガポール、インドネシア、タイの各国iTunes総合シングル・チャートで1位を獲得するなど、国内のみならずアジア各国でも人気を博している。9月5日に発売される15枚目のシングルに収録の「Black Bird」は、9月7日に全国公開される映画『累(かさね)』(主演:土屋太鳳×芳根京子)の主題歌。10月からは全21公演に及ぶ全国ホールツアーを開催。詳しくはオフィシャルサイトにて。
http://www.aimer-web.jp

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9月5日発売のシングル「Black Bird / Tiny Dancers / 思い出は奇麗で」

「Black Bird」は、原作や台本を読ませていただき、映画サイドの方々からイメージも伝えていただきながら、時間をかけて作りました。昔からバラードを多く歌ってきて、激しいサウンドの曲もここ数年は増えてきましたが、ここまで重厚感のあるサウンドとミックスで声を届けられたのは「Black Bird」が初めてです。

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バラードを歌う時には、どういう声色、音色で歌うのかを慎重に考えて声を決めていますが、激しい曲で気にするのは、声色よりも言葉の置き方。「Black Bird」でも、どのようにグルーブに言葉を乗せるかを考えながら歌いました。私にとって、初めての実写映画の主題歌でもあったので、試写で自分の歌が流れた時には感慨深かったです。

(聞き手 髙橋晃浩)

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