キャンピングカーで行こう!

欧州キャンピングカー文化の奥深さを知る キャラバンサロン最新リポートvol.2

  • 文・写真 渡部竜生
  • 2018年9月12日

自走式>トレーラーと、販売台数が逆転したとはいえ、やはりトレーラー人気は根強い

前回に続き、ドイツ・デュッセルドルフで開催されたキャラバンサロンのリポートです。2018年のキャラバンサロンも10日間の会期を終えました。今年の来場者数は過去最高の24万8000人! マーケットの好調さを裏付ける数字になっています。

実際、週末も平日も会場に行きましたが、曜日に関わらず各ブースは大にぎわい。商談スペースでは熱心な打ち合わせがあちこちで展開されていました。筆者は、2011年から毎回取材しています。展示物の変遷や、そこから見えてきた欧州キャンピングカー文化の奥深さについて考えてみたいと思います。

>>キャラバンサロン2018の詳細フォトギャラリーはこちらから

ヨーロッパ人にとってのキャンピングカーとは

私が最初にキャラバンサロンを取材したのが2011年。その時で、すでに2000台近い展示台数があり、あまりの会場の広さに圧倒されたものです。ちょうどその頃から、それまで主流だったトレーラーの販売台数を自走式が上回り始めました。

その後、高級大型志向が進んだり、その反動でバンコンが流行したり。今年はまた高級大型車が好調ですから、ヨーロッパ経済の動きに見事に同調していますし、毎年なんらかの発見があります。

ネットが発達したおかげで、各ビルダーのホームページを見れば、ニューモデル情報などを簡単に追いかけられるようになりはしましたが、やはり現地に足を運んでみなければわからないことはたくさんあります。

毎度のことながら、最も痛烈に感じるのは「欧州ではキャンピングカーが生活にしっかり根付いているんだ」ということ。ショー会場以上に、アウトバーンや一般道は情報の宝庫です。今回も高速道路を走りましたが、トレーラーも自走式もたくさん走っていました。ビルが並ぶデュッセルドルフの中心部でもチラホラ見かけるほど、当たり前に景色の一部として溶け込んでいます。

一体誰が買うの? と言いたくなる観光バスサイズの高級車も、キャンプ場で何台も見かけました。かと思えば、私より年上と思われるレトロなトレーラーを古い乗用車でのんびり引っ張っている人がいたりします。

古いワーゲントラックに合わせたトラックキャンパー(不要な時には居室を下ろせる仕様)。あくまでデモだが、ヒッピー風のサイケなデコレーションなど、細部にまでこだわった展示が面白い

来場者の様子もさまざま、老若男女を問いません。車両の価格も幅広く、コンパクトなキャンピングトレーラーなら60万円くらいから。高級大型モーターホームの中には約2億円というものすごいプライスタグを下げたものもあります(しかも商談中!)。どのクラスのキャンピングカーにも、それを求める人たちが詰めかけているのです。

さらにお手軽に始めたい人向けには、なんと乗用車をキャンピングカーに改造するキットまで売られています。フォルクスワーゲンやフォードのミニバンを、DIYでキャンピングカーに改造できるのです。その内容はベッドやシンクのみならず、ポップアップルーフまで売られているのにはびっくりです。みなさん自力で、愛車の屋根を切断して取り付けるようです……。

中には60年代のヒッピーカルチャーを思わせるコンセプトカーや、軍用車かな? と思わせるほどの重装備の車両も。車内ガレージにポルシェを収めた、動く高級ホテルのような車両もあります。つまり、スタイリッシュでおしゃれなアウトドアを楽しみたい人も、サバイバルゲームのようなハードなキャンプやクロスカントリーをしたい人も、どんな自然の中でも高級ホテル並みのホスピタリティーが欲しい人も、誰もかれもが何かしら満足できる車があるということです。

そんな商品の多彩さを見ていると、キャンピングカーはお金持ちのものでも、一部の物好きのものでもなくて、一人ひとりのライフスタイルに密着したものなのだと痛感させられます。

先進国ならではの取り組みも

■ドイツ版『JAF』による安全走行デモ

さらに、こうしたキャンピングカーライフを支える「環境」も整っています。

毎年キャラバンサロンには、日本のJAFにあたるADAC(ドイツ自動車連盟)という団体がブースを出しています。ADACは主要事業であるロードサービス事業のほかに、出版、旅行業、旅行傷害保険業、なんとヘリコプターによる救命救急事業まで幅広く手掛けています。

ブースではそうした各事業のPRや会員の勧誘に加え、交通安全の啓蒙(けいもう)も行っていました。具体的にいうと、トレーラーの重量配分による安定性の違いを模型を使ってデモンストレーションしていたのです。

ベルトコンベヤーにヘッド車のモデルカーと透明なトレーラーを載せて、荷重の分銅の位置を変えながら、トレーラーのどこに荷物を置けば、スネーキング(けん引されているトレーラーが左右に激しく振れてしまう走行トラブル)が起きやすいのかを説明していました。トレーラーの仕組みや、運転時の挙動がわかる非常にわかりやすい展示でした。自分の車のどこに荷物をどのように積めばよいのか、何かあった時、車に何が起きていて、どう動くのかを理解することは、安全運転上、大きな意味があると思います。

なんと!フィアット・デュカトに装着すれば、愛車が往年のシトロエン"Hトラック"に早変わり!というボディキット

■専門整備士の育成も!

ADACの隣にブースを構えていたのがDCHV(ドイツキャンピングカー販売連盟)。文字通り、キャンピングカーの販売店の組合です。実はヨーロッパの市場では、キャンピングカーは製造者からではなく販売店から購入するのが一般的なのです。

簡単に言えば、日本の乗用車と同じ。トヨタの車を買おうとしても、トヨタ自動車本体と取引はしませんよね? みなさん、ご自宅近くのディーラーで購入されると思います。しかし、日本のキャンピングカーはビルダーが直接販売することが多いので、「作っている人=売っている人」なのです。

一方、ヨーロッパではメーカーとディーラーは明確に分かれています。ショー会場のブースはメーカーが出していますが、商談スペースにいるスタッフはそれぞれのディーラーから来ている人たち。顧客の住んでいる地域の担当者が対応して、契約をとりつけるのです。

そしてこのDCHVは、ディーラーの組合です。初心者向けにガイドブックを出版し、キャンピングカー専門の整備士を養成するセミナーなども開催しています。みなさんも、乗用車が故障したら、買ったお店に相談、もしくは修理に持ち込みますよね? 故障の対応がしっかりしていて、技術力のあるディーラーから買いたいと思うのは当然です。まして、キャンピングカーは単なる車ではありません。シャワーが壊れた、冷蔵庫が冷えない、雨の時に収納部分に浸水する……、そんな居住設備のメンテナンスもできなくてはなりません。

そんなトラブルに対応できる、すぐれた整備士を育成するのがDCHVのプログラムなのです。6~8週間かけて、クルマの基礎知識から、電気、給排水、冷暖房などキャンピングカーならではの知識と技術を学んでいくとのこと。さすがはマイスター制度の国です。このセミナーを修了した人にはDCHVからの認証が与えられるといいますから、そうした企業への就職にも有利なのでしょう。

■ドイツにもあった!『初心者講座』

キャラバンサロンには、昨年から「キャンピングカー入門ホール」が登場しています。日本のキャンピングカーショーのようにセミナーコーナーがあり、そのプログラムには「車両の選び方講座」「トレーラーのすべて」「アクセサリーの選び方」などなど、普段私がショー会場でお話ししているような内容が並んでいます。

そのほか、会場には旅行先の情報、保険のこと、およそ初心者なら知りたいであろう内容を整理して展示しています。コンシェルジュデスクもあって、そこで知りたいことを相談すれば、どのブースを見ればいいか案内してくれるサービスつきです。人々の生活に深く根付いているキャンピングカー文化でも、まだまだすそ野を広げる努力を惜しんでいないところはさすがです。

キャンプエリアの中心部にはテントが建てられ、毎晩パーティ状態。今年はテントがリニューアルされて、さらに大きくなっていた

■旧車好きにはたまらない! レトロカーの展示も

ヨーロッパには50年以上の歴史を持つビルダーが、それこそゴロゴロしています。それだけにクラシックキャンピングカークラブなんていうものもあって、その展示を見るだけでタイムスリップした気分が味わえます。会場には1960年代の車両がずらり。

そして驚くべきは、その完成度です。クーラーこそありませんが、基本的な装備は現在の車両とほぼ変わりません。シェル(キャンピングカーの外装)も今より粗削りではありますが、使われている素材もほぼ変わらず。ワンタッチとはいきませんがサイドオーニングもしっかりあります。

そして何より、車好きを思わずうならせるのが展示の演出です。

60年代のトレーラーなら、同年代のヘッド車を連結。キャンピングカーの室内も(立ち入りできませんが)外からのぞけるようにドアや窓が開けてあって、中にかかっているレースのカーテンやテーブルクロス、キッチンに置かれているグッズ、飾られている花瓶などの小物に至るまで、同じ年代のものでそろえられているのです。

古いものへのリスペクトや愛着があるからこそのこだわり。見ているこっちもなんだかうれしくなります。そして眺めている人たちも反応はさまざま。シニア世代の人は、かつてそんな車両を持っていたのでしょうか。懐かしそうに見ています。若い世代はコーディネートに興味津々。インスタ映えする写真の参考になるのでしょうか。

長い歴史に育まれ、使う人を支えるバックグラウンドがしっかりあるヨーロッパ。さすがはキャンピングカー先進国だと、今回も感心して帰途につきました。マーケットが成長しつつある我が国も、ぜひ先輩を目指してゆきたいですね。

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PROFILE

渡部竜生(わたなべ・たつお)キャンピングカージャーナリスト

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サラリーマンからフリーライターに転身後、キャンピングカーに出会ってこの道へ。専門誌への執筆のほか、各地キャンピングカーショーでのセミナー講師、テレビ出演も多い。著書に『キャンピングカーって本当にいいもんだよ』(キクロス出版)がある。エンジンで輪っかが回るものなら2輪でも4輪でも大好き。飛行機マニアでもある。旅のお供は猫7匹とヨメさんひとり。

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