&30

ポケモンGOイベントの成功が感じさせた、AR技術が日常化する未来

  • 文・ライター 堀 E. 正岳
  • 2018年9月14日

©2018 Yokosuka City. ©2018 Niantic, Inc. c2018 Pokemon. ©1995-2018 Nintendo/Creatures Inc. /GAME FREAK inc. ポケットモンスター・ポケモン・Pokemonは任天堂・クリーチャーズ・ゲームフリークの登録商標です

スマートフォンを使ったAR位置情報ゲーム「ポケモンGO」の夏の祭典「サファリゾーン」が8月29日から9月2日までの5日間、神奈川県横須賀市を舞台に開催されました。

期間中は、抽選で選ばれた65,000人のトレーナー(ポケモンGOのプレーヤー)が参加しただけでなく、抽選には漏れたものの、“お祭り”の雰囲気を楽しみたい人も集まり、合計で約20万人が横須賀市を訪れたことが公式に発表されています。横須賀市の人口は40万人であることを思えば、これはその半数にあたる驚くべき数字です。

リリースから2年が経過してもまだ人気の衰えないポケモンGOは、AR位置情報ゲームという仕組みをマイナーなゲームの分野から、一般的なものに成長させました。

しかし、それで終わりではありません。ポケモンGOが広げた世界は将来、私たちの生活を支えるインフラにまで進化する可能性があるのです。

巨大なイベントを開催できる仕組みとしてのポケモンGO

今回のイベントで注目したいのは、それが巨大なスタジアムなど1カ所に人を集める形のスポーツやライブではなく、広い範囲を参加者が自由に動き回ることで成り立っている点です。

事前登録したトレーナーはもちろん、登録していないトレーナーたちも、横須賀の街のあちこちに出没するポケモンたちをスマートフォンのアプリの中で捕まえようと歩き回りました。

そして、これだけの数の参加者が自由に動き回っても、混乱も発生せず、イベントは成功しました。過去にゲームとのコラボイベントを開催してきた横須賀市には培ってきたノウハウがあり、今回もそれが生きたのです。

例えば、地元商店街で500円以上の買い物をすればオリジナルステッカーをもらえるキャンペーンは、ポケモンGOのプレーそのものを邪魔することなく、ひとつの場所に人が集中することも避けるようにデザインされています。

また、「サファリゾーン」の中心となった「ヴェルニー公園」「三笠公園」「くりはま花の国」は、いずれも横須賀が誇る観光名所でした。新しいポケモンと出会う経験は、そのまま横須賀という街を歩き、人とふれあい、観光する経験となります。ここに今回のイベントの秀逸さがありました。

「サファリゾーン」の期間中、トレーナーたちは1日あたり300万匹のポケモンを横須賀市でつかまえていたというデータもあります。

ゲーム内のこととはいえ、「このポケモンとは横須賀で出会ったんだった」という思い出が、どれだけの人の心に生まれたのか想像してみるだけでも、このイベントの規模と楽しさが伝わってきます。

まだまだポケモンGOの人気は衰えていない(gettyimages)

ポケモンGOは始まりに過ぎない

すでに世界的に大きく成功し、熱心なファンを獲得しているポケモンGOですが、これはまだまだ通過点でしかありません。

開発元であるNiantic社は現在ハリー・ポッターの世界を舞台にした「Wizards Unite(仮称)」をリリースする予定ですし、日本向けのゲームやサービスを開発する拠点、「Niantic Tokyo Studio」を設立したばかりです。

さらに同社は、彼らが「リアルワールド・プラットホーム」と呼ぶAR基盤技術の開発にも力を注いでいます。

【動画】Niantic社が公開している新技術を紹介する動画。タイトルは「Real World AR Occlusion featuring Pikachu and Eevee」。動画の中でピカチュウは、実物の植木鉢を避けながら走り回る

これはたとえばスマホで撮影すると、アルゴリズムが机や椅子や人物といった身の回りのものや、その空間内での位置関係を推定する技術です。この技術を使えば、「画面に映った実際の家具の後ろにポケモンが回り込む」といった表現も可能になります。

ゲーム上の演出としても革命的ですが、他の分野、例えばスマホを向けることで閲覧できるAR観光案内や道案内といった行政サービスや、ランニングのルートを提案するフィットネスサービス、あるいはある史跡の歴史を現実の映像に重ねて表示する教育コンテンツなども作成できそうです。

ここでもう一度、ポケモンGOの横須賀市「サファリゾーン」の規模を思い出してみてください。

通常、多くの人に、AR技術を使ったアプリをインストールをして、さらに操作に習熟してもらうには大変な手間がかかります。しかし、すでに普及しているポケモンGOではその必要はありません。実際に、今回の「サファリゾーン」では、期間中に約20万人の習熟者が同時にプレーしていました。

このことは、ARの社会実験としても大きな成功だったと言えるでしょう。さらに、やがてこうしたゲームを通じてAR技術が日常生活に浸透して、インフラとなっていくことを予見させるものでもあります。

iPhoneの登場が画面上のタップ操作を常識にしたのと同じように、ポケモンGOのようなARインターフェースが、日常生活に欠かせないものとなる日も近いかもしれません。

gettyimages

「世界は見たままとは限らない」という哲学の実現

ポケモンGOの登場の前に、Niantic社はその前作であるオリジナルゲーム「Ingress」を開発しています。そのゲームのモットーに「世界は見たままとは限らない」というものがあります。

これは同社代表のジョン・ハンケ氏の哲学そのものといってもよい、深い意味を持つ言葉です。目で見える風景に、テクノロジーを使って情報を重ねると、世界は全く別の姿を見せてくれる。この考え方こそ、ARという技術の本質そのものです。

Ingressのこの哲学は、10月から始まるオリジナルアニメーション「Ingress the Animation」の主要なテーマでもあります。最初は限られた少数のファンから始まったAR位置情報ゲームは、いまやテレビアニメとなり、数十万人のユーザーを実際に動かすようになりました。AR技術を応用したシステムは、今後も世界中を楽しく変えていくはずです。

ポケモンGOは単なるひとつのスマホゲームだと思っている方や、しばらく遊んでいないという方は、この機会に、新たな目でその世界をのぞいてみて下さい。

その世界は、日進月歩のAR技術が普及した未来を見るための「窓」になりつつあるのです。

[PR]

この記事を気に入ったら
「いいね!」しよう

今、あなたにオススメ

Pickup!