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これからの人類になるために、わたしたちは「耳をアップデート」しなければならない

  • 文・りょかち
  • 2018年9月27日

  

2018年の年始、注目するインターネット文化を聞かれたときにはいつも、「耳メディア」と答えていた。

実際、一般ユーザー向けにインターネットサービスを提供する各社が「Amazon Echo」「Google home」「Clova」といったスマートスピーカーを発売し、家庭の中に置いてなんでもない生活を過ごすCMを放送し、私はそれを何度も見かけた。また、日本の一部では、「Voicy」という音声メディアが大流行し、著名なインフルエンサーたちがVoicyというプラットフォーム上でラジオのような番組を持つようになった。

InstagramのStoriesも、2017年7月の時点で約60%が音声付きで再生されているという(参照:https://business.instagram.com/a/stories-ads?locale=ja_JP)。2018年に流行したStoriesもまた、「聞きながら」消費されるコンテンツであった、と言える。YouTubeもまたしかりである。多くのワカモノはすでに、日常生活の中で音声も含めてエンタメコンテンツを消費する、ということに慣れているのかもしれない。

私もまた、AppleのAirpodsというワイヤレスイヤホンを手に入れてからは、常に耳にイヤホンがついている生活を送るようになっている。去年に比べて随分シームレスに、音声のあるコンテンツに日常生活の中で触れるようになった。

これからの時代に「耳」による体験を重視すべき理由

なぜ、今「耳」なのか。2018年も、もう残り数カ月しかないが、改めてじっくりと説明したい。

ひとつめの理由は、私たちの耳がまだ比較的「空いている」からだ。

目が覚めて、LINEをチェックする。「Yahoo! 天気」で今日の降水確率を調べる。LINENEWSとkindleを見ながら通勤する。仕事中はメールチェックとMicrosoftのOfficeを使って企画書作成に励み、仕事が終わると、仲間と飲む店を食べログで探して、飲み会を楽しんだら、NAVITIMEで電車の時間を確認して、帰宅して一日を終える。

私たちの目と指は一日中大忙しだ。たくさんの情報を飲み込み、指先から吐き出す。だけど、耳はどうだろう。音楽を聴いたり、テレビを見ていたりしていたとしても、多くの時間は「休暇中」だ。

だからこそ、情報媒体やエンタメコンテンツにとって、「耳」は狙い目なのである。目で情報を追いかけるサービスの競争率は果てしなく高いが、「聴く」コンテンツはまだまだ空いている。

  

常に「耳」と接続し続けながら展開するインターネットサービス

「耳」を使うインターネット文化に注目すべき理由の二つ目は、これから展開されるインターネットサービスがもたらすユーザー体験のほとんどは「耳」を活用するものだから、である。

先述したスマートスピーカーもそう。2016年から”アツい”と言われ続けている動画サービスも、基本的には音声もセットにした視聴体験を提供している。さらに言うならば、VRもそうだ。圧倒的な没入感を演出するには、「音声」のちからが欠かせない。

見せている世界(画面)から音を流す、という平面的な演出とは異なり、VRコンテンツでは、音源に背を向ければ、本当に自分のすぐ後ろから音が出ているように聞こえる。三次元的な没入体験は、聴覚を使うことでよりリアルに提供されるのである。今後、耳を活用することで、「はじめて」試すことができる体験が、どんどん増えていくのだ。

さらに、iPhoneユーザーならすっかりワイヤレスイヤホンを常につけている状態に慣れているかもしれない。というのも、iPhone7からイヤホンジャックが廃止されたからだ。これは、Appleからの「(iPhone端末からの距離やシーンに限定されず、)耳に常にイヤホンをつけて生活してね」というメッセージかもしれない。実際、iPhoneXで提供されたAnimoji(自分の顔と音声を認識して、アニメーションが動いてメッセージを伝える)では、音声が常にユーザーと接続された状態が前提のコミュニケーションが提案されている。

この先のミライでは、「耳を活用している人間」を前提に世界が切り開かれていくのではないだろうか。しかし、これを読んでいる方のどれだけの人々が、その世界観の中にすでに存在しているのだろう。多くの人にとって、耳にイヤホンをつけっぱなしで、耳で聞いてプログラムと会話をし、常にインターネットサービスに耳を接続して生活するスタイルはまだまだ遠い未来じゃないだろうか。

  

耳から今後の「ミライ」を想像する

ミライの作り手が夢想する世界では、私達の視線だけでなく、聴覚もインターネットと接続している。

だからこそ、私たちが新たな時代を理解し、世の中と一緒にアップデートされる「これからの人類」として生きていきたいのならば、新たなテクノロジーに「耳を傾ける」必要があるだろう。

情報を耳で聞く習慣を身に着け、聴覚による三次元的な体験を味わう良き消費者となり、時には、自分が流した「音」が、人々にどう知覚されるかを想像する側に回らなくてはいけないかもしれない。

けれど、きっとそれは、適応の苦しみをそれほど伴うものではないはずだ。「五感を使って毎日を操作する」という意味では、一度深く「視覚による入力と指先での出力」の世界に落ちてしまった20代の我々よりも、現状の視覚的なインターネット社会になじみきっていない人たちのほうが、「視覚と聴覚を複合したインターネット社会」になじみやすいのではないだろうか。

というのも、スマートフォンやスマートウォッチ、PCなどのディスプレーが無限に増え続けるまでは、私たちはもっと聴覚を使って生きていたはずだからである。iPhoneの前にAppleが若者のココロをわしづかみにしたのはiPodだった。さらに振り返るなら、青春をウォークマンに詰め込んでいた人も多いのではないだろうか。ラジオを聞きながら受験勉強をする人も多く、年末には有線大賞で盛り上がった。耳に入ってくるのがただの音楽ではなく、インターネットサービスのガイドや立体的なノイズに代わっても、「耳から感情を動かされる感性」は、ディスプレイに圧倒されてきた世界を生きてきた若者たちよりも鋭いはずだ。

現実世界とハレーションが起こらないように進化し続けるインターネットの新たな世界では、自然に触れるように、誰かと話すように、インターネットに耳を澄ませるだけで、そこには新しい可能性が広がっているはずだ。

これからの時代、確かに「触れる」だけではない、「入り込む」インターネットが、始まろうとしているのだから。

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