今日からランナー

美食と観光も満喫! 「五島列島夕やけマラソン」で旅ラン

  • 文・山口一臣
  • 2018年9月21日

夕焼けを背に離島を走るマラソンは魅力がいっぱいだ!(©️五島市観光協会)

ランニングのモチベーション維持で大事なのが「目標」の設定だ。もっともシンプルでポピュラーな目標が「自己ベスト更新」だと思う。多くのランナーがこの目標に向かって苦しい練習を積んでいる。しかし、私のように年齢が上がってくると、だんだんそれもシンドくなる。そこで思いついたのが、この連載でも紹介した世界6大マラソン(Abbott World Marathon Majors=WMM)完走という目標だった。もちろん自己ベスト更新を諦めたわけではないが、こういう目標は間違いなく励みになる。ところが、ご存じのように今年4月のロンドンでWMMは目標達成してしまった。

正直、ある種の燃え尽き症候群でしばらく練習にも身が入らなかった。そんなおり、ランニング仲間でもある出版界の友人から「五島列島夕やけマラソン行きません? すっごくいいらしいよ」との誘いを受けた。

“これだッ!”と、頭の中にひらめきが走った。そうだ、そうだ、これなのだ。WMMの次なる目標として「47都道府県『旅ラン・食べラン』コンプリート」なる企画を思いついた。美食と観光を兼ねて各都道府県でひとつ以上の大会に出るというアイデアだ。大会はフルでもハーフでもなんでもいいが「美食と観光を兼ねる」というのがポイントだ。WMMは達成までに約5年かかったが、47都道府県制覇なら10年以上は楽しめるはずだ。

レース前にゴルフまで 記録より楽しさ優先

五島列島夕やけマラソンは長崎県西北沖の西海国立公園にある五島列島でいちばん大きな福江島で、毎年8月に行われるハーフマラソンの大会である。真夏の暑さを避けるため、午後5時半にスタートする。長崎県の最西端に位置するので“最後に沈む夕陽を背に”がうたい文句だ。「夕やけマラソン」という大会名を聞いただけですっかりその気になってしまった。早くも離島の雄大な自然の中、大海に沈みゆく夕日に染まりながら走る自分の姿を想像し始めていた。エエなぁ〜。

話はトントン拍子に進んで“旅ラン”決行となる。今年の大会は8月25日(土)に行われた。言い出しっぺの友人が福岡出身ということもあって、前日夜に仲間5人が博多に集合、名物の水炊きを食した後、屋台のはしごに繰り出した。すでに“食べラン”が始まっている。ここで重要なのは、タイムは二の次だということだ。記録を狙うのは別の機会で、今回は「旅」と「食」を楽しむのだ、などと言い訳しながら博多の夜を堪能する。翌朝、福岡空港からプロペラ機で福江入り。

夕方のスタートまではのんびりできる。宿で体を休めたり、コースの下見をしたり、おもいおもいの時間を過ごす。私はなんと、五島列島で唯一のゴルフ場、五島カントリークラブでラウンドしてしまった。大自然の中、遠く海に浮かぶ五島の島々を見ながらのプレーは、これはこれで別に1本リポートを書きたくなるほどの体験だった。一般的なゴルフ場と違って昼食休みなしで18ホール回るスループレーなので、時間的にも全然、余裕だ。しかし、レース前にゴルフをやっている時点でタイムを捨てていることがおわかりいただけると思う(笑)。

五島列島で唯一のゴルフ場は海外のリゾートコースのようだった

厳しい暑さとアップダウンの激しい坂でヘトヘトに……

さて、肝心のマラソンの時間がやってきた。スタートは福江島の玄関口といえる福江港だ。長崎港や博多港との間にフェリーやジェットフォイルが就航している。ここから島のシンボルといえる鬼岳(おんだけ)の裾野をグル〜ッと一周回るのがハーフの部のコースである(他に5kmの部がある)。

スタートから2時間半でコースが閉鎖され、3時間でゴールも閉まる

今回は“旅ラン・食べラン”が目的だから、景色や声援を楽しみながらゆっくり走ろうと自分に言い聞かせる。でも、完走だけは絶対にしたい。無理せず走れば大丈夫だ! そんなことを考えながら同行した仲間たちとスタート地点でおしゃべりをしていると「パンッ」という号砲が鳴った。「あれ? もう始まったの……」と緊張感もない。しかし結論を言うと「夕やけマラソン」というロマンチックな名前に反して、レースはかなり過酷なものだった。

まず気温だ。夕方のスタートといっても太陽はまだしっかり出ている。気温30度は確実に超えていただろう。時間とともに太陽が傾くと西日がモロにあたる。これは相当、体力を消耗する。「夕やけマラソン」じゃなくて「西日マラソン」「酷暑マラソン」じゃないかと思ったりする。加えて、アップダウンの多さだ。スタート地点は港だから当然、低い位置にある。そこから福江の市街地のある高台へ一気にのぼる。序盤からいきなりキツイ! この時点で、昼間ゴルフをしたことを後悔し始める。ハーフでなく5kmの部にしておけばよかったとも。しかし、わざわざ五島まで来て5kmはないだろうとか、さまざまな思いがめぐる。

太陽が傾くと、夕焼けの前に西日がキツイ(©️五島市観光協会)

そんな中、素晴らしかったのは島のボランティアの人たちのおもてなしあふれる運営だ。暑さを考慮してのことだと思うが給水のエイドステーションがやたらと多い。あとで聞いたら15km以降は1kmおきにあったという。しかも、そこに用意された水やスポンジが氷でしっかり冷やしてある。これで完全に生き返った。さらにうれしかったのがスイカである。これがまたウマイこと、ウマイこと。他にも、スポーツドリンク、塩、梅干しなど、ランナーが欲するものが適度に用意してあるという感じだった。

ゴール後には牛と豚のBBQ!

スタートから5km付近でようやく日没となる。期待した夕焼けは曇り空で残念ながらいまひとつ鮮やかでない(天気がいいときれいらしい)。しかも、なんと、太陽は海に沈むのではなく山に沈んだ……。ただ、海に向かって走る下り坂など景色はいい。日が沈むと気温も下がりいくらか走りやすくなる。中間の10km過ぎまでは写真を撮ったりチンタラ走ったりしていたが、ふとあることを思い出した。この大会の名物というかウリのひとつ、ゴール後に地元産の五島牛と五島美豚のバーベキューが無料で振る舞われるということだ。遅いと肉がなくなってしまうのではないか?

そう思うと俄然(がぜん)、走るスピードが速くなる。後半バテてペースの落ちたランナーを何人も抜きまくった。日が沈むと「夕やけマラソン」が「暗闇マラソン」になる。遠くに明かりが見えると、そこがエイドステーションだ。こんな経験もめったにできない。肉とビールをイメージしながらペースを上げて走り切り、2時間半チョイでゴールした。無事にありついたお目当ての牛豚BBQは食べきれないほど量があった。これで参加料4000円(1次募集)はかなりお得だ(さらにTシャツ、完走タオル付き)。BBQ会場へは長蛇の列ができているが、回転がはやいのですぐに順番が回ってくる。なお、会場でのビールの販売はない。肉と一緒に飲みたい人はすぐ近くのドラッグストアに売っているので、買ってから列に並ぶといいだろう。

五島産の牛肉、豚肉をスタッフが焼いてくれる。これがうまい!

翌日は夕方の飛行機の時間まで観光だ。五島列島は潜伏キリシタンの里として知られているが、福江島は江戸時代に福江藩の藩庁だった石田城の城下町で、城跡や武家屋敷などの見どころもある。ひとつだけアドバイスをすると、観光に出かける前に石田城址(じょうし)にある五島観光歴史資料館に寄ることだ(福江港からも近い)。キリシタンや藩の歴史をザックリ知ることができる。

五島観光歴史資料館

そして最後にもうひとつ。大会から3週間ほどして島から封筒が届いた。「完走記録証」だ。それも一人ひとりのゴールシーンの写真付き! 最近はゴールした直後にパソコンからその場で完走証をプリントしてくれるパターンがほとんどなので、これにはちょっと感動した。来年は、みなさんもどうですか?

五島列島夕やけマラソン完走記録証

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PROFILE

山口一臣(やまぐち・かずおみ)

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1961年東京生まれ。ゴルフダイジェスト社を経て89年に朝日新聞社入社。週刊誌歴3誌27年。2005年11月から11年3月まで『週刊朝日』編集長。この間、テレビやラジオのコメンテーターなども務める。16年11月30日に朝日新聞社を退社。株式会社POWER NEWSを設立し、代表取締役。2010年のJALホノルルマラソン以来、フルマラソン20回完走! 自己ベストは3時間41分19秒(ネット)。

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