小川フミオのモーターカー

おもちゃのような丸みが魅力だったコンパクトカー マツダ・キャロル

  • 世界の名車<第231回>
  • 2018年10月9日

全長3190ミリ、全幅1430ミリのやや背高ボディー

1989年発表のマツダ(オートザム)・キャロルをみていておもしろいなあと思うのは、当時はクルマのとらえ方が今より自由だったことだ。要するに、「キュート」とか「ポップ」というキーワードでデザインされていた。

オートザムというのは当時マツダが展開していた販売系列の一つだ。キャロルは専売車種第1号だった。キャロルはモデルチェンジを繰り返して同系列で販売されていたが、2016年にオートザムが廃止されたので、ここではマツダと表記させていただく。

大きなキャンバストップも用意されていた

キャロルは、明確なデザインランゲージを持ち、イメージカラーまで統一している今のマツダからは最も遠いところにあるクルマだ。いたる所で丸みが強調されていて、側面から見たときのルーフの輪郭も円弧である。

このクルマはマツダにとって1976年以来の発表となる軽自動車で、62年発売のキャロルの名前を復活させたことも話題になった。ベースになった車台はスズキ・アルト。当時のマツダはスズキとの技術提携関係をうまく使いつつ、デザイン面でオリジナリティーを出していたのだ。

ビスカスカップリング付きの4WDの設定もあった

おもちゃのような形だが、クルマの可能性をいろいろな方向で追求したなかで生まれたもの、と前向きにとらえることも出来るだろう。おなじ年に発表されたモデルとして、3兄弟が同時に発表された6代目ファミリアあり、ユーノス・ロードスターあり、とマツダ車は多種多様だった。

キャロルはおそらく生産効率を考えて2ドアボディー(+ハッチゲート)のみだった。ただしバリエーションとしてキャンバス地の電動ルーフを備えた仕様もあった。欧州のコンパクトカーみたいだと、当時は思ったものだ。

写真の「ミレディ」は装備が豊富な仕様

エンジンは40馬力のスズキ製の550cc3気筒を搭載し、変速機は5段マニュアルと3段オートマチックが用意されていた。前輪駆動がメインで、4WDの設定もあった。

走りは日常的な使用には十分という程度だったが、マツダでは91年にターボを追加した。これはそれなりに速いモデルだ。しかし例えるなら乃木坂46がラップをやるみたいで、ぽっこりしたシルエットのため違和感のほうが強かった。

中身(シャシー)は真四角なスズキ・アルトとは信じられない

キャロルの名前はここからしばらく続き、このあと2回モデルチェンジをした。だんだん万人向けというか機能主義的なスタイルとなり、ユニークさはなくなってしまった。フォルクスワーゲンのニュービートルや、アウディTTのように、キャロルもモデルチェンジのむずかしいクルマだったのだろう。

同じようなスタイリングコンセプトで、グレーとかマットブラックとかメタリックな塗装にするだけで、十分いまっぽい雰囲気が出るようにも思える。なにより必要なのは、こういうクルマに乗ろうという“気概”を持ったユーザーかもしれない。

写真=マツダ提供

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PROFILE

小川フミオ(おがわ・ふみお)

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クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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