連載・口福のランチ

旬の味覚をほんの少し先取りして楽しめる老舗「日本料理 むとう」(東京・銀座)

  • 文・写真 ライター 森野真代
  • 2018年10月10日

きわめて上質で上品な「豚肉の芋煮膳」

今週の口福のランチは、名店ひしめく銀座において、今年創業65年目を迎えた老舗日本料理「むとう」。数寄屋通りのビルの谷間に建つ風情ある一軒家だ。2010年に店舗を建て替え、同時に店名を「割烹 むとう」から「日本料理 むとう」へ改名した。「今の時代、割烹より日本料理の方が分かりやすいでしょう」とは、現在店を切り盛りする3代目女将(おかみ)の武藤みどりさん。店を守るためには、時代に合わせていくことも大切。ただ、変えてはいけないこと、守り続けなければならないこともある。「伝統と進化のバランスが大切」と語る。

夜だとちょっとしり込みしそうな名店の味が、リーズナブルに味わえるのがランチタイムのだいご味。むとうの味を気軽に味わってもらいたいと創業以来ランチを提供し続けている。「昼の会席(3100~6100円)」を除くと、ランチメニューは「日替り膳(1500円)」、「刺身膳(1700円)」、「鯛茶膳(1700円)」の3種類。何を食べても、丁寧な仕事が感じられる上質な味わい。かなりコストパフォーマンスが高い。

目でも楽しめる6点盛りの「刺身膳」

食材は毎日、料理長自ら市場に出向き、長年培ってきた「目利き」で旬の素材を仕入れる。そして、むとうの料理の要ともいえるだしは、昆布とかつお節。昆布は「羅臼産」と「日高産」の2種類を使い分け、かつお節は「枕崎産」を使用する。米は長年の付き合いの米屋から、その時に一番お薦めの米を仕入れている。

この日の日替わりは「豚肉の芋煮膳」。上質のだしをたっぷりと含んだサトイモの煮物は、とろりとやわらかで心まで温まる。サトイモ、ニンジン、しめじ、マイタケ、ネギ、三つ葉、そしてコンニャクと豚肉を上品に盛り付け、最後にゆずの皮を削ってひと振り。

刺し身は、マグロ赤身、カンパチ、ホタテなど6種類。大満足の一皿だ。そして、とにかくご飯がおいしい。

他に小鉢と厚焼き玉子、香物、みそ汁、そしてデザートが付く。最後の黒糖プリンのデザートが、またこの上なくおいしかった。全くの手抜きなしで、単品でも注文したいくらいだ。

しめじ・なめこおろしなどの付け合わせ、みそ汁も丁寧な味付け

女将いわく、「日本料理と四季とは切っても切り離せません。今はさまざまな食材が年中手に入ります。でも、やはり旬の物は味に深みがある。むとうは、旬の食材をほんの少しだけ先取りして提供するように意識しています」。

カウンター席から見える、夜の仕込みを始めるスタッフの手さばきも見事。ちょうど大根の桂むきの最中だったが、薄く均等にむかれていくさまに目が釘付けになった。機会があればぜひ夜にも足を運びたいと期待が膨らむが、まずは、ランチタイムで感動の昼膳を味わってほしい。

<今回のお店のデータ>
むとう
東京都中央区銀座6-4-16
03-3571-0723
http://ginza-mutou.com

[PR]

この記事を気に入ったら
「いいね!」しよう

PROFILE

森野真代(もりの・まよ)

写真

ライター&エディター。徳島県出身。外資系ジュエリーブランドのPRを10年以上経験した後にフリーエディターに。雑誌やWebを中心に、旅、食、ファッションなどをテーマに執筆中。無類の食べもの好きでもあり、おいしい店を探し当てる超(?)能力に恵まれている。「唎酒師(ききさけし)」の資格取得後は、自己研鑽も兼ねて各地の酒処の探索に余念がない。友人を招いての家飲みも頻繁に開催。

今、あなたにオススメ

Pickup!