連載・口福のランチ

マグロがご飯を埋め尽くす 親子で守り続ける良心的な定食「日本料理 岩戸」(東京・銀座)

  • 文・写真 ライター 森野真代
  • 2018年10月25日

マグロが何重にものっていて、ぜいたくな気分になる「マグロ重」

今週の口福のランチは、銀座の喧騒(けんそう)がうそのように、何ともほっこりと心が和む店「日本料理 岩戸 銀座店」。昭和52年に創業し、浅草での数年を経て銀座の地で35年以上、宮崎・都城出身の女将(おかみ)とその息子が店主を務める。昼のメニューは、どれも1000円前後の、信じがたいほど良心的な定食ばかりだ。

午前11時30分のオープンと共に、次々とスーツ姿のビジネスパーソンが暖簾(のれん)をくぐる。入り口で食券を購入して店内へ。食券といっても味気のない自動販売機ではなく、女将の森順子さんが一人ひとりに丁寧に声をかけながら、プラスチックの食券札を手渡していく。「いらっしゃいませ、今日は何にしますか」「いつもありがとうございます」 半数以上は長年通う顔見知りの常連客のようだ。

岩戸の名物は、毎日仕入れる新鮮な魚介を使った定食。季節やその日の仕入れによって多少の増減があるが、いつも5~6種類ある。もし常連客に好きなメニューを聞いたら、女将の母親の味を再現した宮崎名物「冷汁(980円)」だという人もいれば、「しらすご飯(1000円)」だという常連も、もちろん「マグロ重(1070円)」が一番だという人もいるのではないだろうか。どれも甲乙つけがたい人気メニューなのだ。

ほんのりと温かい「しらすご飯」は予想を超えたおいしさ

トップ3には必ず入るであろう「しらすご飯」定食は、「しょうゆをかける必要はない」と女将に言われ、そのままひと口。意外にもほんのりと温かいのだが、この温度感がとてもいい。適度な塩気とシラスの甘みが絶妙なバランスで引き立て合っている。シラスの他に、薄切りした大根と大根の葉を薄塩で煮たものを混ぜているそうだ。この大根の塩加減と食感もいい加減をつくりだしているのだ。「しらすご飯」定食には、小鉢、みそ汁、漬物に加え、なんと「マグロ重」定食と同じマグロのごま和えがたっぷりと付いてくる。なんともお得感満載の定食だ。

「マグロ重」は、特製ごまだれを絡めたマグロが何層にも重なり合い、白いご飯を埋め尽くしている。ごまだれで少しねっとりとした濃厚な赤身には、香ばしい刻みのりとネギがのせられている。

ボリュームたっぷりの「穴子天ぷら(1000円)」定食も人気の1品。さくさくの衣が包む、ほくほくしっとりのアナゴが絶品だ。

1000円の定食とはとても思えない、本格的な穴子の天ぷら

これほどのボリュームで丁寧に作られた料理が、銀座で、しかもこの価格で味わえるとはなんとも貴重な店だ。常連客が多いのもうなずける。「長年のよしみで河岸では良いものを安く仕入れさせていただいているので、その時期の一番の食材を低価格で提供することをモットーに頑張っています」とは銀座店を切り盛りする息子の森正樹さん。同じ「岩戸」の神田店を仕切る父親から伝授された味を守りながら、自分の感覚でアレンジを加えることもあるそうだ。「ランチは毎日のこと。お客様の日常に溶け込んで、何度でも足を運んでいただけるような店でありたいと思っています」と、正樹さんの口調は静かだがハートは熱い。

銀座1丁目、京橋に近いエリアの一角にある

<今回のお店のデータ>
日本料理 岩戸 銀座店
東京都中央区銀座1-5-1
03-3564-3835
http://www.iwato-jp.com/ginza.html

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PROFILE

森野真代(もりの・まよ)

写真

ライター&エディター。徳島県出身。外資系ジュエリーブランドのPRを10年以上経験した後にフリーエディターに。雑誌やWebを中心に、旅、食、ファッションなどをテーマに執筆中。無類の食べもの好きでもあり、おいしい店を探し当てる超(?)能力に恵まれている。「唎酒師(ききさけし)」の資格取得後は、自己研鑽も兼ねて各地の酒処の探索に余念がない。友人を招いての家飲みも頻繁に開催。

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