あなたが飲みたい“夢のビール”が現実に サッポロが消費者のアイデアでつくる極小ロットビールの可能性

  • 2018年10月25日

  

自分が飲んでみたいビールを、大手ビールメーカーが作ってくれる。そんなビール好きにとっては夢のような話が現実になった。

10月22日、サッポロビールは、料理を作りたい人と食べたい人をつなげるITマッチングサービスを運営する株式会社キッチハイク(東京都台東区)と業務提携し、消費者から募ったアイデアをもとに極小ロットでビールを作るサービス『HOPPIN’ GARAGE』を始めると発表した。

  

一人の“熱い想い”から生まれるビールがあってもいい

『HOPPIN’ GARAGE』は、一般消費者が作りたいビールをWebサイトで応募し、それをサッポロビールが審査。選ばれたアイデアをもとに、応募者とブリュワー(醸造責任者)が一緒にビールを製造する仕組み。1カ月に1種類のペースで新しいビールを作る計画だ。そこで出来上がったビールは、サイト上で企画されるリアルイベントに参加することで飲むことができる。キッチハイクは、この「ビール好き」が交流できるリアルイベントを開催する仕組みを提供する。さらに、イベントで反響の良かったビールは、一般販売される可能性もあるという。

  

発表会見で、サッポロビール取締役執行役員・林直樹さんは、「これまでの商品開発は、マーケティングをするほど商品の角が丸くなり、最も売れている商品に近いものになっていた。であれば、全く違う商品開発の手法をとってはどうか、という発想から『HOPPIN’ GARAGE』構想が生まれた。1人のビール好きの“こんなビールが飲みたい”という情熱を商品にしてみて、イベントで消費者の評判を聞きながら商品開発を進めていく。かなりアグレッシブな手法だが、キッチハイクのCtoCプラットフォームに集まる食に感度の高い人たちのコミュニティーに、『HOPPIN’ GARAGE』のビールが混ざり合えば、ユーザーイノベーションから生まれたビールブランドとして世に送り出すことも可能になる」と話した。

サッポロビール株式会社 取締役執行役員・林直樹さん

嗜好品はもっとワガママになっていい。「飲みたいビールは、自分で作る!」

『HOPPIN’ GARAGE』第1弾は、キッチハイク共同代表の山本雅也さんが手がけた。『探検するハニーエール』と名付けられたこのビールは、山本さんがかつて訪れたラトビアの首都リガで飲んだハニービールが基礎になっているという。

「今回の話が来たときすぐに頭に浮かんだほど、リガで飲んだハニービールのおいしさに衝撃を受けた。あの味を実現するために、世界各国のハチミツを試食して、ベースのビールに合うものを探しました。ここまでハチミツの甘みが強いビールは日本にはほとんど無いと思います。『HOPPIN’ GARAGE』は、自分が飲みたいビールを専門家と一緒に作れる、夢のような時間でした」(山本氏)

サッポロビール株式会社マーケティング開発部マネージャー・土代裕也さん(左)とキッチハイク共同代表の山本雅也さん

実際に山本さんと二人三脚で『探検するハニーエール』を作ったブリュワーの成瀬史子さんは、「社内の商品開発のスタッフが作る企画書は、苦味・甘み・色等のスペックが書かれていますが、山本さんのビールは情緒的なストーリーと世界観から入って、具現化するためにイメージを共有しながらスペックに落とし込んでいきました。とてもエキサイティングなビール作りでしたし、個人の強い思いから発生したビールが、ビール市場を変える取り組みになるかもしれないと感じています」と話した。

  

サッポロビール内でビールの製品開発に携わっているのは数十名だという。一方で、同社が立ち上げた『日本ビール文化研究会』が実施する『日本ビール検定』の有資格者は12,000人にのぼり、ビールづくりに関心がある人は多い。

山本さんは「もともと食は人とつながるツールでした。それはビールも同じで、知らない人同士でも乾杯したら、もう他人ではなく仲間です。キッチハイクが培ってきた食でつながるコミュニティーは、ビールでつながるコミュニティーにもなりうると思っています」と話した。

大手ビール会社が、過去のマーケティングで積み上げた経験はいったん横に置き、消費者との直接対話で新製品を開発し、それをビール好きな人が集まるコミュニティーに評価してもらうという今回の試み。そこで得られる新たなコミュニティーや消費者の共感は、既存のビールづくりでは得られない価値があるとして、新商品開発マーケティングの一環として行うという。『HOPPIN’ GARAGE』が生み出すビールが、市場や業界の今後の商品開発のあり方にまで影響を与える存在になるかどうかに注目していきたい。

※『HOPPIN’ GARAGE』https://www.hoppin-garage.com/

※キッチハイク:「食でつながる暮らしをつくる」をテーマに掲げ、2013年にスタートした料理を作りたい人と食べたい人をつなげるITマッチングサービス。2017年にMistletoe・メルカリなどから2億円の資金調達を実施。会員数:30,000人、イベント:400回/月、参加者2000人/月(2018年10月時点)。

文:石川歩

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