インタビュー

家事卒業を宣言した娘を演じた木村文乃が語る、「卒母宣言」した母との関係

  • 映画『体操しようよ』で草刈正雄の娘役
  • 2018年11月7日

道太郎(草刈正雄さん)の娘・弓子を演じた木村文乃さん

いつかは訪れる定年退職の日。晩年の過ごし方を考えるのは、楽しみであり不安も多いかもしれない。そんなシニア世代の悩みとラジオ体操をテーマにした映画『体操しようよ』が11月9日(金)から公開される。

主演は、大河ドラマ『真田丸』の真田昌幸役も記憶に新しい草刈正雄さん。退職したばかりの几帳面(きちょうめん)で真面目すぎるシングルファーザー・道太郎を愛敬たっぷりに演じる。その娘・弓子役を演じるのが木村文乃さん。弓子は、道太郎が退職した日に“主婦卒業”を宣言すると、道太郎の家事と地域デビューをドライに見守る。

木村さんは草刈さんと初共演。「草刈パパがどーんと待ち構えてくれていたので、胸に飛び込んで行きました」と話し、撮影時のエピソードから、家族の絆についての考えまで語ってくれた。取材時の衣装は、木村さんの柔らかいイメージにぴったりなふわりとしたベージュのワンピース。ただ、今回、劇中で演じた弓子は、実際の木村さんとは違うタイプだったようだ。

【動画】草刈正雄、木村文乃らキャストがラジオ体操を披露(9月27日、完成披露舞台あいさつ)

弓子は自分と真逆な、反抗期に反抗できなかった人

物語は、主人公の道太郎が定年退職する日から始まる。真面目だけが取りえの道太郎は、38年間無遅刻無欠勤だった会社員生活を終え、悠々自適の生活を夢見ていた。しかし、18年前に妻を亡くして以来、家事をしてくれていた弓子の「親離れ」宣言で、道太郎が家事を担当することに。弓子は、家事をうまくこなせず、家で酒を飲んでばかりいる父親にイライラしながらも、黙って見守る。やがて、道太郎は地域のラジオ体操に参加するようになる。

「弓子は、私とは逆のタイプ。反抗期に反抗できずに来た人だろうなと。かなりつっけんどんな感じで分かりにくいけど、父親への愛情はあるんですよね。監督は、典型的なドライな娘にしたかったみたいで、私がこざかしくお芝居を入れようとすると、『いらないです』と言われ(笑)。作品を見たマネジャーは『(弓子の言動は)とてもキツめの人だったね』と言っていました(笑)」

(C)2018「体操しようよ」製作委員会

ジャージー姿にニットキャップ。かっこいい草刈さんのイメージとは程遠い、おじさんスタイルでラジオ体操に勤(いそ)しむ道太郎。ラジオ体操会というコミュニティーで、新たな楽しみと淡い恋を見つけていく。現場での草刈さんは、「ジャージーの“イン”がかわいくて、みんなで盛り上がっていました」と振り返る。

「初めてお会いしたのが、ラジオ体操をするシーンでした。私は練習で行ったのですが、両手を広げて『待ってたよ!』とおっしゃってくださって。そう言ってくれると、胸に飛び込んで『よろしくお願いします!』と言うしかないですよね。

草刈さんって、クールでかっこいいイメージが強いけど、現場ではいつも『お父さんはインするスタイルだ!』とジャージーをズボンに入れてらっしゃるのが、印象的でかわいらしくて。でも、逆に足の長さが目立ってかっこいいんですよね、やっぱり」

監督のために頑張ろう!という団結感があった現場

撮影は今年の5月。雨が続き、晴れ待ちも多かったが、現場は終始なごやかな雰囲気だったと言う。今回の撮影現場ならではの共通点もあったとか。

「草刈さんの人柄、監督の人柄もあり、とてもおだやかな現場でした。いつも何かしらのストレスを抱えながら撮影していることが多いので、『こんなにおだやかな気持ちでいられるんだ』ということに、喜びじゃないけど、あたたかいものを感じながら撮影できたのが大きかったです。

実は、現場に血液型がO型の人が多かったんです。監督も草刈さんも、(道太郎の同僚役の渡辺)大知くんも、みんなO型。私はAB型ですが、もともとO型の人と相性が良くて。雨続きでラジオ体操のシーンがなかなか撮れず、監督がどんどんちっちゃくなり、風邪までひいてしまって……(苦笑)。『監督のために頑張ろう!』とみんなで盛り上げて、団結している感もありましたね」

ラジオ体操は高校生以来だったという木村さん。「久しぶりにやって、次の日は全身筋肉痛でした」(C)2018「体操しようよ」製作委員会

ラジオ体操と家事に奮闘しながら、自分の生き方を振り返る道太郎。弓子との距離は縮まらないが、親子の絆を感じながら2人はそれぞれの人生を歩んでいく。終盤に、とても印象的なシーンがある。弓子が道太郎から、ある感動的な言葉をかけられ、弓子は絶対に泣くだろうというシーンでも、涙一粒流さず、表情も変わらなかった。

「監督からは、泣いて欲しいと言われました。でも、本番では泣けなかったです。お父さん(道太郎)がびっくりするような話をするから『知らなかった~!』って。ドライに過ごしてきた時間が長かったから、急に愛情を感じさせる言葉を言われても受け止めきれなかった。この愛情は、離れてから初めて気づくんじゃないかな。ラストの車で去っていくシーンも同じ。監督から『いつも通り、さらっと行ってください』と言われて。ドライな弓子らしさが出ているシーンだと思います」

(C)2018「体操しようよ」製作委員会

母親には20歳になったら“卒母宣言”されました(笑) 今が一番いい関係

今作で描かれる家族の絆。木村さんが感じる家族とは、“切っても切れない縁”だと言う。

「私の場合、そこに若干『面倒くさい』が入っています(笑)。好きって言うのは照れくさい、でも嫌いって言うと傷つけそう。とはいえ家族だから会わないわけにもいかない。そういうのが面倒だと思いながら、ずっと気になる存在でもある。ポジティブ寄りの面倒くさいですね(笑)。

昔の私は、反抗期もちゃんと反抗して、親の心配が重すぎて離れようとしたこともありました。ケンカをしなくなった今のほうが、親子の楽しさや幸せを感じることが増えました。今が一番いい関係を築けていると思います。

母からは『20歳になったら何にも言わないから、学校は卒業して20歳まではちゃんとして欲しい』と言われて。実際に私が20歳になり、2歳下の弟が20歳になったら“卒母宣言”されて。『もう私、あなたたちのお母さんじゃないから』って(笑)。呼び方もお母さんから、下の名前になりました。この間なんて、母が突然『NYに行きたい』と言い出したので一緒について行きました。来年60歳になりますけど、そう言ってくれる親で良かったなと。いい意味で、母親が振り回してくれています」

スタイリスト/藤井享子、ヘアメイク/井村曜子(éclat)

この映画が一歩踏み出せない人の背中を押してくれたら

自分が退職後に第2の人生を始める時、その一歩は簡単なようでいて難しい。家族や社会とどう付き合い、どう生きるかを改めて考えさせられるターニングポイントでもある。

「子どもが大きくなると、親子の会話も減ってきますよね。 そんな時に、親子でこの映画を見に行って、『ラジオ体操してみたら?』『何言ってんの?』みたいな会話が生まれて、道太郎と弓子みたいな関係になってもらえたらいいな、と思います。

何歳になっても、恋もできるし新しいこともできる。道太郎世代の50代60代って、自分の人生を楽しむことより、人のために生きてきた世代だと思います。だから、自分の好きなモノ・コトを、純粋に好きになって欲しい。子どもは親に楽しんでいてもらいたいんですよね。倫理に反することじゃなければ、恋したっていい。純粋に人を好きになることは間違っていないと思うんです。

道太郎も一歩を踏み出すまでもがいていましたが、最後に踏み出せるかどうかで大きく変わってくる。でも、押し付けることもできないし、失敗が怖いこともわかります。踏み出すことをためらう人の背中をちょっと押してあげられる映画になればと思います」

(文・武田由紀子 写真・花田龍之介)

映画『体操しようよ』予告編

『体操しようよ』作品情報
監督:菊地健雄
脚本:和田清人、春藤忠温
キャスト:草刈正雄、木村文乃、きたろう、渡辺大知 / 和久井映見
主題歌:「体操しようよ」RCサクセション(ユニバーサル ミュージック)
配給:東急レクリエーション
(C)2018「体操しようよ」製作委員会
11月9日(金)全国ロードショー
公式サイト:taiso-movie.com

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