小川フミオのモーターカー

メルセデス・ベンツらしい武骨だが優雅さもそなえたW123クーペ

  • 世界の名車<第234回>
  • 2018年11月5日

全長4640mmもあったがSクラスに対して「コンパクトクラス」と呼ばれていた

2ドアクーペは本来エレガントなものである。しかし、メルセデス・ベンツが手がけるとなんとなく武骨だ。でもそこに味があると私は思う。端的な例が1977年に発表されたコンパクトクラス(W123系)のクーペである。

クーペなのにスタイリッシュに見えないのは、キャビンがあまり低くなく、かつリアウィンドーもそう寝かされていないからだ。スタイルのために乗員が少しぐらい窮屈な思いをしても仕方がないではないか、と考える自動車メーカーがある一方で、メルセデス・ベンツは正反対だった。

角形ヘッドランプは6気筒モデル

前車軸と後車軸との距離であるホイールベースは、セダンより85mmも短くした(クーペ=カットの本来の字義どおりに)。なのにふんぎりが悪いというか、後席の乗員も出来るだけ快適に座れるように配慮したところが生真面目である。

でも横から見ると、リアクオーターピラーの太さといい、クロムのパーツで囲ったサイドウィンドーの形状といい、えもいわれぬ味がある。少なくとも私にはそうで、見飽きないと言ってもいいぐらいだ。

機能美という言葉がぴったりのダッシュボード

79年に発表されたSクラス(W126系)に通じるスタイリングで、太さと細さの微妙なバランスというか、よく見ると、武骨さのなかにエレガントな要素をうまく取り込んでいる。側面、あるいは後方からの眺めは傑作だと思う。

本国には、2.3リッター4気筒の230Cと、2.8リッター6気筒の280C(のちに燃料噴射を備えた280CEも登場)と、3リッター5気筒ディーゼルの300CDとバリエーションがそろう。日本では280CEが正規輸入されていた。

サイドウィンドーは前後ともに下まで降りるので全開にするとカッコいい

運転するとしっかりしていた。とにかく剛健なかんじというか。けっして速くはないのだけれど、ステアリングホイールはよく切れるし、乗り心地もすぐれている。

欧州の高級家具のクッションと同様、馬の毛とヤシの繊維で編んだパームロックを内部に敷いたうえ、さらに工員が手作業でスポンジを1本ずつ畝(うね)に入れたシートも、私には硬めだったが、工芸品と言いたくなる作りのよさを感じたものだ。

シートの作りは工芸品のようだった

85年まで生産されたが、84年には後継車種(W124)が登場している。そのため最後の頃のW123はシートがW124と同じモデルも存在している。そのほうがクッションがソフトだった。

私はいまでもこのモデルが好きで、たまに街で見かけると手を振ってしまう。欧米だと手を振り返してくれるが、日本ではけげんな顔をされる。でも少しでも気持ちが伝わるといいかなと思うのである。

部品は100万kmの耐用を想定して作られていたとか

写真=Daimler提供

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PROFILE

小川フミオ(おがわ・ふみお)

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クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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