インタビュー

常識人のイメージを一新、渡辺大が語る仕事論「誰かのまねをしているようじゃだめだ」

  • 映画『ウスケボーイズ』で日本ワインの革命児役で主演
  • 2018年11月5日

ワイン醸造家の役を演じたことで、まわりからおすすめのワインについて聞かれることも増えたとか。「今は逆に、フランスやイタリアのワインを飲み進めて、勉強しています」

ワインといえばフランスやイタリアが主流だが、日本のワイン界で革命を起こした若者がいたのをご存じだろうか?

映画『ウスケボーイズ』が現在公開されている。今作で、主人公の岡村を演じた渡辺大さんは、1本の日本産のワインに心を奪われ、困難を乗り越えながら自らワイン作りに奮闘する青年を熱演している。劇中では、ボサボサの髪に破れたデニム、これまでの出演作でのまじめなイメージを覆す渡辺さんの姿は新鮮だ。「ワイン作りは、役者にも通じるものがある」と感じた撮影時のエピソードや2児の父でもある素顔を語った。

【動画】「映画は文化を作っていく」渡辺大さんインタビュー(撮影・高橋敦)

実際にモデルになった人物の畑で撮影

原作は、第16回小学館ノンフィクション大賞を受賞した『ウスケボーイズ 日本ワインの革命児たち』。出演が決まる前の渡辺さんは、「ワインは好きだったけれど、それほど詳しくもなかった」と言う。

「どの銘柄が好きということもなく、ただ漫然と飲んでいました。ただ、日本ワインという選択肢はありませんでしたね。作品を通じて日本ワインの魅力を知り、日本人がその良さを知らずに飲まないのはもったいないと思いました。

撮影に入る前に、柿崎ゆうじ監督が営むワインバーに行って勉強しました。スワリング(グラスを回し、ワインの香りを立たせること)のやり方、グラスのどこを見るのか、赤白それぞれの飲み方の違い、どんなコメントがふさわしいか。キャストみんなで、ワイワイ言い合いながら飲めたことが良かったです」

(C)河合香織・小学館 (C)2018 Kart Entertainment Co., Ltd.

渡辺さん演じる岡村は、ワイン好きの友人と「ワイン友の会」を結成。毎晩のように友人たちとワインを飲み、うんちくを語る。ある日、1本の日本ワイン『桔梗(ききょう)ケ原メルロー』と出合い、世界に通用する日本ワインがあることに衝撃を受ける。そのワインを生み出した巨匠、麻井宇介と出会った岡村は、自らのワイン作りに没頭していく。

「(岡村のモデルとなった)岡本さんに実際にお会いしたら、とても静かな方で。粘り強くワインを作る姿勢を感じ、その芯の部分をつかまないと演じられないと思いました。自然とじっくり向き合う姿をドキュメンタリーのように投影しようと演じました。

撮影は昨年の7月、3週間弱で撮りました。山梨にある実際の岡本さんの畑にお邪魔して撮影したので、カメラを少しずらすと岡本さんが隣で作業しているんですよ。ブドウに袋をかぶせたり、剪定(せんてい)をしたり。劇中に映っていたブドウも、今は樽(たる)に入って醸造されているはずです。天気にも恵まれて、撮影で雨が降ったのは1日だけ。ワインもすごく良く仕上がるのではないかとワイナリーのみなさんが言っていました」

役者にも通じる思想「まねをしているようじゃだめだ」

麻井宇介は、岡村に「人のまねをしても尊敬されない」「常識にとらわれるな」「教科書を破り捨てろ」とワイン作りの思想を伝える。そのメッセージは渡辺さん自身にも響き、考えさせられたそうだ。

麻井宇介役は橋爪功さん。「橋爪さんは現場ではフランク。テストと本番のアプローチが違っていたりして、学ぶことも多かった」(渡辺さん)(C)河合香織・小学館 (C)2018 Kart Entertainment Co., Ltd.

「麻井宇介先生の言葉は禅問答のようなものが多く、それにどう答えるかを岡村は常に考えていた。『オリジナルを作らなくてはいけない』『必勝法はない』。この問いは、役者に通じるものがあります。なおかつ宇介先生を演じたのが橋爪功さんで、橋爪さん自身に言われているような気持ちになったことも大きかったです。

僕であり岡村が、どうしたらいいんだろうとポツンと1人で悩んでいる姿は、とても重なる部分が多かった。『誰かのまねをしているようじゃだめだ』という言葉は、とても重かった。役者というオリジナリティーが必要な仕事をしている以上、自分をどう表現するか、生み出すかを常に考えているんです」

映画は、スペインのマドリード国際映画祭に出品され、外国語部門最優秀主演男優賞を受賞。またアムステルダム国際フィルムメーカー映画祭でも外国語部門最優秀主演男優賞を受賞し、2冠を達成した。

受賞後、父親である渡辺謙さんからLINEで「おめでとうございます」とメッセージをもらったそう

「役者としてはまだまだ、(賞をいただくことは)縁遠いかなと思う部分もありましたが、とても光栄です。(映画祭の審査員は)日本のワインに興味を持ち、作り手の情熱に惹(ひ)かれたのではないかと思います。日本人じゃなく、海外の方が見て評価してくださったことは、今後が非常に楽しみですね。

マドリード映画祭では現地に行きましたが、日本では上映されないようないろいろな作品に触れ、海外の方とコミュニケーションしたことで、『海外の人と仕事をするのも楽しいんだろうな』と興味が湧きました。今後は、そんな世界ものぞいてみたいという気持ちも出てきましたね。現場に行くことで、将来の具体的な目標が生まれたことが一番の収穫です」

30代、自分にじっくり向き合えるようになった

現在34歳。17歳から俳優をスタートし、俳優としての人生が半分を占めるようになる節目での受賞となった。役者人生を振り返って、今感じることは?

「17歳からこの顔です。老け顔でしょ?(笑) ちょっとずつ若返っている感じですね。学生の頃は見た目だけで学割が利かなくって、必ず学生証で確認されましたから。

どちらかというと“常識人”や“はっきりものを言う性格の人”を演じることが多くて、今回の岡村のような“うつろう人”は珍しいです。20代は落ち着きがなくて、そわそわしていたから、この年になったから表現できるようになったのかな。今はゆっくり物事を見渡し、自分とじっくり向き合えるようになった。

学生時代から役者をしていますが、本格的に動き出したのは22~23歳くらい。まだ12年くらいなんです。第一線で活躍している方たちには追いつけていない、もうちょっとという気持ちもあり、頑張っていい仕事をして、いい現場に巡り合えればいいと思います」

(C)河合香織・小学館 (C)2018 Kart Entertainment Co., Ltd.

2児の父。今一緒に過ごす時間を大切にしたい

プライベートでは20代で結婚、子どもは小学3年生と4年生になった。「休日はどんなお父さんですか?」と聞くと、こう答えてくれた。

「ごはんを一緒に食べたり、学校のことを聞いたり、宿題を見たり。普通のお父さんと変わらないです。子どもが20歳になるまで、あと10年くらいなんです。もう半分終わっちゃったんだ、僕たちを頼ることもなくなるんだと思うと、今一緒に過ごす時間を大事にしたいと思います。

役者は晩婚が多いですが、そりゃそうですよね(笑)。明日はどうなるか分からない人たちだから、みんな計画的で落ち着いてから結婚しようと思う。僕は計画性がないから(笑)、どっちかと言うと早めに結婚したかった。嫁さんとゆっくりしたいなと。

落ち着いた印象に見られるのは、親だからと言う部分もあるかもしれない。結婚したことで、人としていい方向に修正してもらったなと思います。役者は、自分自身をちゃんとできていないとだめだという思いもあって。僕は、プライベートがしっかりしていたほうが、きちんと仕事ができる。衝動的な行動は仕事でやればいい。ゆっくりできるところ、全力で向き合うところの二つがある。そこがリンクせず、ごちゃ混ぜにならないほうがいいと思っています」

映画『散り椿』の殿役も印象的だった渡辺さん。「実は殿様役のオファーが多くなりました(笑)。みなさんがびっくりするような役もやりたいです」

映画は文化を作る。ワイン文化を日本に根付かせたい

映画『ウスケボーイズ』は、大ヒット上映中。日本ワインの常識を覆す、革命児たちの静かで熱い物語をぜひ劇場で見てほしい。最後に、渡辺さんが映画へのメッセージをくれた。

「ワインの醸造家の話でもあるし、役者として大事なこと、人間として大事なことを学んだ作品でもあります。自分が生きる意味は、会社や組織が教えてくれるわけじゃない。自分がどう生きるか、何とどう向き合うかを見て感じていただけたらうれしいです。

もう一つは、日本ワインの良さを知ってもらって、テーブルに置かれるような文化が根付くことに貢献できたらいい。映画は、文化を作るものでもある。ワイン文化を日本に定着させるところまでが僕たちの役割だと思っています。フランスのように、ランチでワインを楽しめるような文化になるといいですね」

(文・武田由紀子 写真・花田龍之介)

映画『ウスケボーイズ』本予告

『ウスケボーイズ』作品情報
キャスト:渡辺 大、出合正幸、内野謙太、竹島由夏、金子 昇、寿大 聡、須田邦裕、上野なつひ、升 毅、萩尾みどり、清水章吾、岩本多代、柴 俊夫、田島令子、小田島 渚、大鶴義丹、柳 憂怜、伊吹 剛、和泉元彌、伊藤つかさ、安達祐実、橋爪 功
エグゼクティブプロデューサー:柿崎ゆうじ
プロデューサー:古谷謙一、前田茂司
原作:河合香織『ウスケボーイズ 日本ワインの革命児たち』小学館
監督:柿崎ゆうじ
主題歌:Yucca「風の未来」テイチクエンタテインメント
脚本:中村 雅
制作プロダクション:楽映舎
企画・製作・配給:カートエンターテイメント
配給協力:REGENTS
2018年/102分/シネスコ/5.1ch
(C)河合香織・小学館 (C)2018 Kart Entertainment Co., Ltd.
10月20日(土)より新宿武蔵野館ほか全国で上映中
ウェブサイト:usukeboys.jp

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