マッキー牧元 うまいはエロい

<65>斬新なロシアの水ギョーザ「ペリメニ」 凜々しさに色気にしたたかさが宿る逸品(幡ケ谷「ペリメニキッチン」)

  • 文・写真 マッキー牧元
  • 2018年11月6日

弾力に富み、かむほどにおいしいロシアの水ギョーザ「ペリメニ」

こんなにもたくましいペリメニには、出会ったことがない。と書いても、多くの人にはなんのことかわからないかもしれない。「ペリメニ」は、ロシアの水ギョーザである。

中東の肥沃(ひよく)な三角地帯で1万数千年前に初めて栽培されたといわれる小麦は、様々なかゆやパンの形となって世界中に広まっていった。そして中国のおそらく東北部で、「面」が生まれた。「面」とは、今で言うところの麺やギョーザの皮などを用いた小麦粉料理である。

面料理は、世界中に広まっていく。特に薄皮で練ったあんを包んだギョーザ形態の定着率は高く、イタリアの「ラビオリ」ほか、ネパールをはじめチベット文化圏に広がる「モモ」、イエメン発祥の「マンディ」、東欧周辺の「ピエロギ」、モンゴルの「バンシ」、日本の「焼きギョーザ」、チュニジアの「ブリック」、韓国の「マンドゥ」、ドイツの「マウルタッシェン」、インドの「サモサ」、スペイン発祥の「エンパナーダ」、そしてロシアの「ペリメニ」とユーラシア大陸と北アフリカにて、一大食文化圏をなしている。

この店は、店名にペリメニを掲げた店である。ただ、ロシア料理店ではない。メニューには北欧料理やイタリア料理もある。

前菜の「鰊(にしん)のサラダ」

まずはロシアのビールでのどを潤し、前菜に、「鰊(にしん)のサラダ」を楽しむ。しなやかに崩れるニシンの身がおいしい。

続いての「野菜のスープ」は、キャベツやセロリ、トマトや玉ねぎ、キノコが煮込まれた、なんとも穏やかな味わいで、体がゆっくりとくつろいでいく。

キャベツやセロリ、トマトや玉ねぎ、キノコが煮込まれた「野菜スープ」

自家製サワークリームを泡だて、自家製ビスキュイ(焼き菓子)で挟んだ「ビスキュイとサワークリーム」

このスープに合わせて頼んだ、酸っぱいライ麦パンは、自家製だという。そしていよいよペリメニの登場である。この日は、豚、羊、鹿の3種類から選べた。

一般的に、都内のロシア料理店では、合いびき肉や豚ひき肉を使ったペリメニを出す。しかし店主によれば、豚肉牛肉、羊肉、ジビエ、ジャガイモ、ジャム、魚介類と、ロシアでも地方によって様々なあんを包むのだという。

鹿肉にも惹(ひ)かれたが、羊を頼んでみた。サワークリームがかけられ、クルンと丸まった姿は可愛い。しかし、皮は白ではなく茶色がかっていて、ディルの葉が乗せられているところが、今まで出会ったペリメニと様子が違う。

一つ口に放り込んだ。つるんと唇を過ぎ、かもうとすると、皮がたくましい。あんもたくましい。皮はブリッと、歯を一瞬押し返すような弾力があり、羊のあんもかむ喜びがある。そしてのどに消えかかる刹那(せつな)、羊の香りが鼻に抜けていく。

なかなかしたたかなペリメニである。クセになっちゃう魅力を秘めたペリメニなのである。見た目は愛らしいロシアの少女だが、実は凜々しい人生観をすでに備えていて、色気をちらりと見せる。そんな夢想さえ生むペリメニである。

聞けば、何十種類の小麦粉を試し、香りづけや味付けも試行錯誤して完成したのだという。うむ。このしたたかさ、たくましさは、そこにあったか。

ペリメニキッチン

ペリメニキッチン

幡ヶ谷の住宅街にたたずむ食堂。カウンターとテーブル席1つの小体な店をご主人1人で切り盛りする。「ペリメニ」は8個で1000円から。「鰊のマリネ」(900円)。「野菜のスープ」(600円)、「ライ麦100%のパン」(300円)、「サーロ(豚脂ハム)」(500円)。デザートは、その場でサワークリームを泡だてて作る「ビスキュイとサワークリーム」がおすすめ。飲み物は、ロシアのビール「バルチカ」(1000円)ほか、ワイン、蜂蜜酒など豊富にある。

【店舗情報】
東京都渋谷区本町6-38-10 大竹ビル 102
03-6304-2361
京王線(京王新線)「幡ケ谷」駅 徒歩5分
営業時間:18:00~23:00
定休日:毎週水曜、第1、3、5火曜
ウェブサイト:https://www.facebook.com/pelmeni.kitchen.tokyo/ (FBページ)

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PROFILE

マッキー牧元(まっきー・まきもと)タベアルキスト&味の手帖編集顧問

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1955年東京生まれ。立教大学卒。年間幅広く、全国および世界中で600食近くを食べ歩き、数多くの雑誌、ウェブに連載、テレビ、ラジオに出演。日々食の向こう側にいる職人と生産者を見据える。著書に『東京・食のお作法』(文藝春秋)『間違いだらけの鍋奉行』(講談社)。市民講座も多数。鍋奉行協会顧問でもある。

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