今日からランナー

走路で描く「東京顔マラソン」を体験 完走して分かったその楽しさ

  • 山口一臣
  • 2018年11月9日

指示書を片手にランニング。同じ場所を二度走ることもある

前回、紹介した「顔マラソン」を実際に走ってみた。実は、顔マラソンに挑戦するのは2回目だが、前回は仕事の都合で時間が足りず、途中でリタイアしてしまった(つまり顔が完成しなかった)。今回こそ、完走して地図ソフト上に顔を描ききろうと決意しての参加である。

まずは、Facebookで「顔マラソン」と検索してみる。すると、東京で近くカズキさん(51)の呼びかけで顔マラソンが実施されることがわかった。カズキさんは顔マラソン考案者の浜元信行さんの友人で、東京を中心に年に10回以上も顔マラソンのイベントを主催している。前回、走ったときもカズキさんと一緒だった。これはラッキー! すぐに「参加します」とのメッセージを入れる。これでJR飯田橋駅に午前8時30分集合という話が決まった。

当日の持ち物は帰り用の着替えとタオルなどに加え、ランニング中に財布やスマホなど身の回りの品を入れておくためのリュックもしくはポーチが必要だ。そして絶対に忘れてはいけないのがGPS付きランニングウォッチか、スマホにダウンロードしたランニング用アプリである。これがなければ「顔」が描けない(笑)。もうひとつ、公式サイトにあるマップと指示書をプリントして持参することも忘れずに。できたら事前に走るコースを地図で“予習”しておくといいだろう。

10月の祝日、上記の準備を整えて集合場所のJR飯田橋駅へ向かった。到着すると、すでに複数のランニングウェア姿の人が集まっている。声をかけると、やはり顔マラソンに参加する人たちだ。そりゃそうだろう。皇居ランでもない限り、こんな時間にこの姿で都心のど真ん中に集合する人たちは珍しい(笑)。

「きみはもう走ったか。」と書かれたおそろいのTシャツを着ていることからも明らかなように、多くは顔マラソンの常連さんだ。とりあえずごあいさつを。やがてカズキさんも現れた。今回は10人ほどの参加だった。

「 きみはもう走ったか。」というコピーが書かれた東京顔マラソンのTシャツ

スタート前にカズキさんから交通ルールを守ることなど注意事項の説明がある。同時に、私のような初心者にはなるべく先頭を走るように、と指示された。

飯田橋駅を起点とする「東京顔マラソン」は、顔マラソンの原点中の原点なので、ベテラン勢はコースをよく知っている。だから指示書なしでもスイスイ走れる。逆に、知らない人は指示書を見ながら、交差点で立ち止まったり、道順を確認したり、考えながら進まなければならない。これがまた、顔マラソンのだいご味のひとつなのだ。初心者はまず、自分の頭で判断することが大切となる。

カズキさんの説明の後、荷物を駅のコインロッカーに預け、午前9時にいよいよスタート! まずは飯田橋から外堀通りを市ヶ谷へ向かう。ちょうど東京マラソンのコースを逆走することになる。

指示書に従い〈(市ケ谷の)橋渡ってすぐ左折→九段下〉(指示書より。以下同)を経て再び飯田橋駅へ。そこからまた外堀通りで神楽坂下まで行って、〈神楽坂のぼって下りきる〉〈弁天町(ファミマ)までいって左折〉〈市ケ谷柳町左折〉〈牛込北町左折〉して再び神楽坂駅から弁天町へ。耳や目や口などループ状の部分を描くために、同じところを何度か走ることもある。頭の中で「これでメガネのふちが描けた」などと想像するとモチベーションもグッと上がる。

残り6km地点で現れた急な坂道

実際にやってみてわかったのは、顔マラソンの魅力のひとつは、この“宝探し”的要素だということ。地図を確認しながら指示書に従って走ると、指示書通りの景色が見えてくる。そこの交差点を右に曲がると、ほら指示書通りにコンビニがあった、とか。そして、道を間違えるとせっかくの「顔」がゆがんでしまう。

私が子どものころ(1970年代)に流行したオリエンテーリングに似た感覚である。「顔」を描くため、普段ならめったに通らない道に入ったりもする。長く東京に住んでいたが、「へぇ〜まだこんなところがあるんだ」と思うこともしばしばだった。車だと絶対に通り過ぎてしまうし、徒歩だとこんなに広い範囲はカバーできない、その中間であるランニングだからこそ見えてくる、今まで気づかなかった“地元の風景”に出会えるはずだ。

もうひとつの楽しみは、ランナー同士の交流だろう。私自身、この日はカズキさん以外とは初対面の人ばかりだったが、おしゃべりしながら和気あいあいと走るうちに、みなさんと打ち解けることができた。

ランニングという共通の話題があるだけに、きっかけづくりは簡単だ。参加者の中にはサブ3(フルマラソン3時間切り)ランナーもいれば、ウルトラマラソンやトレイルランニングの経験者もいた。普段は一緒に走れないレベルや、走りの中でも競技ジャンルが異なる人たちと、ゆっくり同じペースでずっと話をしながらのランニングはとても貴重な経験だった。「次はどこそこの大会に出るんですよ〜」「そこ、私は毎年出てますよ」といったレース情報の交換も参考になる。

そうこうするうち、隊列は両目(メガネ?)を描き終えて、早稲田から面影橋を経て明治通りへ。新大久保、高田馬場、新宿、四谷を通って再び飯田橋駅へと戻る。途中、コンビニでの休憩や昼食を挟みながら約29km走ったことになる。残り約13kmで髪の毛の部分を描けばフィニッシュだ。ゆっくりでも30km走るのはかなりきつい。だが、「顔」を描くという目的があれば意外とできてしまう。というか、途中で止めると「顔」が完成しないので、つい頑張ってしまう。その意味で、LSD(ロング・スロー・ディスタンス)の練習にもなるだろう。

飯田橋からスタートして、この日のランニングで描いた「顔」

さあ、ここからゴールに向かってひと走りだ。飯田橋から髪の毛の輪郭を描きながら池袋→目白へと進み、明治通りを学習院下まで一気に下る。下り坂は、正直ゆううつだった。なぜなら、再び目白まで上り坂を戻らなければならないからだ。でも、それをやらなければ「顔」ができない。頑張るしかない。

カズキさんが「ここは都内でいちばん急だといわれる坂道です」という“絶壁”が目の前に現れた。残り約6kmの地点だ。疲労がけっこうたまっている。でも、ここを上り切れば飯田橋まではほとんど下りだ……などと考えていると、常連のみなさんが坂道めがけてダッシュを始めているではないか。いや、元気だなぁ(笑)。

結局、飯田橋にゴールしたのは夕方、午後4時半を回ったところだった。休憩などを除くと実際に走っていたのは6時間15分ほど。それから神楽坂の銭湯で汗を流し、スマホに描いた「顔」を片手に、お約束の打ち上げビールを飲みながら、再びランニング談議に花を咲かす。

丸1日、本当に楽しかった。タイムを競うレースもいいが、しばらくはこの「大人の運動会」にハマりそうだ。

今回一緒に走った皆さん

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PROFILE

山口一臣(やまぐち・かずおみ)

写真

1961年東京生まれ。ゴルフダイジェスト社を経て89年に朝日新聞社入社。週刊誌歴3誌27年。2005年11月から11年3月まで『週刊朝日』編集長。この間、テレビやラジオのコメンテーターなども務める。16年11月30日に朝日新聞社を退社。株式会社POWER NEWSを設立し、代表取締役。2010年のJALホノルルマラソン以来、フルマラソン20回完走! 自己ベストは3時間41分19秒(ネット)。

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