湯山玲子の“現代メンズ解析”

「“AVの罪”をどう考えるか?」湯山玲子がしみけんに直撃!

  • 湯山玲子の“現代メンズ解析”#05
  • 2018年11月16日

  

著述家の湯山玲子さんが、今をときめく男性と「現代のカッコよさ」について語り合う当連載。今回の対談相手はアダルトビデオ(以下AV)俳優のしみけんさんです。

タレント業や執筆業でも活躍するしみけんさんは、この夏、作家・ブロガーのはあちゅうさんとの結婚でも話題を呼びました。

今回、湯山さんはなぜしみけんさんを対談相手に指名したのか。

多くのAVで、男性が女性を軽蔑することで性的快感を得る場面が描かれ、それが今の日本において“セックスのお手本”となり、日本人男性の性に対する考え方や“男らしさ”にネガティブな影響を与えているのではないか――。

こうした問題意識を持つ湯山さんは、俳優としてその点についてどう考えているのか聞いてみたかったのだとか。

2時間を超えて盛り上がった「性」を巡るトークをお届けします。

「女=被支配者」を生み出したAVの罪

  

湯山玲子(以下、湯山) 最初に聞いちゃいますけど、7月にブロガーのはあちゅうさんとの事実婚を発表されましたね。おめでとうございます。はあちゅうさんとは、一度テレビのコメンテーターとして机を並べた仲なんですが、非常にプラグマティック(実利的)な思考の方なので、パートナーは「彼女の社会的活動にとってお得な男性」を選ぶと思っていたら、なんとAVの人気俳優だったという。彼女はしみけんさんのどこに引かれたんでしょうね。何か言ってました?

しみけん 聞いてみたら、いつも楽しそうに生きているところや、自分が全く知らない世界を教えてくれるところと言ってくれました。

湯山 しみけんさんの仕事については、どうやって折り合いをつけてるんでしょう。

しみけん 「スポーツと認識している」と言っていましたが、頭では理解していても心がついてこない状態というか、完璧に割り切れているわけではないと思います。

  

湯山 最近の社会的な傾向として、物事を全て「良い/悪い」の二元論でかたづけてしまいがちですが、人間関係は実際そんなに単純なものではないですよね。さて、本題に入っていきましょうか。この連載は現代的な男のカッコよさを掘り下げていくものですが、私は日本人の「男らしさ」「カッコよさ」などの男性観にAVが大きく影響を与えていると考えます。あえて「日本人の」と言っているのは、性の価値観は国の文化に大きく左右されるから。

では、日本のAVが植え付けた価値観は何かというと「女性を軽蔑することで、欲情する」というもの。多くの作品で男にとって女は弱者であり、そういった構造が描かれています。

しみけん 確かにそういう内容は少なくないと思います。

湯山 以前、オランダの人気俳優トム・ホフマンと日本人女優がひとつの部屋で性交を重ねる映画『シャボン玉エレジー』(イアン・ケルコフ監督/日本・オランダ合作/1999年)の撮影が日本でクランクインした直後、トムが私の自宅に食事に来たことがありました。そのとき彼が言ったのは、「セックスシーンで相手が“いやだ、いやだ”と悲しそうに、また苦痛を訴えるような表情をするので、僕は悪いことをしているような気がした」ということ。私はハッとして、「それは日本の性的な文化で、疑似SMのようなもの」と、日本のAVの数々を見せてあげました。トムは驚いていましたよ。「本当だ、日本人はメイクラブをエンジョイしないのか。奇妙な風習だ」と。

男女間のセックスに支配者・被支配者の関係を作ってしまったのは、日本のAVの大きな罪ですよ。支配的に欲情しようとすると男性と、そこに合わせる形で「侮辱」を性的快感として受け入れていく女性。「私、“M”だから」という女性の何と多いことか。これは大きな問題じゃありませんか。業界の人間としてはどう考えます?

  

しみけん なるほど、初めて投げかけられた問いですね。残念ながら、AVが悪(あ)しき差別感情を植え付けてしまったという指摘はおっしゃる通りだと思います。ただ、そうした性的価値観は、僕のセックスに対する考え方とは大きくずれていますね。

湯山 しみけんさんにとってセックスはどういうもの?

しみけん ふたりで言葉の存在しない会話をしていくもの、という感じですね。

湯山 ああ、なるほど。それはしみけんさんの作品に表れている気がするね。

しみけん 言葉がなくてもだんだん相手が言っていることがわかるようになって、同一化していくのが僕の理想です。女性によって性格も身体も違うのだから、海外のコンセントの変換プラグのように、相手の個性に気を遣いながら合わせていくスタイルです。

湯山 女によって「プラグ」が違うことすらわからない男が大多数でしょうね。それこそAVで見る女性たちとは異なる言動を目の当たりにしたとたんに萎えてしまいそう。それを受けて、女性も男性が理解しづらい「プラグ」を引っ込めてしまいがち。ストレートに聞きますが、しみけんさんは、どんな女の人でも欲情することができますか? なぜ、この質問をするかと言えば、女性にとって男性から欲情されないことが、最大の恐怖だからです。

しみけん しますね。というか、その感覚がない人には、この仕事は務まらない。どの女性にも必ず魅力があるんですよ。それが目に見えないところに隠れていることも少なくなくて、男性も若いうちはそれを探る能力がないから、どうしても若さや容姿など表面だけを見てしまいがちになる。

  

以前出演した作品で、双子のおばあちゃんと3人で性行為をしたことがありました。初めて見る70代の肉体、きれいでしたね。戦争を体験したあるおばあちゃんは、内ももに戦争に行った恋人の名前の入れ墨を彫ってありました。それを見たとき、非常に感慨深いものがありましたね。そこには人間らしさがあるんですよ。

湯山 人間らしさに欲情! その回路があれば、多くの男女が救われる気がしますよ。少なからず世の男性たちは、人間らしさよりも「年齢」「容姿」といった記号で欲情する回路の方が強大だと思います。しみけんさんはいつから人間らしさに欲情できるようになったの?

しみけん うーん、それはおそらく、熟女と絡んだときに感動してからですね。AVの世界でも若い子ほど、「周りからどう見られているか」「カメラにどう映っているか」といったことが先行して心が裸になってない。熟女の人たちは他の目は気にしません。演技ではなく、欲望が素直に言葉になっている。僕もそれに引っ張られて動物になりました。

一応断っておきますと、僕の「熟女」の定義は、「自分以上に愛する人やものを見つけた人」。年齢は一切関係ありません。たとえば子どもができたら、人生の主人公は子どもになる。家族同様の犬を飼えば、主人公は犬になる。自分以上に相手を愛する気持ちが生まれると熟女になると考えます。僕の中では自撮りに夢中なうちは、自分が主人公だから熟女じゃない。

  

湯山 しみけんさんのその言葉からは、寛容性というものが見えてきますね。実はAVの中にも、タイトルとは裏腹に、そういう表現ができる女優さんがいて、その「人間性」に欲情する男性も少なくないと思います。

日本の性文化も、もっと女性が開放的になったほうがいい。自分の個別の性的「プラグ」を堂々と表すべきだし、それにひるまない男性が相性の良いパートナー。そういう人と一緒になることが理想です。正直、「恥」を欲情のトリガーにする文化はセクハラの温床でしかないし、軽蔑を快感に変えるマゾヒズム的な欲望回路は、長い目で見ると、自分の尊厳を傷つけていくと思うんですよ。

しみけん それでいうと、女性俳優が本性むきだしになるようなAVが増えれば、状況は大きく変わるかもしれませんね。

「受ける側」を経験して、初めて女性の気持ちがわかった

しみけん ちょっと気になったのですが、AVに出演している俳優はたくさんいますよね。今回なぜ僕を対談相手に選んでくれたんですか?

湯山 私が最初にしみけんさんを拝見したのは、AV監督の二村ヒトシさんとの対談本「日本人はもうセックスしなくなるのかもしれない」(幻冬舎)を作るにあたって勉強のために借りた作品です。その中でしみけんさんは風間ゆみさんに責められていて、快感で頰がフワーッと赤くなっているセクシーな表情に感動しました。この人、素敵だなと。それで一度お話を聞いてみたかったんです。

  

しみけん なるほど。若いころは仕事が選べないので、来るもの拒まずで、自分が「受け」になる仕事もそれなりに経験しました。ただ、風間ゆみさんのように技術があればいいけど、たいていの場合、自分の体を雑に扱われるわけですよ。でも、気持ちよくない……というかむしろ痛いのに、自分はあえぎ声に近いものを漏らしていました。なぜかというと、突かれた衝撃で声が出てしまうんです。

そのとき「女性は気持ちよくなくても声が出る」とわかって、それ以来セックスへの意識が変わりました。女性からわかりやすいあえぎ声ではない言葉が出始めたときこそ、相手が本当に感じていると。普段オラオラ言っている男性には、「一度自分のやっていることを味わってみろ! めちゃくちゃ優しくなるぞ!」と言いたいですね。

湯山 男性は自分が受ける側に回ることがほぼないから、女性の気持ちをなかなか想像できないんですよ。そもそもの話、女性と違って男性は、自分の体が性的対象として見られるという自覚があまりないでしょう? それも社会のあり方に大きく影響していると思うんですよね。

しみけん 湯山さんはどういう男性に性的魅力を感じますか?

湯山 三白眼の流し目、というヤツは好きかもね(笑)。自分がでっかい猫目だから、逆のものにひかれる。しかし、現実的には雰囲気ですかね。スペックじゃないんだよなぁ。

しみけん ああ、確かに。僕、職業柄、性の悩み相談をよく受けるんです。モテない男性から「何て言えば女性をベッドに誘えますか」って。でも言葉じゃなくて、やはり雰囲気なんですよね。ただ、その雰囲気をどうすれば出せるか、答えはまだわからない。

湯山 「ヤリたい!」という心の炎をデカくすることじゃないかな? これ男女ともに。

しみけん ワハハハハハ!(爆笑)。

  

湯山 本当に「あなたがほしい」と他人を求める欲望、その炎を燃やせる力を持っているかどうか。しみけんさんに相談しに来る人も含めて、火が付いていないのに付いた気になっている人が少なくないんだと思いますよ。

しみけん それ、すごくわかります。SNSとかで周りの目を気にして、炎を燃やすことが「恥ずかしい」と思ったりね。心の発火装置が枯れ気味なのは、スティーブ・ジョブズのせいでもあるのかなと思います。性のありがたさがスマホで薄れてしまった。昔は変装して自転車こいで、隣町のレンタルビデオ屋に行かなければならなかった。それも純粋な性欲の発火の一つ。そういう自分を突き動かす強い欲望がないと人とは交われないと思います。

湯山 しみけんさんが男としてカッコいいと感じる人も、そういう欲望を素直に行動に移せる人?

しみけん それもありますし、カッコつけない人はやっぱり素敵だと思います。他人の目ばかり気にして自分らしく生きていない人が多すぎる。カッコつけている人ほどカッコ悪い。湯山さん、小沼敏雄さんって知ってます? 僕はこの方、超カッコいいと思っているのですが。

湯山 ごめん、知らない。

しみけん ですよね。すごい人なのに、一般の方にはほとんど知られていない。日本ボディビル選手権で13連覇した偉人です。世界チャンピオンにもなっています。(その後しみけんさんは10分間小沼氏の魅力を語る)……と、めちゃくちゃすごい人なのに、ひとつのことをもくもくとやっていて、最近まで風呂なし家賃3万円だったらしくケータイも持っていない。さらにやりとりはFAX。とにかく欲がなく、全ての興味が筋肉なんです。そのブレない貫き方がカッコいい。

湯山 結局、それも自分自身の内面にわき起こり続ける願望に忠実であるということだよね。そこから人を引きつける魅力が生まれてくると。それが恋愛にも肉体関係にもつながっているわけですよ。いやあ、それにしても性を巡る話は想像以上に盛り上がりましたね。これ、下の話が多いからってお蔵入りとか許さないから(笑)。

しみけん ……いやあ、湯山さんとここまで熱のこもった対談になって、今セックスしたあとの感覚に近いですよ(笑)。

(構成・安楽由紀子 撮影・野呂美帆)

  

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PROFILE

湯山玲子(ゆやま・れいこ)

プロデューサー。現場主義をモットーに、クラブカルチャー、映画、音楽、食、ファッション等、文化全般を独特の筆致で横断する執筆を展開。NHK『ごごナマ』、MXテレビ『ばらいろダンディー』レギュラー、TBS『情報7daysニュースキャスター』などにコメンテーターとしても出演。著作に『女ひとり寿司』(幻冬舍文庫) 、『クラブカルチャー ! 』(毎日新聞社)、『女装する女』(新潮新書) 、『四十路越え ! 』(角川文庫)、上野千鶴子との対談集『快楽上等 ! 3.11以降を生きる』(幻冬舎) 、『文化系女子という生き方』(大和書房)、『男をこじらせる前に』(角川文庫)等。月一回のペースで、爆音でクラシックを聴くイベント「爆クラ」を開催中。日本大学藝術学部文藝学科非常勤講師。

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