インタビュー

芹澤優「テンプレート的な芝居しか考えていなかった」 デビューから数年続いた苦悩

  • 文・岩倉大輔 写真・花田龍之介
  • 2018年12月4日

  

若手声優は今、多かれ少なかれ“アイドル兼声優”としての活動が求められる。ステージで歌い踊って、ラジオやグラビア雑誌に出演するのが当たり前の状況だ。しかし、“アイドル兼声優”を自称する人はまずいない。そうした中、声優であることにもアイドルであることにもプライドを持ち、両立している声優がいる。芹澤優だ。

アイドルユニットとしてのデビューに「ショックを受けた」

『プリパラ』シリーズ・南みれぃ役、『キラッとプリ☆チャン』赤城あんな役などで活躍する芹澤は、2012年、大手レコード会社エイベックスと現所属事務所である81プロデュースが主催する「アニソン・ヴォーカルオーディション」に合格。6人組のユニット「i☆Ris(アイリス)」のメンバーとしてデビューしたのち、2013年に声優デビューを果たす。2017年からはソロアーティスト活動もスタートし、着実に活躍の場を広げている。

彼女は声優を志した時点で、本業にとどまらない仕事をすることを意識していた。

「中学生のとき、『涼宮ハルヒの激奏』というライブDVDを見て、平野綾さんのパフォーマンスに衝撃を受けたんです。当時は『灼眼のシャナ』や『ゼロの使い魔』といったアニメが好きでしたが、まさか声優さんがこんなに歌って踊るとは思っていなくて。気付けば、“声優の仕事ってすごい、なんでもできる、私がやりたいのはこれだ!”って思うようになっていました。人によっては“声優がライブで歌うなんて”と考える方もいますけど、私にとっては最初から声優は歌って踊る存在でしたし、それも含めて声優になりたかったんです」

  

高校在学中から声優の専門学校に通い、2012年、オーディションに合格。同年、i☆Risとしてデビューするが……それは思い描いていた形ではなかった。

「声優ユニットは“声優として活動する人が集まったユニット”というイメージですが、i☆Risは“ユニットのために集められた6人”。つまりアイドルなんです。もちろん今は、メンバー全員が声優もやっているアイドルというところに強みを感じますし、それがi☆Risらしさだと自信を持って言えます。でも、最初はアニソンを歌うにしてもソロが希望だったので、ユニットということにショックを受けましたし、そもそもアイドルにはそんなに興味がありませんでした。勝手なイメージですが、声優のほうが手に職がついてずっと続けられる印象があって、声優デビューの前にアイドルデビューをするってどうなんだろうって疑問もありました」

違和感を覚えながらも将来は声優として活躍できることを夢見て、芹澤は必死にユニット活動を続けた。そのうち彼女の中で意識が変化していく。

「でも、やってみると1年ぐらいで、アイドル活動って私に向いている!って思うようになったんです。お客さんに“良かったよ““かわいかった”って言われたり、(自身のイメージカラーである)水色のケミカルライトが多いと、“うれしい、もっと頑張りたい!”って乗せられたりして。気付けば、思ったよりもずっと楽しいぞって思うようになっていました。それもこれも、お客さんの熱量のおかげですね。その熱さに救われましたし、今ではi☆Risをやっていて本当によかったなって思います」

  

朗読劇への出演で気付いた自分の「弱点」

i☆Risとしての活動は順風満帆だ。2012年のデビューから2018年11月現在までに16枚のシングルとカバーアルバム含む4枚のアルバムをリリース。結成4年目となる2016年には初の日本武道館ライブを成功させた。その一方で、彼女の声優としての活動は苦悩の連続だった。

「最初の数年は、“つらい!”って感じでしたね。つらいといっても“仕事が大変”とか“やりたくない”という意味ではありません。どうすればもっとお芝居がうまくなるのか、私には何が足りないのか。それがまったくわからない状況がつらくて。私と同世代の女性声優には、大橋彩香ちゃんや日高里菜ちゃん、1つ年下ですが水瀬いのりちゃんのような実力派声優が多くいます。なんで私はみんなのようにできないんだろうって悔しい思いはあるのに、解決策がわからない。じゃあ改めてレッスンに通おうかと思っても、それで本当にうまくなるのかもわからない。ここ1、2年前ぐらいまでそんな状況でした」

大きな転機となったのは、2017年に出演した朗読劇『私の頭の中の消しゴム 9th letter』だ。2010年から定期的に上演されている本作には、声優だけではなく俳優や歌手など、ベテラン、新人問わず様々な役者が出演した。

「ホン(台本)を読むという状況は声優のアフレコと同じですが、朗読劇は客席に向けて朗読するだけであらゆることを表現しないといけません。その感覚が声優のお芝居にも結びついたのが大きな転機になりました。アニメの台本を読んでいても、ひとつのせりふからイメージできることがどんどん増えていったんです」

  

「それまではキャラクターの見た目から浮かぶテンプレート的なお芝居しか考えていなかったんだなって反省しました。かわいければ高めの声、見た目が幼ければ声も幼く。でも今は、その子が“なぜそう言ったか”“なぜそんな行動をするのか”“どんな状況で誰に向けて話しているのか”を以前にも増して考えるようになって、演じるキャラクターだけではなく広い視野で作品を見られるようになりました。気付けば台本がぐちゃぐちゃになるぐらい思いついたことを書き込んでいたりして、自分でも驚くくらい今ではお芝居に夢中です」

この意識の変化は、自身の仕事ぶりを見つめ直すことにもつながった。

「私のまわりにはお芝居が大好きな子がいます。仲良しの黒沢ともよ、同じi☆Risの茜屋日海夏。特にともよの伸びやかで繊細なお芝居は、まさに私の理想像。彼女は子役出身なので、私とはお芝居に向き合ってきた時間が天と地ほどの差がありますが、お芝居に対する思いでも大きな差があった。彼女と一緒にすごすうちにそのことを思い知らされて、それからはお芝居をもっともっと愛そうと思うようになりました」

2018年は、『魔法少女サイト』『3D彼女 リアルガール』『異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術』など、様々な作品で主要キャラクターを好演。2019年も大きな活躍が期待されている。一方、2017年からは念願のソロアーティスト活動を開始した。声優として、アーティストとして、芹澤はアニメ業界、声優業界の熱狂をどのように感じているのだろうか。

(後編はこちら)

  

芹澤優(せりざわ・ゆう)

誕生日:1994年12月3日
代表作:『プリパラ』シリーズ・南みれぃ役、『キラッとプリ☆チャン』赤城あんな役、『異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術』シェラ・L・グリーンウッド役、『3D彼女 リアルガール』五十嵐色葉など。

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