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わたしたちはもっと、「スマートな怠惰」に憧れるべきだ

  • 文・りょかち
  • 2018年12月6日

私は2~3カ月に一回、家事代行サービスで掃除を依頼している。

小さなワンルームなので2時間6000〜7000円くらいでお願いできるのだが、これがすごくいい。部屋が入居してすぐのときのようにすっかりキレイになるのだ。私はいつも、お風呂やキッチンなどの水回りを中心に依頼しているが、自分ではできない(できたとして一日がかりのタスクになる)丁寧でがっつりした掃除をしてくれるので、満足度が高い。

その数時間、私は、買い物をしたり、カフェでぼーっと読書したりして過ごす。数カ月に一度のこの時間は、私にとって「少し贅沢(ぜいたく)をして手に入れる充電時間」だ。いつもとちょっと違う時間軸にいることを楽しんで、元気になって帰ってくると、キレイになった家が待っているというのは、日常の中で大事にしている幸せな瞬間である。

誰もが憧れる、「イケてる毎日」の運用は難しい

充実した「イケてる毎日」を目指すと、生活はとても忙しくなる。

刺激的な人とおしゃべりしたり、往年の名作映画を鑑賞したり、自分への投資としてインプットしたり。自分だけのアウトプットを模索することにも時間を使う。

私の周りには仕事が好きな人たちが多く、朝早くから夜遅くまで働き、曜日に関係なく動いている。特別なイベントはなくても、好きなことに没頭しているうちに気がつけば日は暮れている。それくらい日常がドラマチックなのだ。

しかし、忙しくても掃除や料理などしなければいけない家事はあるし、お子さんがいるなら子育てする時間も必要になる。そして、私は女性として可愛く生きるための努力も怠りたくはない。

キラキラ輝く毎日を送っている人も、その裏側では、目まぐるしい努力をしている。イケてる人たちは、慌ただしく時間に追われながら、細切れの空いた時間で、家事やプライベートのやりくりをしているのだ。

強い味方は「テクノロジー」と新しいサービス

しかし、現代人には心強い味方になる存在がある。それは「テクノロジー」だ。先述の家事代行をはじめとするWebで申し込みできる新しいサービスや、ルンバなどの進化した家電が我々の自立や強さの一部分を支えている。

必要な食材がすべて適切な量で準備された料理キットを送ってくれる「Oisixのミールキット」や、ベビーシッターのマッチングサービス「キッズライン」といった日常を支えるサービスも日々増えている。

家電でも、遠隔で操作できる洗濯機や、揚げ物を簡単に作れるフライヤーなど、“パワーカップル(共働きで高収入のカップル)”を対象に、ライフハックを意識した商品が次々と販売されている。コンビニなどで売られる食品も「安くておいしい」に加えて「すぐ作れる」または「片付けがラク」といった付加価値があるものが増えた。料理が趣味でないのなら、「自炊」という行為のメリットは減っていくばかりだ。

“あなたがやらなくてもいいこと”、そして、”あなたがやるよりも、もっと効率的にできるひとがいること”を何かしらのサービスに頼れる時代がものすごい勢いでやってきている。ビジネスですでに行われているように、日常生活でも、苦手なことや好きではないことをやることは”非効率”であり、できる限りアウトソースしていくことが賢い選択となるはずだ。

■”スマートな怠惰”を支援する、という提案

ただ、日本人は「楽をしている人」があまり好きではない、とよく言われる。実際に見かける例として、遊んでいるように暮らしている人がいると、「胡散(うさん)臭い」と批判され、時にはSNSなどのツールを使って複数人でタコ殴りにされることさえある。

その一方で、「コツコツ頑張って手に入れた成功」だとか、「苦労の末にたどり着いたシアワセ」が大好物のようだ。なるほど、世の中で評価されている成功者物語を思い出すと、「こんなに頑張って今の姿がある」という感動で締めくくられたラストシーンが多い気がする。

もちろん、頑張っている人を褒めることは良いことだ。

けれど。

2018年にもなって、「頑張らない努力」を評価するところまで視野が広がらないのは、いささかダサいのではなかろうか。多くの人が頑張りたくなるインセンティブを発明できる人は偉いけれども、「みんなをラクさせる仕組み」を発明する人も同じぐらいとっても偉大なのだから。

我々はもっと「スマートな怠惰」を模索し、尊敬すべきなのではないかと思う。なぜなら、その先には万人が「苦手なこと」から解放されるミライが待っているからだ。

テクノロジーに甘えて、好きなことをやる時間を手に入れよう

冒頭で記載した家事代行サービスを教えてくれたのは、起業家女子の友人だった。彼女は私にそのサービスを紹介しながら話した。

「忙しい合間にできた2時間があるなら、自分の苦手な掃除にあてるよりも大好きな恋人との時間にあてるほうがよくない?」

この言葉は、忙しい人にも、そうでない人にも響くのではないだろうか。どんな2時間も、苦手なことや嫌いなことにあてるより、自分の好きなことや得意なことに使った方が良いはずだ。

いつの日も、人生でいちばん大事なことはきっと、「楽しく過ごすこと」だ。そのために、わたしたちはもっと、「スマートな怠惰」を愛し、思いきりテクノロジーに甘えていくべきだと思う。


筆者プロフィール

りょかち

りょかち

1992年生まれ。京都府出身。神戸大学卒。学生時代より、ライターとして各種ウェブメディアで執筆。「自撮ラー」を名乗り、話題になる。新卒で某IT企業に入社し、アプリやWEBサービスの企画開発に従事。現在では、若者やインターネット文化について幅広く執筆するほか、若年層に向けた企業のマーケティング支援も行う。著書に『インカメ越しのネット世界』(幻冬舎)。
Twitterは@ryokachii

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