インタビュー

芹澤優「“求められる立場”になるのは大変」 人気若手声優が見た業界の現状

  • 文・岩倉大輔 写真・花田龍之介
  • 2018年12月6日

  

声優、アイドルグループ「i☆Ris(アイリス)」、歌手など、マルチな活動を展開する芹澤優。このインタビューでは、これまでのキャリアを振り返りながら、業界の現状や声優という仕事のあり方について芹澤優に語ってもらう。

前編では、2012年のデビュー以来、彼女が心のうちに抱えていた苦悩に迫った。後編では、海外における日本のアニメ、声優に対する熱狂を、現役の人気声優としてどう見ているのかを聞いた。

海外にも広がる声優人気

2017年4月、芹澤優は1stミニアルバム『YOU & YOU』で念願のソロアーティストデビューを果たし、2018年11月までにミニアルバム2枚とシングル1枚をリリース。オーディション合格時からソロデビューを望んでいた中、5年越しの夢がかなったことになる。

「ここまでこられたのは、『君の夢を応援したい』って言ってくれる人がどんどん増えていったことが大きかったと思います。私が夢を語ると、スタッフは『じゃあ、それに乗ろう』って言ってくださって、ファンも『応援するよ』と背中を押してくれました。これだけ多くの人を巻き込むと、自分も引くに引けなくなりますし、弱音を吐いている場合じゃないという気持ちになる。この仕事の何よりのだいご味って、いろんな方との出会いによって自分が突き動かされることだと思います」

  

2017年には初の海外ソロイベント「Yu Serizawa Taipei Fan Meeting」を成功させ、2018年にはアメリカ・ロサンゼルスにて開始された「Anisong World Matsuri at Anime Expo 2018 -Japan Kawaii Live-」にi☆Risとして出演。海外での声優人気をひしひしと感じたという。

「2018年はi☆Ris結成6年目にして、初めてロサンゼルスに行きました。i☆Risはけっしてワールドワイドに活動しているわけではないんですが、現地の方が私たちを知ってくださっていて、しかもわざわざ私たちの“コール本(ライブの振り付けや合いの手が書かれた本。有志がボランティアで制作することが多い)”をつくって配布してくださっていました。私の自己紹介にもコール&レスポンスがあるんですが、それもばっちり決まっていたんです。すごい熱量でした!」

声優はキャラクターに命を宿す人

今年で10周年を迎えた東南アジア地域での「Anime Festival Asia」や北米最大のアニメ・コンベンション「Anime Expo」など、今や日本だけではなく海外でも当たり前のようにアニメイベント、アニソンイベントが開催されている。今や声優ファンは日本人だけではなくなっている。

「アジア、ヨーロッパ、アメリカ各地のイベントに声優が引っ張りだこです。私自身、海外のイベントに参加させていただいて、外国の方の熱い気持ちを受け止め、キャラクターに命を吹き込む者の一人としてとても誇らしい気持ちになりました。やっぱりみんなアニメが好きで、日本のアニメが世界一なんだなって感じます」

日本と世界の両方でアニメ、声優人気を肌で感じた芹澤に、なぜここまで声優が人を引きつけるのか尋ねてみた。

「声優ってお芝居はもちろん、ラジオでのトークも面白いし、歌もダンスもうまい方がたくさんいるし、もうマルチであることが当たり前。こんなにマルチに活躍できる職業ってそうそうないと思いますし、本当の意味で“芸”ができる人がそろっています。それが人気の大きなポイントだと思いますが、やっぱり注目される一番の理由は“アニメを通して存在している”からだと思います」

「アニメ作品のトークイベントに立たせていただくと、お客さんはキャラクターというフィルターを通して私を見てくださっていると感じることがあります。i☆Risとしての活動は生身の自分とお客さんが向き合い、パフォーマンスを楽しんでいただいていますが、アニメのイベントは極端な話、私のことを知らなくても楽しめます。たとえば、アニメのせりふをひとつ言えば、それだけで盛り上がることがあります。私を初めて見る人でも、キャラクターの存在を感じて楽しんでくださり、キャラクターに命を宿す人として尊んでくださっている。それはアイドルとはまた違った面白さがあります」

  

マルチな活動に憧れユニット活動からスタートした芹澤だが、今の声優人気はあくまでもアニメ文化の上に成り立っていると強く実感している。ファンが評価するのも、キャラクターの魅力を引き出す演技力。だからこそ今は、アニメに限らず芝居というものに必死で向き合っている最中だ。

「いろんな方から刺激を受けて、私ももっともっとお芝居を頑張らないといけないと実感しました。今は半端に見られたくないという気持ちが強いですね。やっぱり、オーディションに落ちると悔しい。アニメ業界はどの作品もオーディションがあって、実力があればあるほどたくさんの作品に出演できます。

たとえば実写のドラマや映画はひとつの作品における拘束時間が長いので、同じ時期に何本も出演することはできないと思います。でも、アニメの収録はだいたい朝と夕方の2回。そのあとゲームやドラマCDの収録を入れたりして、本気を出せば週に10本ぐらい出演できます。だから、求められる方は週に何作品も出演して、ひとりが受け持つ量が多くなり、他の声優とどんどん差が開いていく。声優を名乗るだけなら難しくないのかもしれませんが、“求められる声優”になるのはすごく大変ですし、そういう方はそれだけの実力と価値がある人といえます」

では、“求められる声優”というのは具体的にどんな存在なのだろうか?

「そこはたぶん、業界全体としてもわからなくなっていると思います。もちろん、第一は演技力ですが、それはあとから付いてくるという考えもありますし、歌やダンスをやらなければいけないということもあります。たぶん、作品や関わる人たちによっていろいろ希望があるので、たとえば、もしこれから声優を目指すという人であれば、何かひとつ“これだ!”という武器があると強いんじゃないかなと思います

その上で、『自分とは何か』『どんな声優になりたいか』を考えることが大事ですね。いろんなものを求められる中、自分が何をすべきかは自己判断ということが多い。事務所やレコード会社が『こうしてほしい』というよりも、自分のプロモーションは自分が考えるというのが基本なので、私も自分を突き詰めることを大切にしています」

彼女はどんな声優になりたいのか、最後にぶつけてみた。

「ひとつ武器を持ったほうがいいと言いつつ、私の武器って“マルチさ”なんです。声優もやって、アイドルもやる。どちらも半端じゃなくて、どちらも本気。それをしっかり実現できる声優になりたいです。この5年、歌もお芝居も自分がしたいことを突き詰めて頑張ってきました。変わらず突き進んでいくというのが、ファンの方が望んでいることでもありますし、それはファンの方との約束でもあります。“頂点を目指す”とスタッフの方にもファンの方にも言い続けてきたので、それはこれからも大事にしていきたいです。声優としてもっともっといろんな作品に出演して、ソロアーティストとして絶対に武道館に立つ。どちらも全力でぶつかっていきたいです!」

  

芹澤優(せりざわ・ゆう)

誕生日:1994年12月3日
代表作:『プリパラ』シリーズ・南みれぃ役、『キラッとプリ☆チャン』赤城あんな役、『異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術』シェラ・L・グリーンウッド役、『3D彼女 リアルガール』五十嵐色葉など。

<<前編はこちら>>

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