小川フミオのモーターカー

カナダの生まれの三輪 「カンナム・ライカ―」試乗記

  • 文 小川フミオ
  • 2018年12月6日

全長2352ミリ、全幅1509ミリ、全高1062ミリと比較的余裕あるサイズ

カナダ生まれの三輪「カンナム・ライカー」にロサンゼルスで試乗した。四輪(クルマ)ではなんとなくおもしろくなくて、二輪はちょっとコワイかな、という人にぴったりの乗りものだ。

ロータックス製900cc3気筒「ACE」エンジンは57.5kW@7100rpmの最高出力と76Nm@6300rpmの最大トルクでシャフトを介して後輪を駆動

作っているのは、BRP(ボンバルディア・レクリエーショナル・プロダクツ)社である。もとはカナダ・ケベック州のボンバルディア社で、三菱航空機「MRJ」開発をめぐる訴訟で有名になってしまったが(2018年10月時点)、ケベックに本拠地を置く、航空機や鉄道などを手がけるコングロマリットだ。

戦前に、早くもスノーモービルを実用化したことをはじめ、数々の趣味的な乗りものを手がけて市場を開拓してきたのも注目点だ。

BRPは2003年にボンバルディアから独立し、趣味の乗りものを手がけている。現在は「Ski Doo」というスノーモービル、「Sea Doo」という水上バイク、それに「Can-Am(カナダ=アメリカ)」というトライクのシリーズを展開して世界的にも人気が高い。

日本でも2018年10月に発表された「ライカー」は、同社がトライクの裾野を広げるべく開発した普及版だ。基本的には従来の「Can-Am」シリーズと同様のY字形をしたフレームを持った三輪車である。

ホイールベースは1709ミリで乗り心地に貢献

ブレーキペダル、フットペグ、ハンドルバーは前後にスライドできる

「ニッチ(すきま)というより新しい乗りものになる可能性を持つもの」。メーカーである開発担当者がそう話すとおり、たしかにおもしろかった。

フロント2輪、リア1輪。600ccあるいは900ccのエンジンを搭載して後輪を駆動する。一文字のハンドルバーに右手でグリップをひねるスロットルを装備。さらに燃料タンクをひざではさむようにして走る。そのことから、二輪車の変形とみる向きもあるが、メーカーでは直接的な関連を否定する。

たしかに、実際の仕様は二輪車と違う。曲がるときはリーン(からだを傾けること)しない。あくまでもハンドルバーの操作のみだ。ブレーキも右足のペダルで前後に同時に作動する。リバースギアは右足で操作する。走り出したら降車するまで足を地面につけることはないのだ。

2人乗り用のオプション装着例

私はロータックス製900cc3気筒エンジン搭載モデルで、ロサンゼルスの海岸線、山岳路、それに市街地を走った。初めて乗るものだったので(クルマとも勝手が違うし)、おっかなびっくりだったが、すぐに慣れた。

トルクがたっぷりあって、けっこうな急勾配の上り坂でも息切れするような場面はない。カーブを曲がるときも、しっかりハンドルバーを操作すれば不安定になることはなく、すいすい気持ちよく乗りこなせてしまう。

フロントサスペンション形式はダブルウィッシュボーンでザックス製のコイル/ダンパーユニットが組み込んである

後輪用のサスペンションは硬めだが、段差はフロント左右のどちらかで乗り越えるようにして走れば、快適性も意外なほど高い。車重は乾燥重量で280キロだから加速性もいいし、巡航速度は時速60マイルでなんの問題もない。

フリーウェーではかなり目立つらしく、周囲の車両のなかから手を振ってくれた。さかんに話しかけられたのは、サンタモニカの山側にあるバイカーの“聖地”といわれる「ロックストア」でだった。

サンタモニカにある「ロックストア」はギアヘッド(バイク好き)が集まる場所

ホッグ(ハーリー・デイビッドスン)にまたがるオールドバイカーたちが集まってきて「これどう?」と代わる代わる聞いてくるのだ。最後はパトロールカーまでやってきた。

オッサンもいいが、ライカーのターゲットは若者と女性だという。たしかにボディーパーツには未塗装の合成樹脂が多く使われている。リサイクルのためだ。そう聞くと、時代にちゃんと乗っているように思える。

もうひとつ、ライカーの武器は価格である。「600」のベーシックプライスは8499ドルからと設定されている。ただしこれは“素”の値段なので、最低限必要なものをつけていくだけでも価格は多少上がる。

日本では BRPジャパンにより2019年3月の発売が予定されているそうで、価格は100万円台ということだ。600、900、それにサスペンションのストローク量が少し変わり、コンピューターのプログラムも変更されるラリーエディションの3モデルが予定されている。

[PR]

この記事を気に入ったら
「いいね!」しよう

PROFILE

小川フミオ(おがわ・ふみお)

写真

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

今、あなたにオススメ

Pickup!

Columns