いしわたり淳治のWORD HUNT

ドリカム新曲 作詞家が驚く斬新な愛情表現

  • いしわたり淳治のWORD HUNT〈vol.14〉
  • 2018年12月21日

  

音楽バラエティー番組『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)で披露するロジカルな歌詞解説が話題の作詞家いしわたり淳治。この連載では、いしわたりが歌詞、本、テレビ番組、映画、広告コピーなどから気になるフレーズを毎月ピックアップし、論評していく。今月は次の五本。

 1 “もらい泣き もらい笑い もらい怒り もらいっ恥じ どんと来い!”
(DREAMS COME TRUE『あなたとトゥラッタッタ♪』(作詞:吉田美和))

 2 “ビジネスだけなんですよ”(庄司智春)

 3 “ミートテック”(2018年ギャル流行語大賞第8位)

 4 “「ナメてんのか、てめえ」ってセリフを言う人ってだいたいナメられてるよ” (有吉弘行)

 5 “おにごっこ”

最後に日々の雑感をつづったコラムも。そちらもぜひ楽しんでいただきたい。

いしわたり淳治 今気になる五つのフレーズ

  

NHK連続テレビ小説「まんぷく」主題歌、DREAMS COME TRUE「あなたとトゥラッタッタ♪」。いわゆる言葉遊びというか、既存の言葉をもじって新しい造語を作るというのは、作詞ではときどき行われる手法だと思う。この曲もそうで、まず「もらい泣き」という言葉があって、その次に「もらい笑い」と来る。うんうん、と思う。次に「もらい怒り」と来てもまだ、そうだね、わかるわかる、となる。

問題は、その次である。「もらいっ恥じ」。これがすごい。この書き方でいくと、「もらい」という言葉のあとには感情を表す言葉が必要なのだけど、人の感情は主に喜怒哀楽の四つなので、いざ書いていくと、喜=笑い、怒=怒り、哀=泣き、というところで、はたと行き詰まってしまう。“楽”はともすれば“喜=笑い”と一緒になってしまいそうだし、だからといって“喜”と“楽”はどう違うかをちゃんと説明しようとすると、一言では到底おさまりそうにない。

“楽”を表すのは非常に難しいのである。そこへ「もらいっ恥じ」と来たから驚いた。もちろん、「楽=もらいっ恥」という意図で書いたのではないかもしれない。でも、この曲における「もらいっ恥じ」という言葉は、なんだか楽しそうに感じるから不思議だ。これまでに「恥をかくのもあなたとなら楽しい」という愛のメッセージが記されたラブソングはあっただろうか。私は聞いたことがない。

  

「いい夫婦 パートナー・オブ・ザ・イヤー2018」を受賞した庄司智春・藤本美貴夫妻。受賞の記者会見で「お互いのことは何て呼んでいるんですか?」と聞かれたとき、「私はトモちゃんですね」「僕はミキちゃんです」と答え、「ミキティとは呼ばないんですか?」と驚いている記者に「あれは本当に、ビジネスだけなんですよ」と言った。

笑ってしまった。そして、なんだか格好いいなあと思った。仕事でテレビカメラの前で裸になって、奥さんの“ニックネーム”を、叫ぶ。そして、家では服を着て、奥さんのことを、世の中の人々とは違う呼び名で呼ぶ。“仕事を家庭に持ち込まない”の、ものすごく新しいかたちだなあと思った。

  

2018ユーキャン新語・流行語大賞が「そだねー」に決まった。正直、だいぶ前の流行という感じもして、その他の並びを見ても全体的に少し弱いというか、あらためて今年は流行語が少ない1年だったのだなと感じた。それとは別に毎年発表されているのがギャル流行語大賞で、こちらの方は結構面白かった。

個人的には8位の「ミートテック」が気になった。実際にこの言葉を使っている人には出会ったことはないけれど、「ミートテック着てるから寒くない」「ダイエットしてミートテック脱がなきゃ!」みたいな自虐的な使い方をするらしい。

でも、これを言われた後のリアクションって、かなりむずかしい気がする。ギャルならノリで「うけるぅ〜!」くらいの一言でいいのかもしれないが、普通に大人が会話の中で使うと結構危険な予感がする。

「寒くない?」「あ、いや、私ミートテック着てるから大丈夫」「え、あ、ああ……。あはは……」みたいに、ものすごい気まずい空気になりそうな予感がする。おじさんにダジャレを言われたあとのような、特に返す言葉もなく、ゆっくり苦笑いだけがフェードアウトしていく感じ、というか。若者言葉をやたらと使いたがる大人も多いので、もしかしたらあなたの周りの誰かがこの言葉を使ってくるかもしれません。もらい事故にご注意を。

  

11月21日放送のバラエティ番組『マツコ&有吉 かりそめ天国」(テレビ朝日系)でのこと。「顔がへらへらしている」という理由で、人からよく怒られるという投稿者の悩みについて話していたとき、有吉さんが「でもさ、“なめてんのか、てめえ”ってセリフを言う人って大体なめられてるよ」と言った。うわっ。名言だなあと思った。

思えば「なめてんのか」と言う側は、それなりに心当たりというか、なめられてる実感がなければ、とっさにこんなセリフは出てこないわけで、つまりこれは“言ったら負け”な一言なのだなと改めて思った。

浮気をしている人ほど「おれのこと疑ってんの? 信じてないわけ?」みたいなセリフを言うのも同じことなんだろうと思う。普段からなんとなく疑われている実感があって、びくびくしているから、何かの拍子にうっかり自分の口からこぼれてしまうのだろう。そんなことをわざわざ相手に聞いて、もしも相手に「うん、疑ってる」と言われたら苦しいのは自分の方なのに。

そう考えると、どんなことがあっても相手に“自分のことをどう思っているか”は聞いてはいけないのかもしれない。「おれのこと嫌い?」「私って面倒臭い?」「おれたちってこのままでいいのかな?」どれも未来がない感じというか、“それを言っちゃあ、おしまいよ”的な空気をはらんでいる気がする。

自分のことは自分がいちばんわかっているものだ。わかっているくせに、しらじらしく他人に聞くのは、自分の首を絞めるだけなんだからやめておいたほうがいい、ということなのだろう。

  

我が家の息子たちが、いよいよ仮面ライダーごっこを始める年齢になった。夜ごと怪人役をやらされ、段ボールで作ってあげた変身ベルトをつけた小さな仮面ライダーに、エンドレスでぼこぼこにやられる。

「パパ、今度は怪獣やって」と言われ、ひとしきり戦った後、「うぁあ……」とやられると、「パパ、今度は鬼やって」と言われた。怪人よりも怪獣、怪獣よりも鬼は強いという認識のようである。戦いながら、「でも鬼をやる……ということは、これはもはや、仮面ライダーごっこというよりも『おにごっこ』ではないのだろうか」と、ふと思った。

考えてみると、お医者さんのまねをするから「お医者さんごっこ」、お買い物のまねをするから「お買い物ごっこ」なわけで、なぜ追いかけっこするのがいわゆる「おにごっこ」なのだろう。この文脈で行けば、本当の「おにごっこ」というのは鬼の生態を事細かにまねするのが正解なのではないかしら、みたいなことを内心で思いながら、仮面ライダーから必死に逃げ、ベッドの上でつかまり、ぼこぼこにやられ、死んでいく、ひとりの名もなき鬼の一生を演じ終えた。

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PROFILE

いしわたり淳治(イシワタリ・ジュンジ)

1997年、ロックバンドSUPERCARのメンバーとしてデビュー。全曲の作詞とギターを担当。2005年のバンド解散後は、作詞家としてSuperfly、SMAP、関ジャニ∞、布袋寅泰、今井美樹、JUJU、少女時代、私立恵比寿中学などに歌詞を提供するほか、チャットモンチー、9mm Parabellum Bullet、flumpool、ねごと、NICO Touches the Walls、GLIM SPANKYなどをプロデュース。現在オンエア中のコカ・コーラCM曲「世界はあなたに笑いかけている」(Little Glee Monster)や、情報番組『スッキリ』(日本テレビ系)のエンディングテーマ曲「Electric Kiss」(EXO)の作詞も担当するなど、さまざまな音楽ジャンルを横断しながら通算600曲以上の楽曲を手掛ける。

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