小川フミオのモーターカー

嫌みのない清潔感があるスタイルが惜しまれる 日産ブルーバード(910型)

  • 世界の名車<第241回>
  • 2018年12月25日

1980年に登場した「1800SSSターボ」

この原稿を書いている時点(2018年12月)で、カルロス・ゴーン前会長らの逮捕など困難に直面している日産自動車だが、ここでは日産(車)にエールを送る意味もこめて、この名車をとりあげたい。

1979年に発表された6代目「ブルーバード」、「910型」である。トランクの高さを低くすることで上下幅を薄くみせているのが特徴だった。嫌みのないクリーンさとも表現できるスタイリングと、ターボモデルの設定で人気が高かった。

1979年の2ドアハードトップ「2000SSS-EX Gタイプ」

この910型はブルーバードとしては最後の後輪駆動モデルである。操縦安定性に寄与するトレッド(左右の車輪の中心間距離)の拡大をはじめ、ステアリング形式のアップデートや、通気式ディスクブレーキの採用など、日産自動車の開発陣としてはやれることをやった、というべき内容だった。

モデルチェンジにあたって、従来の810型まで存在した直列6気筒搭載モデルはなくなり、全車4気筒となった。エンジン排気量は1.6リッター、1.8リッター、それに2リッターが用意され、1980年にはターボチャージャーを装着した「SSS(スリーエス)ターボ」も追加された。

1982年に追加された4ドアハードトップ「1800SSS-E」

1979年のセダン「1800SSS-E」のクリーンなリアビュー

2リッターガソリンエンジン搭載モデルが110馬力だったのに対して、1.8リッターの「SSSターボ」は135馬力と高出力を売りものにしたのである。いっぽうボディーもセダンと2ドアハードトップ、それに4ドアハードトップと、選択の幅が広かった。

スタイリッシュだったのはルーフの前後長が短いキャビンをもつ2ドアハードトップである。いっぽう4ドアハードトップは、ローレルやセドリック/グロリアに連なる“旦那車(ダンナグルマ)”路線を思わせて私個人的には好きになれなかった。ブルーバードの本質はスポーティーセダンだと思っていたからだ。

1979年のセダン「1800SSS-E」のダッシュボード

910型はやたらバリエーションに富んでいて、ディーゼルエンジンのラインナップも豊富だったし、ワゴン(「ADワゴン」とよばれた)の設定もあった。ちなみに2リッターのターボディーゼルモデルは当時、そう速いとは思えなかった。商用など幅広い需要に対応しなければいけない車種だったのだ。

グッドルッキングで走りも良かったが、発売から4年後の1983年には「U11型」という7代目の後継車にバトンタッチすることになる。こちらは前輪駆動のシャシーを持つモデルで、日産自動車として、80年代からラインナップの見直しと、シャシーの効率化を図った結果だろう。

ただし、なぜ前輪駆動にしたのか(あるいは後輪駆動か)とか、モデルの布陣を見ていて、いまひとつはっきりしない部分もあった。製品づくりのポリシーが揺らぎ、言葉は悪いが行き当たりばったりだった感もある。

1979年のセダン「1800SSS-E」の欧州調の内装もいいかんじだった

2ドアハードトップ「2000SSS-EX Gタイプ」のリアビュー

U11は前輪駆動化でシャシーはまったく新しくなったのにスタイリングは910型のイメージをひきずっていた。販売側からの要請に耳を傾けすぎて、モデルチェンジにおいて明確なポリシーを打ち出せなかったのだろうか。

ほかのメーカーでも同様の傾向は見られるが、日産ではなぜか顕著である。かりにBMWがブルーバードを作っていたらこんなモデルチェンジをしただろうか。910型に好感をもっていた私はこのクルマのことを思うとき、いつもこう自問してしまう。

写真=日産自動車提供

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PROFILE

小川フミオ(おがわ・ふみお)

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クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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