小川フミオのモーターカー

ひときわ印象に残る凝りに凝ったラリーカー 三菱ランサーエボリューションⅣ

  • 世界の名車<第242回>
  • 2019年1月7日

ランエボⅣ(写真はGSR)は280馬力の2リッターエンジンにフルタイム4WDが組み合わせられている

こういうクルマがあるからおもしろい。残念ながら三菱自動車にとってはほぼ“過去形”になってしまった国際的なモータースポーツ活動から生まれた「ランサー・エボリューション」だ。

1992年に初代が発表されて以来、2007年発売の「X(テン)」に至るまで、いわゆるランエボは大きく4世代に分けられる。ベースになった「ランサー」の世代による分け方で、Xをのぞけば1世代3モデルとなる。

全長は4330mm、全幅は1690mm、全高は1415mmとコンパクト

歴代の中でもひときわ印象に残っているのが96年のランエボⅣだ。当時ほぼ1年ごとにアップデートが行われていたランエボは、世界ラリー選手権出場車と並行して、絶えずスポーツ性を高めていったのが特徴である。

ランエボⅣはベースになったランサーのフルモデルチェンジに合わせて開発されたモデルだ。ボディー剛性の向上をはじめ、アームを含めた専用のサスペンションシステム、ターボチャージャーやピストンやシリンダーヘッドまで徹底的に手をいれたエンジンと、凝りに凝ったチューニングだった。

GSRのリアには左右輪の駆動力をコントロールしてニュートラルな旋回性能を実現する電子制御の「AYC」が備わった

モモのステアリングホイールにレカロのシートがRSの標準装備

エボリューションとはそもそも、ラリー車のベースになる市販車があり、それをラリー用に改良したモデルを指す(ややこしい)。つまり最初は“市販車→ラリー車”と開発されるのだが、そのうち“ラリー車→市販車”と開発の流れは逆になる。

そこでランサーも、三菱が世界ラリー選手権に挑戦しつづけているあいだは、エボリューションモデルがその名のとおり“進化”していたのだ。

ランエボⅣにはロードゴーイングモデル(一般道むけ車両)の「GSR」と、ラリーに出たいひと向けの「RS」が存在した。前者には後輪の駆動力を電子制御して旋回性能を高める「AYC(アクティブヨーコントロール)」という、ラリー車からフィードバックした技術も搭載されたのが目新しかった。

RSに備えられたレカロのスポーツシートが特徴的だ

GSRのフロントシートもレカロ製だがサポートの張り出しは少なく実用性重視

私の目からすると、スタイリングこそ妙にまじめで、欧州車にかなわなかったが、内容は見事だった。例えるなら、一流のアスリートが似合わないスーツを着ている印象だったのだ。

ランエボⅣと関連づけられたラリーマシンは、1997年の世界ラリー選手権で4勝し、ドライバーのトミ・マキネンは前年に引き続きドライバーズ選手権を獲得したのである(98年と99年も同選手権は三菱のものになった)。

GSRにはエアバッグ内蔵タイプのモモのステアリングホイールが装着されていた

ラリーカーとしてレースに出場させるのに必要な「ホモロゲーション(認定)」のために作られていたのも、ランエボシリーズの特徴だ。規定を満たす12カ月で2500台を生産したら終わりという希少価値が、ランエボを神格化したともいえる。誰でも買えるクルマではなかったのだ。

(写真=三菱自動車提供)

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PROFILE

小川フミオ(おがわ・ふみお)

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クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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