今日からランナー

マラソン五輪代表に新選考制度導入、予選シリーズに豪華メンバーずらり/2019年のマラソン界の行方

  • 文・山口一臣
  • 2019年1月1日

  

&Mでは新年企画として連載陣による「2019年の展望」をテーマにしたコラムをお届けします。初心者ランナー向けの連載「今日からランナー」の筆者山口一臣さんから届いたのは、20年東京オリンピックのマラソン代表選手の選考について。今年は3つの枠をめぐってトップ選手同士の争いが白熱しそうです。

レジェンド瀬古利彦さん就任で制度一新

新しい年が明けた。正月三が日はランナーというかマラソンファンにとって至福の時間だ。元日の「ニューイヤー駅伝」に始まり、翌2〜3日にかけての「箱根駅伝」と、この3日間はどっぷりテレビ観戦にひたれるからだ。ニューイヤー駅伝は正式には「全日本実業団対抗駅伝競走大会」という。箱根駅伝は「東京箱根間往復大学駅伝競走」だ。箱根で活躍した選手が卒業して実業団に散らばっていく。学生時代のチームメイトがニューイヤーではライバルとしてしのぎを削る。そして、そのうちの何人かが42.195kmのマラソンに挑戦することになる。

2019年はマラソン界にとってどんな年かというと、ズバリ、オリンピック代表選手の選考イヤーだ。マラソンファンには周知のことだが、20年の東京オリンピックに向けてマラソン代表選手の選考方法が一新された。改革を主導したのは16年に日本陸上競技連盟マラソン強化戦略プロジェクトリーダーに就任したレジェンド瀬古利彦さんだ。

マラソンの五輪代表は男女ともに3枠ある。これまでは一発勝負の選考レースによって選ばれていた。ところが、代表枠が3つしかないのに選考レースが4つあった。そのため、誰を五輪代表にするかで物議をかもすことが少なくなかった。何より最終決定まで時間がかかった。これでは選手のモチベーションもさがり、本番に向けての練習を考えるととてもアスリートファーストとはいえなかった。そこで瀬古さんは考えた……。

結果、20年東京オリンピックの代表は新たに設けられる選考レース、マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)の成績で決めることにしたのである(MGC公式サイトはこちら)。

このMGCに出場するには日本陸連が指定する大会(MGCシリーズ)で、設定された順位やタイムをクリアしなければならない。MGCシリーズとは男子は北海道マラソン、福岡国際マラソン、別府大分毎日マラソン、東京マラソン、びわ湖毎日マラソン、女子は北海道マラソン、さいたま国際マラソン、大阪国際女子マラソン、名古屋ウィメンズマラソンだ。ほかに、国際陸上競技連盟が指定した設定タイムをクリアした選手もワイルドカード枠としてMGCに出場できる(制度の詳しい解説はこちら)。

要するに、MGCシリーズで結果を残した選手のみを集めて、もう一度選考レース(MGC)をやろうという話である。それが今年9月15日に開催される。コースは東京オリンピックのマラソンコースとほぼ同じ。ただ、国立競技場が未完成なのでスタート&ゴールが神宮外苑のイチョウ並木になるという。いずれにせよ、誰が代表になってもおかしくない日本の精鋭たちがオリンピックのマラソンコースを走るという夢のようなレースが開催され、少なくともそこで男女それぞれ2人の代表が決定する。想像しただけでワクワクしてくるではないか。

18年12月末時点で、男子は大迫傑(ナイキ・オレゴンプロジェクト)、設楽悠太(Honda)、井上大仁(MHPS)、服部勇馬(トヨタ自動車)、川内優輝(埼玉県庁)の各選手ら21人が、女子は安藤友香(スズキ浜松AC)、松田瑞生(ダイハツ)、関根花観(日本郵政グループ)の各選手ら8人がファイナリストとしてMGC出場権を獲得している(ファイナリストの詳細はこちら)。

すでに豪華メンバーがズラリと名を連ねているが、出場権獲得を争うレース(MGCシリーズ)が今年もまだ残っている。ラストチャンスということもあり、ここでの闘いも見ものである。

(男子)
・別府大分毎日マラソン 2月3日
・東京マラソン 3月3日
・びわ湖毎日マラソン 3月10日

(女子)
・大阪国際女子マラソン 1月27日
・名古屋ウィメンズマラソン 3月10日

3月の東京マラソンでは大迫vs.設楽

(左・大迫傑選手=2018年10月10日/撮影・堀川貴弘、右・設楽悠太選手=2018年12月2日/撮影・河合真人)

嬉しいのはもちろんファンだけではない。瀬古さんの思惑は見事に当たり、新選考制度導入が選手のモチベーションアップにもつながった。とくに男子の快進撃はめざましい。

口火を切ったのは大迫選手だ。17年の福岡国際マラソンで3位(日本人1位)に入り2時間07分19秒の記録を叩き出し、いち早くMGC出場権を獲得した。それを見た同学年の設楽選手が奮起し、18年東京マラソンで2時間6分11秒と16年ぶりに日本記録を更新する(2位、日本人1位)。この日本記録はさらに同年シカゴマラソンで大迫選手によって塗り替えられる(3位)。日本人未踏だった2時間05分台(50秒)の快挙である。ちなみに、今年3月の東京マラソンではこの2人の直接対決が見られ、日本記録の再々更新もあり得る。楽しみだぁ〜!

こうした2人のライバル争いが刺激になったのか、昨年の男子マラソン界は嬉しいニュースがあいついだ。まずは、川内選手のボストンマラソン(4月)での優勝だ。日本人の優勝は実に31年前の瀬古さん以来のこと。8月のジャカルタアジア競技大会ではこれまた日本人として32年ぶりに井上選手が金メダルに輝いた。そして12月の福岡国際マラソンで服部選手が同14年ぶりの優勝を果たす。つまり日本勢が記録(タイム)でも勝負(順位)でも世界レベルに成長しつつあるということだ。20年東京オリンピックに向けて期待は膨らむ一方だ。

さて、今年9月のMGCレースでオリンピック代表の2枠が決まると書いたが、残り1枠はどうなるのかというと、MGCの後に行われる男女それぞれ3つの大会(男子=福岡国際、東京、びわ湖毎日/女子=さいたま国際、大阪国際、名古屋ウィメンズ)で他を圧倒する好タイムを出した選手が選ばれる。これを「MGCファイナルチャレンジ」という。要は、MGC出場資格を持っていながら当日不本意な成績だった選手がここで復活できる可能性を残しているのだ。ただし、選考基準タイムをクリアする選手が出なかった場合は9月のMGCで3位だった選手が選ばれる。

そんなわけで、ランナーやマラソンファンにとって2019年は正月明け以降も気を抜けない、至福の時間がず〜っと続くことになるわけだ。

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PROFILE

山口一臣(やまぐち・かずおみ)

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1961年東京生まれ。ゴルフダイジェスト社を経て89年に朝日新聞社入社。週刊誌歴3誌27年。2005年11月から11年3月まで『週刊朝日』編集長。この間、テレビやラジオのコメンテーターなども務める。16年11月30日に朝日新聞社を退社。株式会社POWER NEWSを設立し、代表取締役。2010年のJALホノルルマラソン以来、フルマラソン20回完走! 自己ベストは3時間41分19秒(ネット)。

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