マッキー牧元 うまいはエロい

<69>マッキー牧元が総括! 2018年話題の飲食店と19年以降のトレンド

  • 文・写真 マッキー牧元
  • 2019年1月8日

  

&Mでは新年企画として、連載陣による「2019年の展望」をテーマにしたコラムをお届けします。グルメ連載「うまいはエロい」の筆者マッキー牧元さんから届いたのは、18年話題の飲食店の総括、そして19年以降の食をめぐるトレンドについてのコラムです。

手頃な割烹、若手職人のすし屋……日本料理をめぐるトレンド

2018年も多くの新しい店が話題となった。それぞれジャンル別にピックアップしつつ、それ以外のトレンドも含めて総括したい。

日本料理では、新しくできる割烹(かっぽう)が軒並み3万円近い客単価で成功を収めているのとは裏腹に、“割烹未満居酒屋以上”の比較的リーズナブルな店も広がりを見せた。

例えば京都の三つ星料亭出身の料理人が営む青山「てのしま」や、荒木町「多仁本」、白金「あき山」などは、全て1万円ほどで料理を出す。他では荒木町「たつや」、恵比寿「深夜食堂はなれ」がそれぞれ7500円、7000円でコースを提供するなど、昨今の高騰ブームとは一線を画した店が増えている。いずれも高級食材は少ないものの、真っ当な日本料理がいただける店。こうした動きが日本料理への間口が広がるきっかけになって欲しいと思う。

中でも「てのしま」は、やりすぎない個性を盛り込んだセンスの良さと、酒のそろえの良さで、最もオススメしたい店である。

「てのしま」:金目鯛、石鯛、スズキの盛り合わせ

和食の中で目立った動きとしてはすし屋だろう。すし屋は一昨年ごろから若手すし職人による開店ラッシュとなっている。一部スポンサーが後ろ盾となって、若い職人の活躍する場が増えたせいである。

「鮨さいとう」出身の中目黒「鮨つぼみ」のほか、渋谷「花おか」、銀座「はっこく」、半蔵門「みずかみ」、吉祥寺「さき田」、銀座「鮨 杉澤」、銀座「銀座鮨 み富」、神楽坂「鮓家一」、恵比寿「匠 鮨 おわな」、渋谷「熟成鮨 万」、銀座の三つ星すし店「よしたけ」が手がけた西麻布「鮨きのした」など、一昨年、昨年と出店ラッシュであった。

オススメは、六本木「すきやばし次郎」出身で、江戸前の仕事に貫かれた「みずかみ」と、極めて質の高い魚を廉価で出す「さき田」である。

「みずかみ」:アジ

「さき田」:マグロ赤身

中華、イタリアン、フレンチでの注目の動向

中国料理も面白い。18年最も話題になったのは2軒。台南、雲南省、湖南省という3つの地域の料理を展開するマニアック中華の、荒木町「南三」。そして発酵と辛さが特徴の湖南省料理に特化した、三軒茶屋「香辣里」だろう。これらも一昨年あたりから広がる辺境地区料理のトレンドであり、その流れはこれからも進んでいくと思われる。

「南三」:韮菜醤烤羊肉(羊肩肉オーブン焼き)

「香辣里」:塩漬け発酵させた魚を唐辛子とともに蒸し煮にした料理「香辣魚」

一方点心系も人気の兆しを見せている。連日行列が絶えない、日比谷に開店した「添好運」、ロンドンにある店をイメージした高級点心料理店、二重橋前「YAUMAY」など、今までにはない点心の店ができている。

「添好運」:黒酢雲呑 (ワンタン)

「YAUMAY」:海老蒸し餃子

洋食に移り、イタリアンは恐らく30数店舗はできただろう。その中で注目は3店。100席の客席を持つオープンキッチンスタイルのレストラン、ベテラン山田宏巳シェフの、青山「テストキッチンH」、江戸川橋の住宅街で革新的かつ創造性高い料理を出す「チョコ」、20州の伝統郷土料理を2カ月がわりで出す、四谷「オステリア・デッロ・スクード」である。3軒ともまったく性格が違うが、今まで日本にはなかったイタリア料理店という点では共通しており、これらも東京のイタリア料理シーンが成熟した結実であろう。

「テストキッチンH」:伊勢海老の軽い煮込み

「オステリア・デッロ・スクード」:アルバニア由来のパスタ“シュトゥリーデリャ”仔山羊のラグー チヴィタ風

さらにフランス料理も30店舗以上の新規開店があった。中でも注目は、卓越した魚料理を何品も出す、代官山「サンプリシテ」と、元レカンの高良康之シェフが出した銀座「ラフィナージュ」であろう。いずれもベテランならではの深い知見があり、フランス料理を食べ込んできた客にも、経験が浅い客にも刺さる料理を出して、すでに人気となっている。

「サンプリシテ」:ボタンエビ、ボタンエビ頭のコンソメ、ダークチェリー、バラの花

「ラフィナージュ」:ジビーフのロースト

グルテンフリーの影響!? 「タコス」がブーム

こうした料理以外のトレンドとしては、「タコス」が挙げられる。2018年は多くのタコス料理屋ができた年だった。中でも日本の食材を組み合わせてコースで出す、三軒茶屋「ロス・タコス・アスーレス」は衝撃であり、他にも中目黒「タコファナティコ」、吉祥寺「タコスショップ」、恵比寿「KIYAS」、北カリフォルニアから銀座に進出した「クロニックタコス」と、なぜかタコスがはやってきている。グルテンフリーなどの影響かもしれない。

発酵系料理としては、目黒「Kabi」の新しいフランス料理、そしてコペンハーゲンの「ノマ」が出店した、飯田橋「イヌア」など、今後も自家製発酵調味料や発酵食材を使った料理店は増えていくと思われる。

「Kabi」:スズキのヴァプール・キャビア

「イヌア」:味噌(みそ)とバナナのクリスプパイ

商業施設では、ミッドタウン日比谷、渋谷ストリーム、六本木ヒルズ飲食街リニューアル、二重橋スクエア、日本橋高島屋SC本館などに新たな飲食店が入って話題となっている。

2019年以降、社会貢献を意識した飲食店が増える?

こうした流れを経て19年はどうなっていくのだろうか? クラウドファンディングの飲食店が急増しているが、その流れは加速するだろう。昨年、赤坂「Sanmi」は3672万円という最高額を集めた。これを見て他も追随するに違いない。また今後は単においしいということだけではなく、飲食店に行くことが社会貢献にもつながるような形のレストランも増えていくと思われる。

例えば海外ではもはや珍しくないフードロス、サスティナブル、フェアトレードなどをコンセプトの中心に据えたレストランも出てくるだろうし、これも海外では始まっている、ホームレスや母子貧困家庭向きのレストランや、出所後の社会復帰を手伝うレストランなどが広がっていく可能性もある。ロンドンにあるようなサスティナブルシーフードを使った回転寿司ができたら素晴らしい。

また、食事ではヴィーガン(完全菜食主義)やグルテンフリーなどの要望が強まり、そうした食事生活とは関係ない人でも行きたくなる、ハイセンスな店ができるはずである。

一方ボタニカルジンがはやりつつある中で、自家製蒸留酒の流れも強まるだろう。日本の香草や茶などを使ったジンが、多く生まれていく気配がある。

さらに、ファッションブランドや映画館、携帯会社や車販売会社などが経営する新形態の店も増えていく可能性もある。AIがメニューを考えてロボットがサービスするレストランができる日も近いかもしれない。日本のレストランは、もっともっと面白くなる。

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PROFILE

マッキー牧元(まっきー・まきもと)タベアルキスト&味の手帖編集顧問

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1955年東京生まれ。立教大学卒。年間幅広く、全国および世界中で600食近くを食べ歩き、数多くの雑誌、ウェブに連載、テレビ、ラジオに出演。日々食の向こう側にいる職人と生産者を見据える。著書に『東京・食のお作法』(文藝春秋)『間違いだらけの鍋奉行』(講談社)。市民講座も多数。鍋奉行協会顧問でもある。

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