密買東京~遭遇する楽しみ

誰もが見過ごす風景を描く 熊本充子さんのマニアックな器

  • 2019年1月10日

電柱と電線が大きく描かれた、熊本充子さんの器

電柱、鉄塔、ガスメーター、瞬間湯沸かし器……。

今回ご紹介する熊本充子さんの作品に描かれているのは、いつもの生活のすぐ傍らにあるモノたち。でも普段は見逃してしまうようなモノ、身近にあるけれど意識からあえて遠ざけようとしているようなモノたちです。

その表情は、一見すると無愛想。申し訳なさそうに、こっそり端っこにいたりして……。でもだからこそ気になるその存在、その表情、その武骨さ。無表情だからかっこいいし、逆に愛嬌(あいきょう)のある顔にも見えてくる、気になってしまう。そんなモノたちです。

無機質で殺風景にも見える日常の風景が、味わいのある線で描かれることで、フェティッシュな魅力を放ちます

そんな気になるモノたちのある風景を、器に描く熊本さんの作品は、まるで昔懐かしい製図用のペンで描いた設計図のよう。

時にシャープに、時に揺らめき、よろめき、にじみながら、いとしいモノたちのある風景を紡いでゆくこの感じ。それは個人的にすごく心地良く、思わず熊本さんの作品に一目ぼれ、しかもかなり熱くほれ込んでしまいました。

今回ご紹介するのはチーズボード。縁の木の部分を、木工作家の遠藤マサヒロさんが手がけています

マニアックな風景を切り取り、描いている熊本さんは、とても繊細な女性で、しかも建築に縁もゆかりもないらしい。そのことが本当に驚きでした。

最初に僕らのサイト「密買東京」で作品を紹介した十数年前。熊本さん自身の中で、このシリーズの位置づけを模索していました。

実用品とも言い切れないし、かといって絵画のように独立した作品という位置づけともちょっと違う。そんなあいまいさの中で揺らぐ作品。そこが僕らの目にはとても新鮮で、心地良く感じたのですが……。

だからこのシリーズは他の作品と分けて、実際に買う人と直接会って気に入ってくれたときだけ売ることにしていました。

どこか頼りなげに揺らめく線に引き込まれてしまいます

磁器の上に描かれた、か細い線。それは頼りなさそうに揺れ、にじみながら、風景を描き出していきます。その頼りない感じに目と心を奪われてしまう。目はついつい線の一本一本を追い、器の上をなぞってしまいます。

昔懐かしい設計図のようなその質感。図面ってなんだかフェティッシュな魅力があります。

そしてこの作品の魅力として、器であることが重要だと思うのです。

今回ご紹介するのは、チーズをサーブするためのチーズボードですが、他にも平皿や小皿など、さまざまな器に描かれる熊本さんの作品。

実用品とは言い切れないかもしれないけれど、暮らしを彩る風景が額縁ではなくて、お皿という見慣れたもので切り取られているのが、とても心地良い。うまく言葉で表せないけれど、なんとも言えない愛着のようなものが湧いてきます。

(文・写真 千葉敬介)

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