私の一枚

門脇麦が振り返るデビュー直後 「演技は固まった心のリハビリでした」

  • 2019年1月15日

撮影したのは事務所のスタッフ。「だからこそナチュラルに撮れていると思います」

2011年の6月頃、今の所属事務所に入って最初に撮ってもらった写真です。なんでしょうね、この「あか抜けてない感」は(笑)。でも、今はもう絶対に出来ない表情だと思います。

当時はまだドラマを1クール経験しただけで、ほぼ演技をしたことがありませんでした。子供の頃からバレエをやっていて、バレエも演技も表現という点で通じるものがあるだろう、だから何とかなるだろうって思っていて。一方で、ちゃんと仕事にしていけるんだろうかと不安になったり、オーディションに落ちるたびに「もうだめかもしれない」と思ったり。

仕事が入り始めてからも「次の仕事がなかったらどうしよう」という不安はいつもありましたし、力量のない自分に対する怒りもありました。気持ちの回路が一本ではなく、たくさん枝分かれしていて、それがいろんなところで絡み合ってぶつかって、うまく収拾できずにもがいていた時期でした。

演技のワークショップが感情を動かすリハビリに

高校生の頃、家庭のことやいろんなことで我慢しなくちゃいけないことが多くて、心の筋肉がうまく動かなくなっていました。そんな時期にこの仕事を始めたんです。当時から映画が大好きだったので、映画の仕事だったら、日常の中で心がうまく動かない自分を変えられるかもしれない、という思いがありました。

例えば、映画を観て悲しくなったり苦しくなったり、感情が揺さぶられることってあるじゃないですか。それって、登場人物が抱えている感情を自分の感情と照らし合わせて一緒に動かすからだと思うのですが、その頃の私は、映画を観ることでしか自分の感情を揺さぶることができなかった。

でも、いざ実際に演じてみると、自分の中から何にも出てこなくて。映画を観ている時にはものすごく感情が動くのに、いざ自分がセリフを読んでも全然動かない。「どうしよう、仕事間違えた」って最初は思いました(笑)。

ちょうどその頃、事務所の社長が新人を集めて簡単なワークショップのような時間を設けてくれていました。社長はよく「映画はフィクションだから言ってみれば作り物だけれど、その中で演じる人間の感情は常にリアルなものでなければならない」と言っていて、それは今も自分の根底にある大事な教えになっています。ある日、ワークショップである台本を読んだ時に、別に泣くようなシーンじゃなかったのに、自分の固く閉ざしていた思い出と台本がマッチして、涙が止まらなくなったことがありました。きっと、ワークショップを重ねることで、知らず知らずのうちに自分の心のリハビリになっていたんだと思います。

でも、実際には今でも毎回がリハビリ活動ですよ。例えば、今回主演した映画『チワワちゃん』では仲間同士で騒ぐシーンが多いですけど、私はプライベートで騒いだような経験がありませんでした。やったことがない人間からすると、恥ずかしさがありましたけど、そういう自分を演技でさらけ出すことも、ある意味リハビリなんじゃないかなと思うんです。

主役・ミキを演じた映画『チワワちゃん』は1月18日より新宿バルト9ほかにて全国公開(公式サイトhttps://chiwawa-movie.jp/

初めて「監督と一緒に作っている」と思えた『チワワちゃん』

『チワワちゃん』ではミキ役の私が主役ですけど、ストーリーの中で一番輝いていなくちゃいけないのはチワワちゃんです。だから、チワワちゃん役の吉田志織ちゃんが気後れせず、遠慮なく輝いていられるように、ということを一番心がけていました。メインのキャストの中では私が最年長でしたから、「みんなを引っ張っていかなきゃ」という気持ちを持ちつつ、それで私が前に出過ぎたら志織ちゃんが出づらくなるかなとか、そんなことにも気をつけたりして。でも、実際には、みんなが撮影で疲れてクタクタになっている時でも志織ちゃんだけは役柄そのままに元気でキラキラしてたので、心配する必要はなかったんですけどね。

監督が同世代だったということも、私にとってはすごく大きかったです。今までは、おこがましくて監督と一緒に作品を作っている感覚にはなれなかったし、深入りしたいけど自分が出る幕じゃないかもしれないとか、そんな気持ちが先行してしまって、「監督にお任せします」という感じで作品に関わることが多かった。でも、今回は初めて「監督と一緒に作ってると思ってもいいのかもしれない」という気持ちになれました。

こんなにファッショナブルでポップな作品に出ることは今までなかったので、自分がちゃんとなじめるのか、浮いてしまうのではないかと心配でしたけど、とても格好良い仕上がりになっていてほっとしました。華やかな画面にいる自分は想像がつかないくらいに縁遠く感じていたので新しい発見でした。

主演映画も次々に公開。若手実力派として活躍する門脇麦さん

自分がこれからどんなふうになっていくのか楽しみ

演じ手としての自分のスタイルは、今もよくわからないです。早くそういうものを見つけたいなという気もしますし、そういうものがある人はカッコいいなとも思うのですが、ひとつの型に自分を収めると幅が狭まってしまいそうな気持ちもあります。でも、ひとつやってみたいなと思っているのは、プラトニックな本格派のラブストーリー。若い人はもちろん、大人が見ても胸に響くようなラブストーリーは、一本真剣に向き合ってみたいと思っています。

デビューから7~8年が経って、この写真の頃のような余計な力みはなくなったかもしれないですね。たくさん枝分かれしていた気持ちの回路は“枝打ち”されて、少しはすっきりしたかなと思います。年を重ね、たくさんの作品に出ることで自分がこれだけ変化するなんて、この写真の時の私は想像もしていなかったですし、きっとこの先も想像がつかないことだらけですよね。「私これからどんなふうになっていくのかな」って、今は楽しみのほうが大きいです。

(聞き手 髙橋晃浩)

     ◇

かどわき・むぎ 1992年、東京都生まれ。2011年にテレビドラマで女優デビュー。2014年、映画『愛の渦』『闇金ウシジマくんPart2』にて第88回キネマ旬報ベスト・テン新人女優賞などを受賞。2018年の主演映画『止められるか、俺たちを』では第61回ブルーリボン賞主演女優賞にノミネート。その他、NHK大河ドラマ『八重の桜』(2013年)、NHK連続テレビ小説『まれ』、ミュージカル『わたしは真悟』など幅広い作品に出演し活躍中。今後は、小松菜奈とダブル主演の映画『さよならくちびる』の公開が控えている。

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