密買東京~遭遇する楽しみ

黒くなったり、透明になったり……ANREALAGEの色が変わる服

  • 2019年2月7日

パリコレで発表されたANREALAGEの2019 S/S「CLEAR」

ジャラリ、ジャラリ。歩みを進めるごとに音を立てる服。そこには1着あたり5,000以上にのぼるという樹脂のパーツが、全体を覆うように縫い付けられています。

2018年9月にパリコレで発表された、ANREALAGE(アンリアレイジ)の2019 S/Sコレクション「CLEAR」。

打楽器の音だけが流れる広い空間を淡々と歩く女性たち。演出的な要素が抑えられたショーには、儀式のような緊張感が漂っていました。

1着あたり5000以上にものぼるという樹脂のパーツが縫い付けられ、服を覆う様は、どこかSFの世界のような雰囲気

今回のコレクションを象徴する、無数のパーツが縫い付けられた服。

その手仕事を想像するだけで圧倒されますが、実はパーツの一つひとつも、特殊な技術によって授かった特性があります。

ショーの最初に登場した7人が着る、黒い服。よく見ると、それは時間とともに透けていきます。

この黒は「フォトクロミック分子」という物質が、紫外線に反応することで現れた色。服にはバックステージで紫外線が照射されていたのです。

そしてショーのラストにも最初の7人と同じ服が登場。すっかり透明に戻った姿は、まるで別の服のようです。

黒かったパーツは時間の経過とともに透明に変わります

このフォトクロミック技術は、ANREALAGEのコレクションでこれまで2度使われています。どちらも紫外線を受けて色が変わる現象を利用したものですが、透明にするのはかなり難易度が高かったようで、今回使われた素材はANREALAGEが三井化学と共同で新たに開発したものです。

その変色は、太陽光など紫外線を含む光に反応して起こりますが、直射光だけでなく、窓のそばに近づいただけでも黒く変わるほどの反応を見せます。

そしてもう一つ目を引いたのが、裾に向かって上から下に、徐々に生地が透けていく服。

こちらは時間による変化ではなく、特殊な加工で作られた生地で、まるで服が途中で霧散してしまうかのよう。

その形はトレンチコートやGジャン、ブルゾンなど、軍の服や作業着をルーツに持つものが選ばれていますが、下に向かって透けていくにつれ、形もドレスのように軽やかに広がります。

このように対極にある二つの要素をどちらも内包し、その間を移ろうような表現が印象的なコレクションです。

徐々に透けていくような特殊な加工で作られた生地の服

無数のパーツが縫い付けられた服を着て、淡々と歩く女性たち。その様子はまるでSFのように未来的で、どこか異世界の儀式のようにも見えます。

しかし同時に、その姿にはどこかの先住民族の衣装のような、プリミティブな力強さも感じるのです。

気の遠くなるような手業を積み重ねることでしか到達できない造形。染めやプリントといった技術を使わず、ただひたすら生地に素材を一つずつ止め付けていくことで生まれる模様。

実はそれが“透明なフォトクロミック”という、難しい材料を服に用いるための、数少ない方法の一つでもあるのですが、一方でそれはとてもANREALAGEらしい手法、ANREALAGEにしかできない服作りでもあります。

服の上できらめく、無数の樹脂のパーツ。ミニマルでありながら装飾的でもあるその姿には、未来的な美しさを感じます。

同時に、膨大な手仕事を想像させるその異形の装飾を目の当たりにすると、この世界とは異なる文化や物語があるような気さえして、まるで別世界の衣装を見ているような、SF的な感覚に包まれます。

それがこのショーに漂う、儀式のような雰囲気を醸し出していたのです。

同じ服が黒から透明になることで全く違う表情を見せます

そしてもう一つ、このコレクションには隠されたテーマがありました。

タイトルの「CLEAR」にはいくつかの意味が込められていますが、「晴らす」もその一つ。実は12年前に発表された2007 A/Wのコレクション「遥か晴る(はるかはる)」と呼応しています。

当時コレクションの音楽を手がけていた杉原一平さんの同名の曲を、そのままタイトルに掲げたコレクション。

自分がたどってきた道のりを振り返った時、過去にいた場所が晴れ晴れしくあってほしい、という思いが込められていました。

それをまさに体現するような、今回のコレクション。

実はかつての「遥か晴る」では、ボタンを2万個も縫い付けた服が発表されました。「神は細部に宿る」と信じ、神に祈りを捧げるように、膨大な手仕事によって作られた服です。

その後いくつかの転換点を経て、テクノロジーを味方につけた服作りへと到達したANREALAGE。

12年間にわたってつむがれたストーリーを込め、手仕事とテクノロジーをどちらも惜しみなく注いで表現されたのが、今回のコレクションなのです。

(文・千葉敬介 写真提供・ANREALAGE)

税込み48,600円から。「密買東京」は、ここでしか買えないモノ、入手方法が良くわからないモノなどお気に入りのモノを、密かに発見する楽しみを提供するオンラインショップです。「密買東京」の記事はこちら(※ここから先は「密買東京」のサイトです。商品を購入する際は「密買東京」の規約等を確認の上、ご自身の判断でご購入ください)

[PR]

密買東京

Copyright(c)密買東京 記事・画像の無断転用を禁じます

この記事を気に入ったら
「いいね!」しよう

今、あなたにオススメ

Pickup!

Columns