小川フミオのモーターカー

ボディーのエレガントさ重視した BMW・初代8シリーズ

  • 世界の名車<第247回>
  • 2019年2月12日

全長4780ミリ、全幅1865ミリと、1989年にしては余裕あるサイズだった

BMWが1989年に発表した2プラス2の大型クーペが初代・8シリーズだ。この時代ならではの二つのデザイン上の特徴を持つモデルである。ひとつは、いまは歩行者保護の観点から採用できない格納式ヘッドランプを備えていること。もうひとつはフロントグリルだ。

このクルマが発表された80年代後半、BMWのデザイナーたちは、BMW車のシンボルといえるキドニーグリルを廃止することを考えていた、と後で聞いた。そのためだろう、この8シリーズもかなり小さい。

キドニーグリルがもっとも小さかった時期

デザイン上のイメージソースともいえるレーシングスポーツモデル「M1」(78年)は、空力的な理由からキドニーグリルを極力小さくしていたが、86年の量産スポーツモデル「Z1」で小ぶりなキドニーグリルが採用され、続く8シリーズも同様だった。写真のように、全体との調和を最優先するかのような、小さなものである。

これらは、些細と言えば些細な特徴ではある。このクルマの最大の特徴は、オーストリア人デザイナーのクラウス・カティツァが手がけたエレガントな雰囲気を重視したボディーのスタイルにある。

格納式のヘッドランプを出したところも迫力がある

ノーズは低く見せトランクは高く、くさび形が強調されている

ウェッジシェイプ(くさび形)のボディーには、ブリスターといってタイヤまわりのパネル全体も含ませるデザイン手法が採用されている。つまり、ラインを極力少なくして、全体のシルエットで躍動感を表現していた。

ノーズは低く見えるのだが、そこにエンジンが収まっており、後輪を駆動させた。リアサスペンションは、現在は主流となったマルチリンクタイプが早々と採用されるなど、メカニズムも凝っていたのだ。

リアコンビネーションランプがやたら大きいのも特徴

エンジンは当初5リッターV12気筒が搭載され、続いて4リッターV8搭載モデルが追加された。V8は途中で新型に切り替わり、さらに排気量もアップしている。最終的にV8の排気量は4.4リッターまで拡大されたが、それでも小さなスポーツカーのような軽快な走行感覚を失うことはなかったのである。

エンジンのトルクの出方もいたってナチュラルで気持ちよく、さすがエンジンメーカーのBMWだけはあると納得させられる出来だった。欧州を縦横無尽に長距離旅行するのにもってこいのモデルだった。ただし99年に生産中止されたあとには大きな空白期間があって、第2世代の登場はなんと2018年である。

5リッター12気筒は当時としてはかなりパワフルな300馬力

私は5年ほど前、イタリアで8気筒搭載の840Ciに乗る機会があった。はたして乗り心地がよく、エンジンには力があり、ハンドリングもそれなりにスポーティーなこと感心した。走っていて楽しい。BMWは、たんに大型クーペが米国で売れるからという理由でなく、本気でこのクルマを開発したのだということがよくわかった。

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PROFILE

小川フミオ(おがわ・ふみお)

写真

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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