出石尚三 紳士服飾研究

「ディナー・ジャケットの研究」 国によって名称が異なる

  • 文 出石尚三
  • 2014年12月8日

写真:(イラストレーション 桑原節) (イラストレーション 桑原節)

 ディナー・ジャケットとは、タキシードのことです。アメリカではタキシード、英国ではディナー・ジャケットと呼ばれています。では、ヨーロッパの他の国々ではどうなのでしょうか。フランス、イタリア、ドイツなどをはじめとして多くの国では「スモーキング」ともいわれています。なぜスモーキングがタキシードの意味になるのでしょうか。

 これは19世紀、英国上流階級の習慣と関係があります。当時の英国では、夕食時に服を着替えました。それが燕尾(えんび)服だったのです。燕尾服には、白い麻素材の蝶(ちょう)ネクタイを結んだので「ホワイト・タイ」の表現があります。これに対してディナー・ジャケットには、黒い絹素材の蝶ネクタイを結ぶので「ブラック・タイ」となるわけです。英国紳士は夕食を終えると、ラウンジ・ルームに入って、男同士で歓談し、煙草(たばこ)を燻(くゆ)らせました。このラウンジ・ルームでは、一時的に上着だけを替え、出る時には再び燕尾服を着るのです。燕尾服から一時的に着用した上着。それは当初「ドレス・ラウンジ」と呼ばれていました。ドレス・ラウンジを着て煙草を楽しむので、その後「スモーキング」と。ただし、今の英国でスモーキングといえば、自宅で寛(くつろ)ぐ時のお洒落(しゃれ)着の意味になります。

 燕尾服からディナー・ジャケットで夕食をとるようになったのは、1930年代に入ってからのことといわれています。いずれにしてもディナー・ジャケットが文字通り「夕食服」であったことは間違いありません。

 アメリカでの「タキシード」は、1880年代、ニューヨーク州にあるタキシード・パークという由来の地名に因(ちな)んだものです。もちろん英国のディナー・ジャケットから生まれています。ディナー・ジャケットを着て食事をするかどうかはさておき、国によって名称が異なっていることは覚えておいて良いかもしれません。

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PROFILE

出石尚三(いづいし・しょうぞう)

1944年12月16日生まれ。香川県高松市出身。射手座のB型。よくペンネームかと訊かれるのですが、本名。身長177cm、体重75キロ。服飾評論家。ファッション・エッセイスト。国際服飾学会会員。主にメンズ・ファッションの記事を執筆。1960年代にファッション・デザイナー・小林秀夫の弟子となったのが、メンズ・ファッションの道に入った最初。つまり自分ではファッション・ライターになるつもりはまったくありませんでした。幼少期からおしゃれ好きで、結局この道を選んだということでしょう。趣味が仕事になったようなもので、今もってコレといった趣味がありません。強いて言えば散歩と古本屋巡りでしょうか。今、昔風の「古本屋」が減る傾向にあって淋しいことです。好きな作家はサマセット・モオム。好きな画家はロオトレック。好きな音楽家はショパン。好きな花は薔薇。好きな色はピンク。好きな言葉は「夢」「希望」「愛」。


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