お弁当を通して人と人とのつながりを見つめ直す展覧会「BENTO おべんとう展―食べる・集う・つながるデザイン」

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東京都美術館(東京・上野)で開催されている「BENTO おべんとう展―食べる・集う・つながるデザイン」は、お弁当を「コミュニケーションツール」のひとつとしてとらえた展覧会だ。

同美術館の学芸員、熊谷香寿美さんは「お弁当は古来、農耕社会のハレの場などにおいて、一緒に食事をすることを通じて共同体のつながりを深める道具としての役割を担ってきました。近代になってからは、家庭で日常的に作られるようになり、いまでは家族の一人ひとりを結びつけてくれています」と語る。

3章に分かれた展覧会場の第1章は「おべんとうのいろいろなかたち」。会場内には、発酵デザイナー・小倉ヒラクさんによるアニメーション「おべんとうDAYS」や、NHKの番組「サラメシ」で知られる写真家・阿部了さんが撮影した、働く人々のお弁当写真「ひるけ」など、各方面で活躍する作家の作品が並ぶ。

江戸時代から現代まで、それぞれの時代において使用されていた日本の弁当箱のほか、アジア、アフリカ、欧州など、世界各地の弁当箱も展示。

料理家・大塩あゆ美さんが参加した「あゆみ食堂のお弁当」プロジェクトは、朝日新聞デジタル&Wの連載から始まっている。全国から寄せられた「あの人にこんなお弁当を贈りたい」という投稿をもとに大塩さんがレシピを考案、出来上がったお弁当を写真家の平野太呂さんが写真に収めている。

第2章の「五感で体感!おべんとう」には、2人の美術家が手がけたインスタレーションが広がる。「食べることをデザイン」する、イーティング・デザイナーのマライエ・フォーゲルサングさんが制作したのは「intangible bento」。

木材で組まれた空間は何層にも重なる色とりどりのリボンで区切られており、そのリボンをかき分けて奥へ進むと、まるでお弁当箱の中に入った気分になれる。

美術家の北澤潤さんが手がけた「FRAGMENTS PASSAGE - おすそわけ横丁」は、お弁当を食べる際に何げなく行われている「おすそわけ」に着想を得た作品。来館者が互いに物を譲り合うことで、実際におすそわけという行為を体感することができる。

展示の締めくくりとなるのは、第3章「おべんとうから考えるコミュニケーション・デザイン」。映像作家の森内康博さんによる「Making of BENTO」は、中学生がグループになってお弁当づくりをする過程を記録したドキュメンタリー映像。お弁当箱を模したスクリーンに遊び心を感じる。

壁に並ぶ写真作品は、美術家・小山田徹さんの「お父ちゃん弁当」。小学生の姉が幼稚園の弟のためにお弁当のイメージイラストを描き、そのイラストをもとに父がこしらえる、という日常の記録だ。

「今回の展覧会にはお弁当という存在を再解釈し、表現した作品がたくさんあります。来場者のみなさんに『食べることにまつわる、コミュニケーションの複雑性や豊かさ』について考えていただく機会になればうれしいです」と笑顔を見せる熊谷さん。

手際よくおかずを作ってくれた母の姿や、学校の行事で親戚と食べたおいしいごはん。お弁当には、誰しも自分だけの思い出があるだろう。そこに共通しているのは「大切な人への思い」にほかならない。

作家がさまざまなアプローチで制作した展示作品の数々は、家族や友人との絆(きずな)の大切さを、あらためて私たちに教えてくれる。

(文・山田敦士)

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