人とペットの幸せな暮らし

伴侶動物を失い、悲しみを抱えた人々が集う「PLM」

  • 文 sippo編集部
  • 2014年2月13日
PLMの様子

写真:梶原さんと保護猫デクスター(1歳)(写真提供 梶原葉月さん)梶原さんと保護猫デクスター(1歳)(写真提供 梶原葉月さん)

写真:星になったゴマ(写真提供 梶原葉月さん)星になったゴマ(写真提供 梶原葉月さん)

写真:PLMは自らを“止まり木”として羽を休める場所にたとえる。「何度参加してもいいのです。自分が飛び立てると思ったら、悲しみと共に生きる力を持てたと思ったら、飛び立ってください」(イラストレーション ハラアツシ)PLMは自らを“止まり木”として羽を休める場所にたとえる。「何度参加してもいいのです。自分が飛び立てると思ったら、悲しみと共に生きる力を持てたと思ったら、飛び立ってください」(イラストレーション ハラアツシ)

写真:(イラストレーション ハラアツシ)(イラストレーション ハラアツシ)

ただ語る、耳を傾ける

 2013年9月のある週末の午後、東京・豊島区にある自由学園明日館の小教室には、30〜60代と見える女性と男性が、ぽつぽつと集まってきた。「ペット・ラヴァーズ・ミーティング(PLM)」。年4回、伴侶動物を失うなどの悲しみを抱えた人々が、その悲しみと向き合うための何らかの糸口を求めて、この場所にやってくる。今回の参加者は男性1名を含む、計13名。手元に愛犬愛猫の写真や思い出の品を携えた人もいる。

 PLMの冒頭で、代表の梶原葉月さんから進行方法と注意事項が説明された。名前はニックネームでよいこと、他者への非難や比較は行わないことなどだ。また、PLM後に悲しみが大きくなることもあるが、それはごく自然な変化であることも添えられた。

 「犬が誤飲したと勘違いして手術を頼み、死なせてしまった。罪悪感から死んでしまいたいと思う時と元気な時が交互にやってきます」

 「10年前に愛猫をなくして寝込んでしまいました。今、17歳の猫がいますが、再びペットロスになるかもと不安です」

 「『周囲から、いつまでも悲しんでいてはダメ』と言われ、何も言えなくなってしまった。前回ここに来て、悲しんでいいんだと思えました」

 「学生の時、不用意に猫を迎えて、ケージに入れっ放しにし、手を上げたこともありました。なのに、20年も自分のそばにいてくれた。20年も生きて、人は私のことをいい人というけれど、決してそうではない。私はこの子には謝り続けないといけないんです」

 「死別した直後より、今のほうが辛(つら)い。4カ月の治療期間が思い出され、自分ができることをやりきったと思えない」

 「猫をなくしたあと、獣医師にお世話になったお礼を言うつもりで訪ねたけれど、出てきてくれなかった。それ以来、不安と不信感が出てきて」

 堰(せき)を切ったように話す人、涙をこらえながら話す人、訥々(とつとつ)と思いをかみしめるように話す人。会の間、基本、進行役は口を挟まない。個々人の話のあと、自由な話し合いをしばらく続けて、最後に梶原さんは「静かに1〜2分、考える時間を持ちましょう」とPLMを締めくくった。

家族会が設立のきっかけ

 PLMは何か目標を立てて活動する会ではない。うつ病や引きこもり、摂食障害などを抱えた人や、家族や他者とのコミュニケーションで困難がある人は、PLMではなく、精神科や心療内科など専門家の助けが必要だ。

 それでもPLMでは「ここに来て、悲しんでいるのは自分だけではないこと、心から自分の話を聞いてくれる人がいることを実感できた」「『〜しなければ』と考えなくていい、いい子ぶらなくていいんだと思えた」という声が聞かれる。一方で、「ペットロスという言葉は社会に知られるようになったけれど、その理解はまだ不十分」という声も。

 PLMは1999年12月に誕生、2001年から年4回開催している。参加者はネット検索や友人の紹介でPLMを知って訪れる。参加費等はないが、会場代を賄うため500円程度の寄付を募る。

 また、03年から毎週土曜日13〜16時に電話相談も実施。この「ペットロスホットライン」では、かける側も相談員も匿名で傾聴のみを行うが、内容はスタッフで共有し、次のPLMや電話相談に生かしている。

 梶原さんは99年に猫のゴマ(当時6歳)をリンパ腫でなくした。治療中は抗がん剤の点滴を受けさせるため、現在、日本獣医生命科学大学付属動物医療センターとなった医療施設に毎週通院。待合室で他の患者の家族と話すことで、さまざまな患者と症例に触れ、自分の状況を客観的に整理できたという。「ゴマだけが特殊で、ひどい状況なのではない。1歳でもがんになる子がいる……」。通院が心の支えとなり、出会った人たちとの患者家族会がPLMのきっかけとなった。

 00年5月と9月、市民会館を借りて開催した会には、九州から来た人もいた。この時梶原さんは、ペットロスの支え合いは本当に必要な活動だと実感したという。時と共に中心メンバーは替わり、参加者の属性も多様化した。こうした中、スタッフは自らのやり方がよいのかと自問するようにもなり、大学で専門講習を受講。英国のNPOの通信教育をもとに勉強会も行い、傾聴スキルも学習した。それでも梶原さんは「活動を続けるうちに、支援疲れを感じる時期もありました。それに、政策に働きかけ、社会を変えていくには、学者としての言葉をもつ必要を感じて」と、12年から立教大学大学院で社会学を学んでいる。

悲しみと共に生きる力

 PLMがこれまでに電話相談を受けた件数は累計870件。内容の4割は医療問題だという。「動物医療が高度になって選択肢が増え、どこまで治療すべきだったのかという答えの出ない問いを私たちは引き受けていかなければならないのかもしれません」と梶原さん。

 「納得のいく看取(みと)りができるかどうか。できなければ、悲しみは深く長く続きます。どのような看取りを望むかは動物の年齢や病気によっても異なりますから、家族でよく話し合うことが大切です」。葬儀についても、亡くなったときに慌てて対処するのではなく、事前に送り方をよく相談しておくことを勧める。

 梶原さんによれば、PLMのような活動は全国的にはまだ少ない。支え合いの輪がより広がることを願っている。

 「ペットロスになるのは、とても自然なこと。けれど、別れ方によっては、とても重いペットロスになってしまいす。無理に“ごめんね”を“ありがとう”に変えようと急ぐ必要はありません。謝りたいとご自身が感じる間は、その気持ちを抱いて生きていきましょう。必要なだけ泣き、ゆっくり悲しむことを自分に許しましょう。悲しみは生きていく限り私たちの胸にあるけれど、悲しみと共に生きていく力もまた、私たちの中にあると信じています」

PLM(ペット・ラヴァーズ・ミーティング)のホームページはこちら(http://www.ddtune.com/plm/

ペットロスホットライン:03−5954−0355

『sippo』no.21(2013年12月発行)より。内容は取材当時のものになります。

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