闇に咲く男の花柄 14年春夏ミラノ、パリ・メンズコレクション

  • 2013年7月8日

写真:[1]プラダ[1]プラダ

写真:[2]グッチ[2]グッチ

写真:[3]ドリス・ヴァン・ノッテン[3]ドリス・ヴァン・ノッテン

写真:[4]エルメス[4]エルメス

写真:[5]ドルチェ&ガッバーナ[5]ドルチェ&ガッバーナ

写真:[6]コムデギャルソン[6]コムデギャルソン

写真:[7]ラフ・シモンズ[7]ラフ・シモンズ

 暗闇に花咲き誇る季節がやって来る――。6月下旬に開かれた2014年春夏のミラノ、パリ・メンズコレクションは、男性服でありながら、花柄の競演になった。だが明るい気分が表現されたものでは決してなく、色調はとにかく暗い。そこには時代の憂鬱(ゆううつ)と、癒やしを求める心情が、同時に現れているようだった。

 希代のトレンドセッター、プラダ=写真[1]=が発信したのは、トロピカルでありながら、お気楽なリゾートスタイルではなかった。暮れなずむ地球を思わせる絵画的な半袖ニットを花柄シャツの上に重ね、環境破壊や人口爆発に脅かされる人類の陰鬱(いんうつ)な現在を連想させる。グッチ=[2]=は抑えた色調で紫の花を咲かせ、全身花柄の装いを美しく見せた。

 シャツ、パンツ、コートを別の花柄で構成するコーディネートに挑んだのはドリス・ヴァン・ノッテン=[3]。女性がまとうようなシフォン素材に肌が透け、金色に輝く刺繍(ししゅう)がアクセントになっている。

楽園への願望

 しかしなぜ今、男の服に花が満開なのか。

 デザイナーのノッテンはまず、「ジャン・コクトーやジミ・ヘンドリックスのように、男も花柄を身に着けてきた」と歴史を振り返る。そして、「今回表現した花はフレッシュなものばかりじゃない。ダークネス(闇)とともにあるんだ」と、黒地に花を咲かせた理由を語った。

 金融危機後、失業者が街の辻々に座り込む欧州で、花香る楽園は望むべくもない。だが足早に進むデジタル社会で、男も時には立ち止まって花や草木をめでたい。今はそんな「ボタニカルな時代」であるのだろう。

 花柄の表現は多彩だった。エルメス=[4]=は極薄リネンの花柄シャツに、無地のジャケットを合わせ、控えめな採り入れ方を提案。ドルチェ&ガッバーナ=[5]=は、デザイナーの故郷シチリアのアーモンドの花を絵画のように描いた。

女性服と融合

 花柄に象徴される、男女の境界があいまいな「クロスジェンダー」の装いは、昨今の大きな潮流だ。異性と共有できる服が広がっており、「できればモノをシェアしていこう」という思想が垣間見える。

 また、女性的な要素を男性服に取り入れることは、しなやかで強い生への希求でもあるのだろう。コムデギャルソン=[6]=は、ゴムが斜めに走る女性のシャーリングパンツを男に着せ、ジャケットの裏地を伸ばして、スカートのようにパンツに重ねて見せた。「イメージしたのは羽化。サナギがチョウになるように、強さを表現したかった」とデザイナーの川久保玲。

 ラフ・シモンズ=[7]=は、文字入りスエットにテーラードジャケットをスタイリッシュに合わせた。ワンピースも登場させ、中性的な雰囲気を漂わせた。

 今季は新しいデザイナーの登場もニュースだった。

 働く男の服を作ってきたエルメネジルド・ゼニアの最高級ラインに、昨年までイヴ・サンローランで指揮を執ったステファノ・ピラーティが就任。淡く美しい色彩とモード感をスーツに持ち込んだ。

 アレキサンダー・ワンがデザインした初めてのメンズコレクションとなったバレンシアガは、襟のボタンだけを留め、前がヒラヒラと揺れるシャツや素材感など、レディースとの融合を強めていた。

 今季、強い印象を残したのは、地位や富を誇示するメンズファッションではなく、着る人自身や周りの人々の内面に作用する服だ。花柄が乱れ咲く舞台を見ながら、「面白きこともなき世を面白く」という言葉が浮かんだ。それが、ファッションの力なのだろう。

 (中島耕太郎)

 (写真は大原広和氏撮影)

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