城旅へようこそ

城下町歩き、旅の終わりは温泉と信州そばで 松本城(4)

城下町歩き、旅の終わりは温泉と信州そばで 松本城(4)

松本市役所の展望室からのぞむ松本城

<松本城(3)からつづく>
松本は城下町歩きも楽しい。松本の町は、かつての趣をよく残し、古いものをうまくリミックスして新しいものをつくっている気がして心地よい。松本市出身の世界的芸術家・草間弥生の奇抜なラッピングバスも違和感なく城下町に溶け込んでいる。

城下町歩き、旅の終わりは温泉と信州そばで 松本城(4)

城下町歩きも楽しい

城下町は善光寺街道沿いにつくられ、南北約3.2キロあった。北東に位置する安楽寺と岡宮神社は、鬼門除(よ)け。鷹匠町、大名町通り、同心小路など江戸時代の名残をとどめ、道が鉤(かぎ)の手や食い違いになっているなど片鱗(へんりん)が残る。

松本城のような平地に築かれた平城は、広大な城地を確保できる半面、敵に侵入されやすいのが難点だ。松本城はこの弱点を、三重の堀(内堀・外堀・総堀)でカバーしている。総堀のさらに南側を女鳥羽川が固める堅固ぶりだ。女鳥羽川は町人の住む町との境にもなっている。

城下町歩き、旅の終わりは温泉と信州そばで 松本城(4)

女鳥羽川、縄手、南総堀は町人地と三の丸の武家地を分け、日よけ地にもなった

総堀の外側北東部分につくられたのが、全長300メートルに及ぶ「捨堀(すてぼり)」だ。石川康長が慶長18(1613)年に改易された原因は、幕府に無断でこの捨堀を構築したためともいわれる。秀吉へ恭順の意を示すべく取り組み始めた城づくりが、後に権力者が変わると失脚の原因になったとすれば、なんと皮肉なことだろう。味噌(みそ)玉味噌の老舗、萬年屋は捨堀の外側にあり、敷地内に土塁の跡が残る。

城下町歩き、旅の終わりは温泉と信州そばで 松本城(4)

黒門一の門の軒丸瓦は、歴代城主の家紋が入り交じる。昭和の天守解体修理の際に保存された瓦を使用したため

疲れた足を癒やしてくれる温泉があるのも、松本の魅力だ。おすすめは、松本藩の御殿湯として400年超の歴史を持つ、浅間温泉の「湯々庵 琵琶の湯」。初代松本城主・石川数正が湯御殿を造営し、湯殿を整備したことをはじまりとする。初代の湯守・石川晶光(小口楽斎)は数正の三男・康次の子で、戦で負傷し歩行困難の身となったため御殿守の役職に就いたという。

城下町歩き、旅の終わりは温泉と信州そばで 松本城(4)

「湯々庵 琵琶の湯」のカフェ。庭には松本城主石川康長公お手植えの松が

400年以上守られてきた弱アルカリ性の単純泉は、つるつるとした肌触りでさっぱりした湯上がり。静寂に包まれた、緑ゆたかな露天風呂もたまらない。
風呂上がりには、併設されたカフェへ。庭には、樹齢400年を超える石川康長お手植えの松の大木が。ゆったりとした時間が、旅の疲れをリセットしてくれる。

城下町歩き、旅の終わりは温泉と信州そばで 松本城(4)

温泉上がりの信州りんごサイダー

時間がなければ、松本城から徒歩10分ほどの銭湯、「塩井乃湯」でさっと汗を流すのもよい。松本城下には井戸や湧き水があちこちにあり、塩井乃湯の井戸も松本名水三泉のひとつ。塩類を豊富に含む、飲める鉱泉の銭湯だ。敷地内に松本城主が茶の湯に用いたと伝わる名水の井戸があり、その水をくみ上げている。最近は松本城帰りの外国人観光客が立ち寄ることも多く、試飲用に提供すると大感激されるとか。松本の日常が感じられ、大正時代築のレトロな建物も素敵だ。

城下町歩き、旅の終わりは温泉と信州そばで 松本城(4)

塩類鉱泉の塩井乃湯。松本名水の井戸からくみ上げている

城下町歩き、旅の終わりは温泉と信州そばで 松本城(4)

松本城下は井戸や湧き水が点在する

塩井の湯付近は旧町名を土井尻町といい、松本城三の丸の西南部にあたる。その証に、すぐ近くには城内外を隔てる外堀西総堀土塁が残存している。

もちろん、信州そばは必食だ。信州の土地は米づくりに適さず、主食の代用品としてそばの栽培が盛んになった。松本城周辺には立ち並ぶそば屋から、お気に入りを探すのも楽しい。

城下町歩き、旅の終わりは温泉と信州そばで 松本城(4)

西総堀土塁公園として整備されている、残存する松本城外堀の一部

食べそびれたときに駆け込めるのが、松本駅前の「小木曽製粉所 松本駅前店」だ。セルフサービスの立ち食いそば屋だが、侮れない。信州・国産のそば粉を製粉・製麺する小木曽製粉所の直営店だけのことはあり、リーズナブルながら本格的。特急列車の発車まで、15分もあれば信州の味を堪能できる。松本の城旅は、乗車直前まで終わらないのである。

城下町歩き、旅の終わりは温泉と信州そばで 松本城(4)

旅の終わりは信州そば

(松本城の回・おわり)

#交通と問い合わせ先
■松本城
JR篠ノ井線「松本」駅から徒歩約15分
0263-32-2902(松本城管理事務所)
http://www.matsumoto-castle.jp/

■萬年屋 本店
0263-32-1044
http://mannenya.ne.jp/

■浅間温泉 湯々庵 琵琶の湯
アルピコ交通バス「浅間温泉」バス停から徒歩約10分
0263-46-1977
http://biwanoyu.com/

■塩井乃湯
JR篠ノ井線「松本」駅から徒歩約10分
0263-32-1507

■小木曽製粉所 松本駅前店
JR篠ノ井線「松本」駅お城口から徒歩30秒
0263-33-5551
http://ohtaki-gp.net/ogisoseimenjyo/matsumoto.php

PROFILE

萩原さちこ

小学2年生のとき城に魅了される。執筆業を中心に、メディア・イベント出演、講演、講座などをこなす。著書に『わくわく城めぐり』(山と渓谷社)、『戦国大名の城を読む』(SB新書)、『日本100名城めぐりの旅』(学研プラス)、『お城へ行こう!』(岩波ジュニア新書)、『図説・戦う城の科学』(サイエンス・アイ新書)など。webや雑誌の連載多数。

これが国宝の技と美!いざ、天守内部へ 松本城(3)

一覧へ戻る

太閤・秀吉の夢の跡 肥前名護屋城(上)

RECOMMENDおすすめの記事