にっぽんの逸品を訪ねて

山あり、海ありの別府温泉で地獄めぐり

露天風呂から別府湾を望む

露天風呂から別府湾を望む

“香港のような街”というのが、何回か訪れて抱いた別府温泉(大分県別府市)の印象だ。山が迫る海沿いの平地にひしめくように旅館や民家が立ち並び、多国籍な観光客が行き交って、街全体がエネルギーに満ちている。
別府温泉が気に入って、ただ一人の知り合いもなく関東から移り住んだという、ある女性は「活気と人情がある街。昔から多くの温泉客を受け入れてきたせいか、旅人にも移住者にもやさしい」と話す。

鶴見岳を背景に広がる別府温泉

鶴見岳を背景に広がる別府温泉

別府温泉の逸品は、もちろん温泉だ。源泉数、湧出(ゆうしゅつ)量とも日本一。湧出量はアメリカのイエローストン国立公園に次いで世界で第2位、泉質は日本にある10種類のうち、8種が湧く。市内には100カ所以上の共同湯があり、温泉は市民の生活に溶け込んでいる。
日豊線別府駅で、ガイドをお願いした現地在住の女性と待ち合わせ、別府の温泉めぐりを開始した。車が高台へ向かうと、温泉地は鶴見連山から別府湾に向かう斜面に開けているのがよく分かる。

山の風情が味わえる温泉も

山の風情が味わえる温泉も

別府市には、南北約7キロ範囲に別府、鉄輪(かんなわ)、観海寺(かんかいじ)、明礬(みょうばん)、亀川(かめがわ)、柴石、堀田(ほりた)、浜脇という八つの温泉郷があり、別府八湯(はっとう)とよばれている。別府の温泉は、この八つの温泉郷を中心に湧き出ている。
「車で走れば約15分という範囲に、これだけの泉質がそろって、しかも山あり、海ありと、変化に富んだ景色は別府ならではだと思います」とガイドさん。
山の趣が楽しめると聞いて訪れたのは堀田温泉の日帰り入浴施設だ。滝が見える貸し切り風呂に身を沈めると、滝と渓流の水音だけが響き、まるで深山の趣。湯はやや白濁した硫黄泉だ。
ここから東へ5分ほど走った観海寺温泉の入浴施設には、別府湾を一望する露天風呂があった。眼下に海を見ながらの入浴は開放感たっぷり。湯はやや青みがかったナトリウム-塩化物泉。少し移動しただけなのに、景色も泉質もがらりと変わることに驚く。

赤色の熱泥が噴出する血の池地獄

赤色の熱泥が噴出する血の池地獄

白い噴煙が上がる高温の海地獄

白い噴煙が上がる高温の海地獄

別府温泉の多彩な温泉資源を実感できる観光の一つに「べっぷ地獄めぐり」がある。“地獄”は、噴気や熱泥、熱湯を噴出する源泉のことで、鉄輪と亀川の両地区にまたがって8カ所の地獄がある。
名前の通り、深い赤色をした血の池地獄や、美しい水色の海地獄は、温泉とは思えない鮮やかな色合いに目を奪われる。これらの色は、それぞれに含まれる酸化鉄や硫酸鉄などの反応によって色づくという。海地獄は涼しげな色合いだが、泉温は98度もある。
間欠泉の竜巻地獄や灰色の熱泥が坊主頭のように沸騰する鬼石坊主、ほかにも白池、山、かまど、鬼山の各地獄がある。不思議な景観の連続は、自然のエネルギーと神秘を感じさせる。

鉄輪温泉街にある飲泉所

鉄輪温泉街にある飲泉所

鉄輪温泉や海沿いの北浜地区のそぞろ歩きも楽しい。鉄輪温泉街では、温泉の蒸気で食材を蒸して食べる地獄蒸しの食事処や飲泉所があり、観光客でにぎわっている。
北浜地区は地元の人が通う飲食店も多く、別府でよく食べるというマテ貝やブリしゃぶなど新鮮な魚介類が味わえる。大分名物のとり天(鶏肉の天ぷら)と温泉水ハイボールで一杯は、湯上がりにはこたえられない。

とり天と温泉水ハイボール

とり天と温泉水ハイボール

交通・問い合わせ

・JR日豊線別府駅下車
・別府市観光協会 0977-24-2828

PROFILE

中元千恵子

旅とインタビューを主とするフリーライター。埼玉県秩父市生まれ。上智大卒。伝統工芸や伝統の食、町並みなど、風土が生んだ文化の取材を得意とする。また、著名人のインタビューも多数。『ニッポンの手仕事』『たてもの風土記』『伝える心息づく町』(共同通信社で連載)、『バリアフリーの温泉宿』(旅行読売・現在連載中)。伝統食の現地取材も多い。
全国各地のアンテナショップを紹介するサイト 風土47でも連載中

町並みに今も息づく浜旦那の心意気・広島県竹原市(4)

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南蛮貿易の歴史を伝える海辺の城下町 大分県臼杵市

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