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断崖の上の古城 岡城

岡城のメインビジュアル、本丸北側の高石垣。岩盤上にそそり立つ

岡城のメインビジュアル、本丸北側の高石垣。岩盤上にそそり立つ

異空間に迷い込んだ気持ちになる城だ。高所にいるのはわかるものの、ひとたび城内に入ればさほどアップダウンがない。雨上がりには霧に包まれ、雲の上を延々と歩いているような錯覚に陥る。それは、この城が東西に続く阿蘇溶岩台地に築かれているせいだ。斜面を大規模に削り込んで広大な平らな土地を確保し、周囲を石垣で囲んでいる。
岡城(大分県竹田市)は、標高325メートルの山上に築かれた山城だ。山城とは、高い山に築かれた城のこと。中世は山城が主流で、やがて福岡城(福岡県福岡市)や熊本城(熊本県熊本市)のように、標高がさほどない山や台地などを城地とする平山城に移行していく。

山上に累々と残る、石垣が美しい

山上に累々と残る、石垣が美しい

天守や高い石垣が築かれるのは平山城が主流になってからだ。ところが岡城は、山城でありながら立派な石垣が累々と築かれている。中世の城から近世の城へと改造された城だからだ。

白滝川と稲葉川に挟まれた、切り立った崖の上にある。難攻不落の堅城とされるのは、天正4(1586)年からの豊薩戦争で島津義弘の大軍を撃退した歴史があるため。岡城のはじまりは文治元(1185)年とされるが、室町時代初期に豊後国守護・大友氏の分家である志賀氏が入り居城とした。

阿蘇溶結凝灰岩は加工しやすいため、切りそろえられた美しい石垣が築ける

阿蘇溶結凝灰岩は加工しやすいため、切りそろえられた美しい石垣が築ける

石垣を築き現在の城へと大改修したのは、文禄3(1594)年に岡城主となった中川秀成だ。本丸を中心とする中央の主郭エリア、御廟(ごびょう)などがあった東側のエリア、西の丸御殿や家臣団屋敷が並んだ西側のエリアの3つで構成される近世スタイルの城をつくり上げた。三の丸を含む城の中心部は、慶長元(1596)年に完成したとされる。

晴れていれば九重連山が見渡せる

晴れていれば久住連山が見渡せる

とにかく広く見どころは多いのだが、しいて挙げれば三つ。ひとつは、大手口から大手門へ向かう登城道の崖側にある「かまぼこ石」。全国的にも珍しい石塁で、雨よけのために扇形に加工されている。ところどころに開いている穴は、柱穴。ここに柱を立て、戸板を並べて城壁としていたという。

大手門跡。ヨーロッパの古城を思わせる存在感と壮麗さがある

大手門跡。ヨーロッパの古城を思わせる存在感と壮麗さがある

全国的にも珍しい「かまぼこ石」

全国的にも珍しい「かまぼこ石」

ふたつ目は、本丸を中心とする主郭部の構造だ。本丸の北側一段下に二の丸、西側の一段下に三の丸を置き、それらで構成される中枢部の両側は西・東中仕切りという城門でがっちりと守られる。この中仕切りの配置と石垣が、なかなかに見ごたえがある。本丸の南西隅には天守相当の御三階櫓(やぐら)があり、明治まで存続していた。明治初期の写真が残る。

本丸金倉跡から見下ろす東中仕切

本丸金倉跡から見下ろす東中仕切

最大の見どころは、西中仕切跡付近から見る三の丸北側の石垣だ。足がすくむほどの断崖に築かれ、岩盤上に直接そそり立つ。高さ20メートルはあるだろうか。石垣の向こうには山々が見え、大自然をも取り込んだような景観だ。よくぞこんな場所にこれほどの高い石垣を積み上げたものと感心してしまうはず。こんな景観は、全国のどこの城にもない。

断崖に築かれた圧巻の高石垣

断崖に築かれた圧巻の高石垣

城下の国道502号はメロディロードになっていて、哀愁ただよう音色が聞こえてくる。曲は「荒城の月」。そう、岡城はこの名曲が生まれた地なのだ。滝廉太郎は少年時代を竹田で過ごし、荒れ果てた岡城に登って遊んでいたという。

二の丸にある滝廉太郎の像

二の丸にある滝廉太郎の像

もれなく、とっておきのおみやげがついてくる。入場料と引き換えに、登城手形と巻物がもらえるのだ。戦国時代へ誘う密書のように思えて、気分がぐっと上がる。巻物はパンフレットの代用品なのだが、城内マップのほか歴史や構造が記され、これさえあれば岡城の攻略は完ぺき。『岡城真景図屏風』の一部が印刷され、掛け軸のようにもなる粋(いき)なつくりだ。

登城手形と巻物を登城記念に

登城手形と巻物を登城記念に

巻物を片手に構造をたどり、壮大な石垣を存分に堪能したい。ゆったりとした時間が流れる城下町もおすすめだ。
今年4月に発生した地震の影響で、一部近づけない石垣がある。城内はすべて見学できるが、岡城跡登城バスは石垣修復工事終了まで運行中止なので注意が必要だ。

#アクセス・問い合わせ・参考サイト
JR豊肥線「豊後竹田」駅より車で5分
岡城料金徴収所 0974-63-1541
竹田市「国指定史跡 岡城跡」
https://www.city.taketa.oita.jp/okajou/

PROFILE

萩原さちこ

小学2年生のとき城に魅了される。執筆業を中心に、メディア・イベント出演、講演、講座などをこなす。著書に『わくわく城めぐり』(山と渓谷社)、『戦国大名の城を読む』(SB新書)、『日本100名城めぐりの旅』(学研プラス)、『お城へ行こう!』(岩波ジュニア新書)、『図説・戦う城の科学』(サイエンス・アイ新書)など。webや雑誌の連載多数。

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