旅空子の日本列島「味」な旅

遣唐使船やキリシタンの祈り秘める上五島の島々 長崎県

長崎県の西、南北80キロにわたり東シナ海に浮かぶ五島列島は『古事記』にも登場する古くから知られた島。日本と大陸の間にあることから遣唐使船の寄港や倭寇(わこう)の足場、捕鯨基地としてにぎわい、キリシタンの島としても語り継がれてきた。

リアス式の海岸には大小の漁港があちこちに

リアス式の海岸には大小の漁港があちこちに

列島は中通、若松、奈留、久賀、福江の五つの島を中心に140ほどからなり、北側の中通島などを上五島と呼び、南側の福江島などを下五島と呼ぶ。行政上も新上五島と五島市に分かれている。橋の架かる若松島と中通島以外は、島々の往来は船のみ。

中通島と若松島に掛かる5島で唯一の若松大橋

中通島と若松島に掛かる5島で唯一の若松大橋

そんな島の一つ、中通島に初めて行ったのは今年の7月。長崎港からの高速船で着く鯛ノ浦港に出迎えてくれた町役場の車が最初に向かったのが石造りの頭ケ島天主堂(かしらがしまてんしゅどう)だ。

世界遺産に登録申請をすることになった中通島の顔、頭ケ島天主堂

世界遺産に登録申請をすることになった中通島の顔、頭ケ島天主堂

案内役の中多育郎さんいわく。「長崎の教会群とキリスト教関連遺産の世界遺産候補など島で一番の注目ポイントですから」。信徒たち自ら石を切り出し、積み上げ、9年を要して完成した建物で、国の重要文化財にもなっている。
南北に長く、リアス式海岸に縁取られた中通島には良港がいくつかあり、それぞれの集落では教会が目に付く。訪ねたのは青い入り江を見下ろす美しい赤レンガの青砂ケ浦天主堂や八角ドームの赤レンガの大曽教会堂だが、車中から見た桐教会や高井旅教会、中ノ浦教会なども忘れ難いたたずまいだった。

青い入り江を見下ろす赤レンガの青砂ケ浦天主堂

青い入り江を見下ろす赤レンガの青砂ケ浦天主堂

これらの教会の多くは迫害をのがれて長崎・外海(そとめ)など本土からの移住者が心のよりどころとして自ら汗を流し、地元の教会堂建築の名工・鉄川与助の腕と信徒らの手によって建てられたものだと聞いた。
島での食事はヒラマサ、アラカブ、アオリイカなど魚介をはじめ美味がいろいろ。昼に食べた五島手延べうどんの“地獄炊き”はのど越しつるつる、もちもちで、アゴ(トビウオ)だしにうまみが一段と深かった。地元ではすきやきのように溶き卵につける食べ方もあるが、これは本場ならではの新しい発見だった。

日本うどんの発祥の美味な五島手延べうどん

日本うどんの発祥の美味な五島手延べうどん

夕食では新鮮な刺し身を堪能したが、とりわけ四角っぽい箱ふぐの腹を開けて堅い甲羅(皮)を鍋にしてみそを詰めて焼いた“箱ふぐのみそ焼”(地元の呼び方は「かっとっぽ」)は、焼けてホクホクの身とみそ、ネギなどをほぐし混ぜ合わせて食べる絶品だった。

堅い皮まま焼く絶品名物・箱ふぐのみそ焼

堅い皮まま焼く絶品名物・箱ふぐのみそ焼

みやげには五島手延べうどんの他に、海水を濃縮し、煮詰めて作る古来の製法を復活した直たきの“五島の海塩”は雪のように白く、舌に柔らかい。知る人ぞ知るの逸品だそうだ。島特産のツバキ製品、サツマイモと餅を混ぜた“かんころ餅”も勧められて、今度の旅はいつになく土産でカバンがパンパンに膨らんだ。

工場製や家内作業製など、販売されているうどんは多種多様

工場製や家内作業製など、販売されているうどんは多種多様

名品の誉れ高い、純白で角のない五島の海塩

名品の誉れ高い、純白で角のない五島の海塩

絶景の海岸や入り江も訪ねたいし、他の島へも足をのばしたい。再び三度訪れたい、遠かったけれど近くになった五島列島の旅だった。

交通・問い合わせ

・長崎から鯛ノ浦(中通島)まで五島産業汽船高速船で1時間40分
・長崎から有川(中通島)まで九州商船高速船で1時間40分
・佐世保から有川まで九州商船フェリーで2時間35分、五島産業汽船フェリーで2時間30分
・新上五島町観光商工課 0959-42-3851
・新上五島町観光物産協会 0959-42-0964

※都道府県アンテナショップサイト「風土47」より転載。文中のリンク先は楽天トラベルの旅行情報ページです。

PROFILE

中尾隆之

中尾隆之(なかお・たかゆき)ライター
高校教師、出版社を経てフリーの紀行文筆業。町並み、鉄道、温泉、味のコラム、エッセイ、ガイド文を新聞、雑誌等に執筆。著作は「町並み細見」「全国和菓子風土記」「日本の旅情60選」など多数。07年に全国銘菓「通」選手権・初代TVチャンピオン(テレビ東京系)。日本旅のペンクラブ代表・理事、北海道生まれ、早大卒。「風土47」でコラムを連載中。

牧歌と高原情緒の岩手山麓 小岩井・網張温泉 岩手県

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