京都ゆるり休日さんぽ

京都の年越しの風物詩・八坂神社の「をけら詣り」で新年を

大みそかから元旦にかけて、京都の社寺は新しい年を迎える人々でにぎわいます。除夜の鐘をつく、山腹から初日の出を拝む、干支(えと)のおみくじをひくなど、寺社の立地や特徴によって参拝者のお目当てはさまざま。そんな中でも、年越しの風物詩として京都の人々に守り継がれている行事が、祇園の八坂神社で行われる「をけら詣(まい)り」です。

吉兆縄に「をけら火」をつける参拝者たち=2015年12月31日午後7時7分、京都市東山区の八坂神社、戸村登撮影

吉兆縄に「をけら火」をつける参拝者たち=2015年12月31日午後7時7分、京都市東山区の八坂神社、戸村登撮影

をけら詣りは、大みそかの夜から元旦にかけて、夜を徹して御神火を焚(た)く神事。参拝者はこの火を火縄に移して持ち帰ることができ、神棚の灯明(とうみょう)にともしたり雑煮を炊く火種にしたりして、新しい年の無病息災を祈ります。

四条通の東端にある八坂神社は、祇園祭をはじめ京都の年中行事と深い関わりを持つ(画像提供/八坂神社)

四条通の東端にある八坂神社は、祇園祭をはじめ京都の年中行事と深い関わりを持つ(画像提供/八坂神社)

大みそかの午後7時から行われる除夜祭の後、本殿のをけら灯籠(とうろう)に焚かれていた御神火は、境内各所の灯籠へと移されます。燃やされている「をけら」とは、独特の匂いのする薬草のこと。この匂いが魔よけとされ、病気や災いから守ってくれると伝えられてきました。灯籠には「をけら木」と呼ばれる願い事の書かれた祈願木をくべて、火を絶やさぬよう元旦まで焚き続けられます。昼間には授与所で、をけら木を授かり、願い事を書いて燃やしてもらうこともできます。

灯籠の火を吉兆縄に移し、持ち帰ってその火で雑煮を作り無病息災を願う

灯籠の火を吉兆縄に移し、持ち帰ってその火で雑煮を作り無病息災を願う

参拝は、をけら灯籠の火を吉兆縄(きっちょうなわ)に移して、自宅まで火を消してしまわぬよう、くるくると回しながら持ち帰ります。火は、線香のようにほのかにともる程度なのでご安心を。残った火縄は「火伏せのお守り」として台所に祀(まつ)っておくと良いとか。近年では、公共の交通機関を利用する人のために、鎮火用の水おけも用意されています。

美の神様として知られる「美御前社」は、祇園の芸・舞妓さんも参拝に訪れる(画像提供/八坂神社)

美の神様として知られる「美御前社」は、祇園の芸・舞妓さんも参拝に訪れる(画像提供/八坂神社)

また、京都内でも屈指の初詣スポットでもある八坂神社には、さまざまなご利益の末社(まつしゃ)が境内に。縁結びの神様である「大国主社」、美人祈願の「美御前社(うつくしごぜんしゃ)」は、女性の参拝者や祇園の芸・舞妓さんからも信仰を集める末社。美御前社のかたわらに湧き出る「美容水」は、2、3滴肌につけると身も心も美しくなると伝えられています。

肌につけると美しくなれると伝えられる「美容水」は女性に人気(画像提供/八坂神社)

肌につけると美しくなれると伝えられる「美容水」は女性に人気(画像提供/八坂神社)

商売繁盛の神様として知られる蛭子さまを祀った末社が「北向蛭子社(きたむかいえびすしゃ)」。「祇園のえべっさん」と呼ばれるこちらでは、関西を中心に信仰される「十日戎(とおかえびす)」の1月10日に、蛭子社祭(えびすしゃさい)が開かれます。全国でも珍しい、七福神に扮した人々がえびす船に乗って巡行する「祇園えびす船巡行」も行われるので、年明けにもぜひチェックしてみてください。

北向きに社を構える珍しい造りの「北向蛭子社」。1月10日の十日戎も多くの参拝者でにぎわう(画像提供/八坂神社)

北向きに社を構える珍しい造りの「北向蛭子社」。1月10日の十日戎も多くの参拝者でにぎわう(画像提供/八坂神社)

年越しの恒例行事「をけら詣り」をはじめ、新しい年に、人々のさまざまな願いを受け止める八坂神社。祇園の通りに、ぽつぽつと光る「をけら火」を持った初詣客が、それぞれの家で暮らしの灯(ひ)をともすとき、新しい年が始まります。(文/大橋知沙)

【八坂神社】
075-561-6155
京都市東山区祇園町北側625
24時間参拝可 ※大みそかは境内に通行規制あり
拝観無料(をけら詣りの吉兆縄700円)
京阪祇園四条駅から徒歩5分・市バス祇園からすぐ

PROFILE

大橋知沙

編集者・ライター。東京でインテリア・ライフスタイル系の編集者を経て、2010年京都に移住。京都のガイドブックやWEB、ライフスタイル誌などを中心に取材・執筆を手がける。本WEBの連載「京都ゆるり休日さんぽ」をまとめた著書に『京都のいいとこ。』(朝日新聞出版)。編集・執筆に参加した本に『京都手みやげと贈り物カタログ』(朝日新聞出版)、『活版印刷の本』(グラフィック社)、『LETTERS』(手紙社)など。自身も築約80年の古い家で、職人や作家のつくるモノとの暮らしを実践中。

終い天神の寄り道に。330年以上続く「粟餅所・澤屋」で一服

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