京都ゆるり休日さんぽ

京都の食通&骨董好きを虜にする「寺町李青」

京都・出町柳の路地裏にたたずむ、朝鮮王朝時代の美しい調度品に囲まれた韓国軽食店「李青(りせい)」。舌の肥えた客からうつわ・骨董(こっとう)好きまで多くのファンを持つこの店が、20年目にして2号店をオープンしました。目の前に京都御所があり、骨董店や茶舗などが立ち並ぶ寺町通りの角という文化的なロケーションに構えたのは、韓国茶と甘味が中心の喫茶「寺町李青」。ビビンバを名物とする出町柳の店とは趣向を変え、ゆったりとお茶の時間を楽しむことができる大人の空間です。

土蔵を生かした民家を改装した店内に、朝鮮王朝時代の家具や美術・工芸品が並ぶ上質な空間。

土蔵を生かした民家を改装した店内に、朝鮮王朝時代の家具や美術・工芸品が並ぶ上質な空間。

植物の根や木の実を煎(せん)じて作られる韓国茶は、体を温め滋養を付けるお茶として、高麗時代から民間でも飲まれてきたもの。韓方茶、人参茶など6〜7種類の韓国茶がそろうほか、コーヒーやビールなどもいただけます。そんな自然の力あふれる韓国茶と合わせて、オープン以来話題をさらったのが、スタミナ抜群の「黒毛和牛のカルビサンド」。ジューシーな和牛ロースをキムチと一緒にトーストにはさんだ、いわば韓国版ビーフサンドです。

「黒毛和牛のカルビサンド」(1000円)は、和牛×キムチの黄金コンビにうなる逸品。クコの実、ナツメなどを漬け込んだ「韓方茶」(700円)と。ともに税込み。

「黒毛和牛のカルビサンド」(1000円)は、和牛×キムチの黄金コンビにうなる逸品。クコの実、ナツメなどを漬け込んだ「韓方茶」(700円)と。ともに税込み。

サンドイッチにキムチとは意外な組み合わせですが、ひと口食べれば最高の相性と実感するはず。さっとあぶった柔らかな和牛をキムチの酸味がピクルスのように引き立て、かみしめるほどに肉汁とキムチが極上のハーモニーを奏でます。

「禅食ケーキ」(500円・税込み)。韓国の禅僧が飲む禅食(はと麦・玄米・エゴマ・黒豆など16種類の素材をミックスしたもの)を使い、もっちりとしていて滋味深い味わい。

「禅食ケーキ」(500円・税込み)。韓国の禅僧が飲む禅食(はと麦・玄米・エゴマ・黒豆など16種類の素材をミックスしたもの)を使い、もっちりとしていて滋味深い味わい。

こちらのカルビサンドをはじめ、メニューはトーストやケーキなど、お茶と一緒に気軽に食べられるものばかり。そのため、視線は自然と空間やしつらえに向かいます。土蔵を生かした古民家を改装した店内には、オーナーの鄭玲姫(チョン・ヨンヒ)さんが自宅で使っていたという美しい家具や調度品が並び、洗練された雰囲気に思わずため息がこぼれます。

千利休など日本の茶人も愛した朝鮮王朝時代の美術。店のあちこちに、その魅力を伝えるしつらえが。

千利休など日本の茶人も愛した朝鮮王朝時代の美術。店のあちこちに、その魅力を伝えるしつらえが。

凛とした空気感を引き立てるように流れるのは、バッハの旋律。よく見ると店内のしつらえも、ドライフラワーや北欧のオブジェ、日本の作家の工芸品など、韓国に限らずさまざまな国のエッセンスが、巧みにミックスされているのがわかります。

オリーブグリーンのタイル壁が印象的なカウンター。照明や工芸品など、北欧や和の作品も織り交ぜて飾られている。

オリーブグリーンのタイル壁が印象的なカウンター。照明や工芸品など、北欧や和の作品も織り交ぜて飾られている。

「出町柳の店は、食や美術を通じて韓国の文化を伝えられればと51歳ではじめました。それから20年目にして2店目を出す機会に恵まれ、ここは私の自宅に招くような感覚で、和・洋・韓を織り交ぜた空間にしようと思ったんです」

オーナーの鄭玲姫(チョン・ヨンヒ)さん。穏やかで知的な会話を楽しみに通う常連客も多い。

オーナーの鄭玲姫(チョン・ヨンヒ)さん。穏やかで知的な会話を楽しみに通う常連客も多い。

そう語る鄭さんを訪ねて、店には出町柳の李青の常連客から韓国の美術や古物の愛好家、そのたたずまいにひかれてふらりと扉を開ける人など、さまざまな人が訪れます。店の一角には、鄭さんが韓国から買い付けた古物や雑貨、店で使用しているうつわの販売スペースも。アートとしてはもちろん、普段の食卓やインテリアにも取り入れられる品々、「これは何?」とたずねたくなる一風変わったモノなどが並び、韓国談議に花が咲きます。

鄭さん自ら買い付けた韓国の古物や日用品、作家のうつわなどが並ぶ。韓国の工芸がまとまって見られる貴重なスペース。

鄭さん自ら買い付けた韓国の古物や日用品、作家のうつわなどが並ぶ。韓国の工芸がまとまって見られる貴重なスペース。

「うつわや雑貨の販売はずっとやりたかったことなんです。出町柳の店にも物販コーナーはありますが、ここならもっとゆったり見ていただけますから。寺町の店は、のんびりとやりたかったことをかなえていきたい。私が70歳で新しいお店を開いたから、友人たちはみんな『勇気付けられた』なんて言ってくれます」と鄭さんは笑います。

寺町通りと丸太町通りの交差点に位置するため、寺町通りの散策や京都御所からの寄り道にぴったり。

寺町通りと丸太町通りの交差点に位置するため、寺町通りの散策や京都御所からの寄り道にぴったり。

目利きの集まる京都の街で、時代や国を超えて美しいものを選び取り、上質な空間で迎えてくれる「寺町李青」。じんわり体を温めてくれるお茶を片手に、おなかも心も満たしてくれる豊かな時間を過ごしてみてはいかがでしょう。(撮影/津久井珠美)

【寺町李青】
075-585-5085
京都市中京区下御霊前町633
12:00〜18:00
火曜定休
京阪神宮丸太町駅から徒歩10分

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PROFILE

大橋知沙

編集者・ライター。東京でインテリア・ライフスタイル系の編集者を経て、2010年京都に移住。京都のガイドブックやWEB、ライフスタイル誌などを中心に取材・執筆を手がける。本WEBの連載「京都ゆるり休日さんぽ」をまとめた著書に『京都のいいとこ。』(朝日新聞出版)。編集・執筆に参加した本に『京都手みやげと贈り物カタログ』(朝日新聞出版)、『活版印刷の本』(グラフィック社)、『LETTERS』(手紙社)など。自身も築約80年の古い家で、職人や作家のつくるモノとの暮らしを実践中。

フォトグラファー

津久井 珠美(つくい・たまみ)

1976年京都府生まれ。立命館大学(西洋史学科)卒業後、1年間映写技師として働き、写真を本格的に始める。2000〜2002年、写真家・平間至氏に師事。京都に戻り、雑誌、書籍、広告、家族写真など、多岐にわたり撮影に携わる。
http://irodori-p.tumblr.com/

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