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イルミネーション日本一、花のない冬に60万人が訪れる理由とは あしかがフラワーパーク

今年初登場の「フラワーキャッスル」。光の城の周辺には3万5000本の花畑が広がる

今年初登場の「フラワーキャッスル」。光の城の周辺には3万5000本の花畑が広がる

都心から電車を乗り継いで約2時間半。田園風景が広がる栃木県足利市にある「あしかがフラワーパーク」。樹齢約150年の2本の「大藤」が合計約2千平方メートルにわたって花の房を垂らす幻想的な藤棚が有名だ。2014年には、米CNNで「世界の夢の旅行先10カ所」に日本で唯一選ばれて知名度をあげた。
見ごろを迎える4~5月には、国内外から約60万人が詰めかける。冬は、植物園にとっては集客が難しい閑散期。しかしここは、冬でも人気だ。
その理由は、“光の花”、つまり夜のイルミネーション。約400万球の光が、藤棚、バラやスイレンなどを彩る。夜景観光を広める団体の「イルミネーションアワード」で2年連続全国1位になり、今シーズンは「日本三大イルミネーション」の称号も加わった。
都心から離れ、プロジェクトマッピングなどの大がかりな技術も使っていない、花や植物を扱う施設がなぜ「日本一」になれたのか。その秘密と魅力を取材した。

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あしかがフラワーパークのシンボル「大藤」もイルミネーションによって春とは異なる表情に

あしかがフラワーパークのシンボル「大藤」もイルミネーションによって春とは異なる表情に

本業を忘れない 花へのこだわり

「イルミネーション馬鹿です」。あしかがフラワーパークの営業部長・関和勝美さんが笑いながら、紹介してくれたのがパーク管理部の長谷川広征次長。今年で16回目となるイルミネーションを開始当初から担当している。普段はキバナ藤、ロウバイなど樹木の管理が担当だ。
長谷川さんの哲学は「イルミネーションでも主役は花」。「よりリアルに」と電飾の花も形や色、背丈、間隔など微調整を何度も行い、試行錯誤を繰り返す。「イルミネーションを作るのは植物を育てるのと同じ。360度どこから見ても、違和感なくその世界に入り込んでいけるよう、リアルさにこだわります」

長谷川さんのオススメ「大藤」観賞スポットは、2本の大藤の中間点ではなく、大藤を取り囲む外周から。1本の枝から咲き誇る様子がよくわかる。「例え春の大藤を見ていなくても、イルミネーションを通じて春の大藤も体験できる空間を演出できたと思います」

長谷川さんのオススメ「大藤」観賞スポットは、2本の大藤の中間点ではなく、大藤を取り囲む外周から。1本の枝から咲き誇る様子がよくわかる。「例え春の大藤を見ていなくても、イルミネーションを通じて春の大藤も体験できる空間を演出できたと思います」

パークでイルミネーションを始めたきっかけは、園内のレストラン前での“余興”だった。「窓からイルミネーションが見えたら、忘年会や宴会で利用しているお客さんがもっと楽しんでくれるのでは、と小規模で始めました」
そこから徐々に規模を拡大していった。しかし、昼間は植物園として営業をしているので、電球の数では他の施設と勝負できない。そこで、光で花を表現しようと決めた。
園内には様々な花のイルミネーションが咲く。スイレン、ポピー、チューリップ……。しかもバラなど本物とイルミネーションがコラボレーションして楽しめるものもある。細部までリアルに再現された“光の花”は、日頃から本物に接しているからこそできること。それぞれの花の担当者がデザインをおこし、メーカーに特注し作っているため、「どこも、まねはできません」と長谷川さんは胸を張る。

より実物のバラに見えるようつくられたバラの電飾

より実物のバラに見えるようつくられたバラの電飾

冬の間、静かに春を待つ花も、イルミネーションで新たな魅力を持つことができる。例えば、パークのシンボル「大藤」。今年は、藤に取り付ける約30万球のLEDに、花びらの形をしたキャップをつけた。花びらは大藤を知り尽くした職員が花びらの形や向き、大きさなど細いところまでこだわり、特注したものだ。
取り付けも一つひとつ手作業で行い、花の房が垂れる様子も、より現物に近くなるよう長さを細かに調整した。輝きを持った花が房になり天から降り注ぐような空間は、ほんとうに幻想的だ。
「藤の房は上の方が太い。だから、電球は上の方は数を多く、下へ行くにつれ、ゆったりと付けています。垂れ方も自然に見えるよう、ピンと張ったり、たるませたり。これも、藤を日頃から見ているからこそ表現できることです」(長谷川さん)

大藤に取り付けられた花弁を形どった電飾。ライトアップ前(写真左)とライトアップ後(同右)。不自然さがないよう、リアルさを追求した

大藤に取り付けられた花弁を形どった電飾。ライトアップ前(写真左)とライトアップ後(同右)。不自然さがないよう、リアルさを追求した

春に咲いた藤の花も見とれるほど美しく神秘的。だが、光をまとった冬の藤にも躍動感がある。
「春の大藤は、静かにたたずみ、美しく咲いています。でも、1本の木が8万房の花を咲かせるには、相当なパワーがいる。こんなにパワーを使って花を咲かせているんだと思ってもらえるよう、その生命力と躍動感をイルミネーションで再現しています」

「大藤」のイルミネーションには40万球の光がともる

「大藤」のイルミネーションには40万球の光がともる

テクノロジーはあえて隠す

あしかがフラワーパークのイルミネーションのもう一つの特徴は職員総出の「手作り、手作業」。年々新しい技術が登場し、最先端技術が駆使されるイルミネーションの世界では異色だ。長谷川さんは「技術は隠します」と断言する。
「花の世界に自然に入っていけるようにしたい。『これ高いよね?』『すごい技術だね』とお客さまが言うようなことはしません」
10万球が使われた「きばな藤のトンネル」では、再現しにくい花の色を職員が一球ずつ手塗りした。色にむらがあったほうが、より本物らしさが出るそうだ。

15万球の電飾で彩られたきばな藤のトンネル

15万球の電飾で彩られたきばな藤のトンネル

今年の新作ショー「フラワーキャッスル」。もちろん、写真映えするように工夫されているが、いざ始めてみると、お客さんの反応が想定と違うことに長谷川さんは気づいた。
「大きな花火を終盤まで出さなかった。でも、花火が小さくて写真映えしない。お客さんが撮りたい写真は、私たちが思っていたタイミングではなかったようでした」
そこで、大きな花火を予定より早く出すようにプログラムを変更した。イルミネーション終了後に設けている静止時間も、音楽が終わると同時には消さず、写真を十分撮れるよう1分半→45秒→1分と反応をみながら変えていった。プログラムを外注せず自前でやっているからこそ、お客さまの反応を見て対応できている。

「花の持つ人と人をつなぐことが出来るという魅力は、イルミネーションを通しても同じように伝えられると思います」と話す長谷川さん

「花の持つ人と人をつなぐことが出来るという魅力は、イルミネーションを通しても同じように伝えられると思います」と話す長谷川さん

「フラワーキャッスル」の城は入ることができる。内部は花が敷き詰められたフォトジェニックな空間

「フラワーキャッスル」の城は入ることができる。内部は花が敷き詰められたフォトジェニックな空間

若者よりも三世代家族がターゲット

冬のイルミネーションといえば、デートの定番スポットだ。都心のイルミネーションは、確かに若い世代が目立つ。しかし、あしかがフラワーパークは少し違う。中高年の友人グループやツアー客、外国人観光客、制服姿の高校生カップル……。そして特に三世代の家族連れが多い。
植物園なので、もともと多い年配の来園者が、イルミネーションを気に入って、子どもや孫を連れて再訪する例が増えているそうだ。園側も、三世代家族連れをターゲットにしており、だからこそ、内容をわかりやすく、シンプルにするよう心がけている。
「どの年代の人でも年代を超えて『きれいだね』と隣の人と話して触れあいが生まれるような作品にしたいんです」(長谷川さん)

水面に浮かび上がる光の芸術

水面に浮かび上がる光の芸術

長谷川さんと花との出会いは、前職のホームセンターで花売り場の担当になったことだった。
「花を通じてこれまで接することの少なかった年配の人たちと話すようになって、交流が深まって。花って人と人をつなぐ魅力があるんだと気づきました。『花っていいな』とその魅力にどんどんひかれました」
その後、売り場を配置換えになったが、花の持つ魅力が忘れられず、2年後に転職した。
「人と人とをつなぐ花の魅力を、イルミネーションでも表現したいです」

冬ぼたんもライトアップ。周辺のイルミネーションが水面に光り幻想的

冬ぼたんもライトアップ。周辺のイルミネーションが水面に光り幻想的

取材した1月中旬。長谷川さんはすでに来年のイルミネーションの構想を始めていた。日本全国数多くのイルミネーションがあって、毎年いろいろな趣向を凝らしてくる。
ライバル、気になりません?
その問いに、長谷川さんは「浮気されてもいいんです。1年で帰ってきてくれれば。常に他にないものを作ってチャレンジしていくだけです」と笑った。
(写真・こだまゆき、文・&Travel編集部)

    ◇

あしかがフラワーパーク「光の花の庭」
https://www.ashikaga.co.jp/flowerfantasy_special2017/jp/
開催期間:2018年2月4日(日)まで
点灯時間:午後4時30分~午後9時(土日祝日は午後9時30分まで)
入園料:大人900円、子ども500円
住所:栃木県足利市迫間町607
アクセス:JR両毛線富田駅徒歩13分

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