京都ゆるり休日さんぽ

夏のテーブルに涼を運ぶ「観山堂」の骨董のうつわ

京都で骨董(こっとう)のうつわを探すなら、夏がおすすめです。まず、日本の古いうつわに多い「染付(そめつけ、白地に藍で絵付けした陶磁器)」は、浴衣を思わせる涼やかな風情で、夏の料理を引き立ててくれるから。また、ガラスのうつわとの組み合わせが一番楽しめるのも夏の食卓。アンティークガラスならではのレトロな色合いや型打ちのデザインが、テーブルのアクセントになります。

千円台からそろう、さまざまなデザインの豆皿

千円台からそろう、さまざまなデザインの豆皿

京都の骨董通りとして知られる新門前通に店を構える「観山堂」は、普段の食卓に取り入れやすい、カジュアルな骨董もそろう古美術店。もちろん、コレクター向けの古伊万里や茶道具も扱っていますが、千円台から購入できる豆皿など、普段使いに適した食器も充実しています。

江戸〜明治期のものを中心に古美術から食器まで豊富に扱う

江戸〜明治期のものを中心に古美術から食器まで豊富に扱う

店主の八木美由紀さんも、日頃から骨董のうつわを食卓に取り入れている一人。自身のインスタグラム(@miyuki555yagi)では、さまざまなデザインの古いうつわに、パスタやおばんざい、ワンプレートごはんなど、日常的な料理をのせて発信しています。「特別な料理は出てきません。焼いただけ、切っただけ、コンビニのお総菜の日もあります。でも、こうして盛り付けるだけでごちそうに見えるでしょう? そういう古いうつわの魅力を知ってもらいたくて、私自身の日々のごはんを発信しています」

店主の八木美由紀さんのインスタグラム(@miyuki555yagi)より。シンプルな料理を古伊万里の描線が彩る

店主の八木美由紀さんのインスタグラム(@miyuki555yagi)より。シンプルな料理を古伊万里の描線が彩る

40年ほど前に八木さんの父が始めた古美術店を継ぎ、現在は自身で買い付けも行っています。江戸〜明治期に作られた陶磁器や漆器、茶道具など骨董好きの収集癖をくすぐる品ぞろえの一方で、比較的新しい時代のもので、気負うことなく使える値段やモダンなデザインの品を仕入れることも八木さんの楽しみ。「このコップの格子模様や黄色のストライプ、なんか愛らしいでしょう?  デザインはモダンやけど、古いもんならではのガラスのゆらぎや柄のいびつさが、かえって味わい深いんです」

モダンなデザインのコップ。こちらは大正〜昭和の品

モダンなデザインのコップ。こちらは大正〜昭和の品

もちろん、200年以上の時を経た古伊万里も、古いうつわの持つ美しさを堪能できる品。細やかな描線のすべてが手描きという事実にため息がこぼれます。
明治以降に登場する「印判」という転写技術のうつわより少し値が張りますが、筆致の強弱や絵師の遊び心がにじみ出た絵柄の奥行きは、古伊万里ならでは。

手描きのため、一つひとつ表情が異なる古伊万里

手描きのため、一つひとつ表情が異なる

蛸唐草(たこからくさ)やみじんといった古伊万里に定番の文様は、「どんな料理にも合う」と八木さんも太鼓判を押します。一見、無地のうつわよりも合わせにくそうに思えますが、シンプルな料理なら絵柄が映え、少し手の込んだ料理なら背景になる。長く愛され続ける理由がわかる、万能な文様です。

珉平焼、染付、プレスガラスの豆皿を組み合わせて

珉平焼、染付、プレスガラスの豆皿を組み合わせて

幕末〜明治期にだけ作られていたという、鮮やかな色彩とエキゾチックな絵柄が独特の「珉平焼(みんぺいやき)」、図案の型を打ち付ける製法で作られた「プレスガラス」も、夏に似合う骨董のうつわ。染付の藍にビビッドな色や透明な質感を組み合わせれば、涼しげな夏のテーブルを演出できます。

プレスガラスの小皿は、菓子皿やコースターにも

プレスガラスの小皿は、菓子皿やコースターにも

「小さい頃から、うちの食卓にはいつも古いうつわがありました。毎日目にして、毎日使って、それでも飽きない。長い時を経てきたものにしかない控えめな質感や、人の手が作り出す味わいがそうさせてるんやと思います」

こちらも八木さんのインスタグラム(@miyuki555yagi)より。定番のポテトサラダをプレスガラスで涼しげに

こちらも八木さんのインスタグラム(@miyuki555yagi)より。定番のポテトサラダをプレスガラスで涼しげ

飾ったり、コレクションしたりすることも骨董の楽しみ方の一つですが、「やっぱり使ってみてほしい」と八木さんは言います。染付の色、うつわの輪郭、手仕事の味わいや絵柄の意味が、料理を盛り付けて初めて完成する……。日々の食卓に使うことでしか気付けない、普遍的な美しさがそこにはあります。

パスタやカレーに最適なサイズは、初めの1枚におすすめ

パスタやカレーに最適なサイズは、初めの1枚におすすめ

夏の食卓に古いうつわを取り入れたい理由が、もう一つ。夏の炊事は火を使うのがおっくうになりがちですが、存在感のある骨董のうつわは、冷ややっこや枝豆、そうめんなどの簡単な料理でも涼しげに、華やかに見せてくれます。シンプルな料理を最高のごちそうに見せる、100年以上前から愛されてきた日本のうつわの魔法を、ぜひ試してみてください。(撮影:津久井珠美)

【観山堂】
京都市東山区新門前通大和大路東入西之町207
075-561-0126
10:30〜18:00
水曜定休

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PROFILE

  • 大橋知沙

    編集者・ライター。東京でインテリア・ライフスタイル系の編集者を経て、2010年京都に移住。京都のガイドブックやWEB、ライフスタイル誌などを中心に取材・執筆を手がける。本WEBの連載「京都ゆるり休日さんぽ」をまとめた著書に『京都のいいとこ。』(朝日新聞出版)。編集・執筆に参加した本に『京都手みやげと贈り物カタログ』(朝日新聞出版)、『活版印刷の本』(グラフィック社)、『LETTERS』(手紙社)など。自身も築約80年の古い家で、職人や作家のつくるモノとの暮らしを実践中。

  • 津久井珠美

    1976年京都府生まれ。立命館大学(西洋史学科)卒業後、1年間映写技師として働き、写真を本格的に始める。2000〜2002年、写真家・平間至氏に師事。京都に戻り、雑誌、書籍、広告、家族写真など、多岐にわたり撮影に携わる。

くらしの美を見つめた陶工の記憶 河井寛次郎記念館

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夏休みの思い出がよみがえる 京都「梅香堂」のかき氷

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