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琉球王国の栄華を極めた首里城 世界遺産の5つのグスク(1)

琉球王国の栄華を極めた首里城 世界遺産の5つのグスク(1)

首里城の正殿。中国と日本の両国に複雑に関わってきた琉球王国らしい、独自の色彩や装飾が特徴だ

グスクとは、奄美諸島から沖縄諸島、宮古島、八重山群島などの島々に300以上築かれた沖縄地域の城のことだ。明治維新まで琉球王国として繁栄した歴史を持つ沖縄は、文化も独自。グスクもそのひとつで、本土の城とはデザインもあり方も一線を画す。御嶽(うたき)と呼ばれる祭祀(さいし)の場や拝所(うがんじゅ)という聖域があり、信仰の場も兼ねた独特の構造をしている。

世界遺産登録されている「琉球王国のグスク及び関連遺産群」を構成する九つの構成資産には、首里城、今帰仁(なきじん)城、中城(なかぐすく)城、座喜味(ざきみ)城、勝連(かつれん)城という五つのグスクの跡が含まれている。これらのグスクに迫ってみよう。

琉球王国の栄華を極めた首里城 世界遺産の5つのグスク(1)

勝連城(沖縄県うるま市)にあるウシヌジガマ。天災や戦争の時身を潜めた場所だ

沖縄を代表する観光地でもある首里城(那覇市)が、もっとも知られるところだろうか。首里城は、300以上に及ぶグスクのなかでも特別な存在。琉球王国の国王の在所だったからだ。1429年に尚巴志(しょうはし)が琉球を統一し、琉球王国が誕生。1609年に本土の幕藩体制に組み込まれてからも、1879(明治12)年に沖縄県になるまで170年存続した。首里城は政治・経済・文化の中心地、中国・朝鮮・日本をはじめ東南アジアの外交・交易の拠点となり、約450年間も国王の在所であり続けた。

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首里城の正殿は第2次世界大戦末の沖縄戦で破壊されたため、1992(平成4)年に復元された。建物は世界遺産登録されていない

独特の色彩と装飾が印象的だ。シンボルでもある正殿の壁面は、目が覚めるような鮮やかな朱色。柱には緑や群青などの極彩色で、つややかに模様が描かれている。沖縄のまぶしい日差しによく似合う、エネルギッシュな色彩に旅の気分も高まる。

首里城は中国の紫禁城をモデルに建造されたといわれ、きらびやかな彩色や龍の文様などは、中国の影響を強く受けていると考えられている。巨大な龍頭棟飾(むなかざり)、軒先の瓦にある瓦当(がとう)文様、雲型の飾瓦などのユニークな装飾など、異空間にワープできそうな造形だ。内部の構造も独特で、とくに2階の御差床(うさすか=玉座)には琉球王朝の神秘的な世界が広がる。

琉球王国の栄華を極めた首里城 世界遺産の5つのグスク(1)

出入り口の両脇には龍を柱に見立てた大龍柱と小龍柱が立ち、すべて違うポーズをした獅子が乗った高欄が並ぶ

中国の雰囲気を感じる一方で、日本らしい装飾が見られるのもおもしろい。正殿の正面に飾られている唐破風(からはふ)は、姫路城(兵庫県姫路市)や松本城(長野県松本市)をはじめ全国の城でも見られる、本土の城や神社では一般的なもの。細部の色やデザインは異なるものの、屋根の部分曲線を描く形状は同じだ。

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正殿の唐破風

正殿右側の南殿が白木づくりで日本風の建築様式なのは、薩摩の役人を接待し、日本式の儀式をする場だからだ。一方で、左側の北殿が中国風の様式なのは、中国の使者・冊封使をもてなす建物のため。琉球王国が両国と複雑に関わってきたことがよくわかる。

琉球王国の栄華を極めた首里城 世界遺産の5つのグスク(1)

南殿。国王の執務空間である書院のほか茶室や座敷もあった

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落ち着いた空間が広がる南殿には、日本庭園さながらの空間もある

グスクの大きな特徴のひとつに、なだらかな曲線を描く石垣が挙げられる。首里城の石垣で目につくのは、頂部にぴょっこりと飛び出している「隅頭石(すみがしらいし)」。グスクだけでなく、沖縄の古い民家の石垣にも用いられる技法なのだそうだ。中城城にも見られるがグスクに必ずあるものではなく、築かれた時期にもよるらしい。美しく見せるためとも、魔よけなど宗教上の理由ともいわれるが、目的は謎。ともあれ、なんだかかわいらしいフォルムにほっこりしてしまう。

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両脇の石垣に隅頭石が見られる瑞泉門。瑞泉門も、本土の城の櫓門(やぐらもん)を連想させるつくりをしている。名称は、門前に龍樋(りゅうひ)という湧水があることにちなむ

(つづく。次回は8月27日に掲載予定です)

#交通・問い合わせ・参考サイト

■首里城
ゆいレール「首里」駅から徒歩約15分で守礼門 ほか
http://oki-park.jp/shurijo/(首里城公園)

■今帰仁城
沖縄自動車道「許田」ICから約30分
http://nakijinjoseki.jp/

■中城城
沖縄自動車道「北中城」ICから約15分
https://www.nakagusuku-jo.jp/

■座喜味城
那覇バスターミナルから29番読谷線「座喜味」バス停下車、徒歩約15分http://www.yomitan-kankou.jp/detail.jsp?id=74759&menuid=11949&funcid=3(読谷村観光協会)

■勝連城
沖縄自動車道「沖縄北」ICから約20分
https://www.katsuren-jo.jp/(うるま市観光物産協会)

PROFILE

萩原さちこ

小学2年生のとき城に魅了される。執筆業を中心に、メディア・イベント出演、講演、講座などをこなす。著書に『わくわく城めぐり』(山と渓谷社)、『戦国大名の城を読む』(SB新書)、『日本100名城めぐりの旅』(学研プラス)、『お城へ行こう!』(岩波ジュニア新書)、『図説・戦う城の科学』(サイエンス・アイ新書)など。webや雑誌の連載多数。

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絶景と石垣の曲線美に酔いしれる 世界遺産の5つのグスク(2)

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