原田龍二の温泉番長

夜のとばりが股間も隠す? ノスタルジックな「ランプの宿 青荷温泉」

“温泉番長”こと俳優の原田龍二さん(撮影=岡村智明)


“温泉番長”こと俳優の原田龍二さん(撮影=岡村智明)

これまで訪ねた温泉の数は、約200カ所。「温泉との出合いは一期一会ならぬ“一期一湯”」と話す温泉番長・原田龍二さんにとって、特に印象深かった温泉をご紹介します。

今回は、青森県黒石市の「ランプの宿 青荷温泉」。その名の通り、夜はランプがともり、豊かな自然と湯量豊富な温泉を堪能できる、山間にある一軒宿です。

試行錯誤、股間を隠すベストな体勢とは?

撮影で温泉に入るときは、タオルを腰に巻かない“全裸スタイル”が僕の定番。だからこそ、絶対に股間がカメラに映りこまないようにするべく、常に気を配っています。だって、映りまくっていたら、あとで膨大な量のモザイク処理をするはめになるスタッフさんに申し訳ないですからね。

カメラの位置や水面を照らす太陽の光の反射の加減、お湯の濁り具合なども加味して湯船に腰を下ろすようにしておりまして、今回ご紹介する「ランプの宿 青荷温泉」のような透明なお湯の場合は、カメラを正面にして体育座りのような体勢になってからひざ下をクロスさせるのがベスト。というか、これ以外の形はありえません。

【写真】「ランプの宿 青荷温泉」に入浴中。原田龍二さんのオフィシャルブログへ

これまで各地の温泉に入らせていただく中で、股間を隠すベストな体勢を探していろいろと試行錯誤はしたものの、結局は交差が一番。濁っていない温泉で股間を隠すには、足の交差はマストです。

「体勢を気にするくらいなら、タオルを使えばいいのに……」というご指摘もあるかもしれません。でも、使っちゃうとこのくつろいだ表情は出せないんですよ、僕は。全裸で入浴しているからこそ、自然とリラックスした感じが出るんです。

日中は日中で、露天風呂から滝が見えたり緑が見えたりして気持ちがいいのですが、日が落ちると一転、夜のとばりがそのすべてを覆い隠します。「ランプの宿」の名前が表しているように、こちらの宿の魅力が増すのはやっぱり夜。

日が暮れると、ランプの温かな光があたりを包み込む(写真=ランプの宿 青荷温泉提供)


日が暮れると、ランプの温かな光があたりを包み込む(写真=ランプの宿 青荷温泉提供)

真っ暗闇の中、辺りをじんわり、ぼんやりと照らすランプの光……。その雰囲気がすごく好きで、ついつい長湯をしてしまいました。

旅は、少年時代の思い出の扉をガンガン開けてくれる

総ヒバ造りの大浴場「健六の湯」(写真=ランプの宿 青荷温泉提供)


総ヒバ造りの大浴場「健六の湯」(写真=ランプの宿 青荷温泉提供)

宿には露天風呂を含め、源泉かけ流しの温泉が四つあります。個人的には内湯よりも露天派ですが、総ヒバ造りの大浴場も素晴らしかったです。木のぬくもりを感じる、いいお湯でした。

訪ねた季節もよかったんですよね。僕は夏の虫の音が好きなので、どこからかヒグラシがカナカナと鳴く音が聞こえてきたときは、泣きたいような気持ちになりました。なんだか、心にしみたんです。子ども時代によく聞いていた音だから、無意識にその頃の記憶が刺激されてノスタルジックな気分になったんだと思います。

ランプは従業員が一つひとつ火をともしているという(写真=ランプの宿 青荷温泉提供)


ランプは従業員が一つひとつ火をともしているという(写真=ランプの宿 青荷温泉提供)

この宿では一つひとつのランプに油をさして火をともしているため、一歩足を踏み入れた瞬間からほんのり油の香りがします。その香りもね、子どもの頃に理科の実験でかいだアルコールランプの匂いに似ている気がして、懐かしかった。館内が薄暗いからと貸してくれた懐中電灯にも、童心を刺激されました。

そういえば、宿に行くまでに乗っていたバスの板張りの床を見たときも、「自分が通っていた小学校や中学校の床も板張りだったなぁ」とか、そんなことを思いました。

音だったり、香りだったり、風景だったり。古い記憶の扉を開ける契機になるものは、そこかしこに潜んでいるものです。起きて、仕事をして、寝て、また起きて、仕事をして――。毎日同じようなサイクルの繰り返しで、すっかり記憶の扉がさびついてしまって開けられないという人こそ、日常から離れて旅に出てみたらいいんじゃないかなぁ。

ふいに子どもの頃の自分に引き戻される感覚は、何度体験しても良いものですよ。旅は少年時代の思い出の扉をガンガン開けてくれます。僕も、お仕事で旅をさせていただく機会が増えてからは、その扉を開ける回数が増えました。

宿のすぐそばを流れる青荷川のせせらぎも、耳に心地よい(写真=ランプの宿 青荷温泉提供)


宿のすぐそばを流れる青荷川のせせらぎも、耳に心地よい(写真=ランプの宿 青荷温泉提供)

ランプのあかりを頼りに過ごす夜。電気、テレビ、携帯電話はもちろん、SNSやインターネットも使わない。今の世の中、日常からそれらを切り離すのはとても難しいですが、そんな人にこそ非日常的な気分にさせてくれる「ランプの宿 青荷温泉」はうってつけです。それを不便ととるか最高のぜいたくととるかは、その人次第だと思います。

(聞き手・渡部麻衣子)

◆連載「原田龍二の温泉番長」では、この5~6年の間、旅番組で数々の温泉を巡った温泉情報の猛者・原田龍二さんにとって、特に印象深かった温泉を隔週で一カ所ずつご紹介します。次回は東北最高所に湧く、岩手県にある温泉を予定しています。

青森県・ランプの宿 青荷温泉

あおにおんせん

日が暮れ始めると従業員がランプ一つひとつに火をともして回るという秘境の一軒宿(写真=ランプの宿 青荷温泉提供)。泉質は、単純温泉。露天風呂や総ヒバ造りの大浴場など四つの浴場があり、宿のすぐ横を流れる青荷川のせせらぎを聞きながら入浴できる。地元でとれた川魚や山菜を使った食事も人気。
住所:青森県黒石市大字沖浦字青荷沢滝ノ上1-7
電話:0172-54-8588
営業:通年営業(立ち寄り入浴は午前10時~午後3時)
HP:http://www.yo.rim.or.jp/~aoni/
料金:一泊二食付き一人9870円から(4~9月、平日の場合)。立ち寄り入浴は520円

PROFILE

渡部麻衣子

&TRAVELでは2018年4月から「原田龍二の温泉番長」を連載。

八ヶ岳山中にある露天風呂で最高の入湯体験

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