京都ゆるり休日さんぽ

京都「うね乃」で見つける和食の神髄・おだしのチカラ

じんわりとおなかにしみ入る、おだしがおいしい季節になってきました。和食の基本「だし」は、昆布やかつお節といった熟成食材からうまみを抽出するという、世界でも珍しい食文化。2013年には和食がユネスコ無形文化遺産に登録されたこともあり、奥深いうまみで味をまとめる「だし」は、世界中から注目されています。

京都「うね乃」で見つける和食の神髄・おだしのチカラ

今秋には本店の隣に工場を新設オープン予定。見学や削りたてを購入できるサービスも始める

東寺の西に本店を構える「うね乃」は、熟練の加工技術で京都のだし文化を支えてきた、創業100年を超える老舗のだし乾物店。料理人はもちろん、百貨店やグロサリーショップなどでも、「京都のちょっとええおだし」の代名詞として親しまれています。元は卸売りの専門店として市場に乾物全般を出荷していたうね乃が、「だし」に特化し、一般の消費者向けにかじを切ったのは約20年前。便利で手軽な顆粒(かりゅう)だしやだし入りみそが、すっかり家庭に普及していたころでした。

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削り節やだしパック、つゆだしなどが並ぶ店内

「私たちだし屋にできることは何だろう? と考えたときに、“食に向き合う人”を育むことだと思ったんです」。そう語るのは、卸売りから小売りへと大きな転換を図った4代目社長の妻であり、副社長の采野佳子(うねの・よしこ)さん。本店で行うワークショップや百貨店のイベントで、自ら料理をふるまいながらおだしの魅力を伝える、フレンドリーな人柄で慕われています。

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本店では常時昆布だしを用意。予約不要で試飲できる

「おだしの種類、分量や取り方など、私たちだし屋が当たり前だと思っていたことは、ご家庭ではまだまだ知られていなかったんです。でも、そうした基本を丁寧に伝え、実際に天然だしの味を体験していただくと、普段は顆粒だしをお使いの方でもとても興味を持ってくださる。料理すること、食べることを豊かにしたい人を増やしていくことが、おだしの力に気づいていただくことにつながると考えています」

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さまざまな削り節を試しながら、好みのだしを選ぶ

にこにこと明るく話しながら、本店の奥にしつらえたキッチンスペース「ODAIDOKO(おだいどこ)」で佳子さんが出してくださったのは、2種類の昆布だし。利尻昆布と羅臼昆布のだしを飲み比べ、好みの味を選びます。そこに今度は、血合いの有無や製法の異なるさまざまな種類のかつお節、まぐろ節やいわし節などを加えて試飲。そうしていくうちに、甘み、コク、後味やキレなど、自分の好みのだしの味がわかってきます。雑味がなくまっすぐに伝わる素材の風味は、天然のだしならでは。料理のベースとなるだしの味が自分好みにぴたりと決まれば、洋食や中華にアレンジしても、最小限の調味料でも、おいしく調理できるのだそうです。

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オリーブオイルやごま油を加えれば洋食や中華に応用できる

「昆布だけのおだしはあんなに昆布の風味が立っていたのに、かつお節を入れたとたんにスッと引き立て役に変わる。昆布っていい奴でしょう(笑)?  こうしてご自身の舌で体験されると、素材の個性や役割がわかって、今度はお客様から料理のアイデアをいただけるんですよ」

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家庭用の削り機も販売。削り方のレクチャーも行う

うね乃のだしはすべて、国産の素材を無添加で自社加工したもの。佳子さん含め、社員全員がものづくりの技術を身につけています。自慢の削り節は、昔ながらの鋼刃の削り機を使う職人の腕の見せどころ。表面にざらつきを残して削り出せるので、うまみや風味がより出やすい削り節に仕上がります。

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液体だしや粉末だしもすべて天然素材のみ。無添加で製造

「商品にするのが目的ではなく、台所で使ってもろて、食卓で『おいしい』と言ってもらうことが、私たちのゴール。初めて天然だしを使う方や海外の方でも簡単に、おいしくおだしを取れるよう、製法やパッケージを工夫しています。おだしの味を知っている子どもたちが、100年後も、もっと先も、この文化を伝えていってくれたら」

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うね乃の定番商品。初心者でも簡単においしいだしがとれる

家庭の味として記憶に刻まれ、豊かな味覚を育んでいくのは、ハレの日の特別な料理よりも飾らない“ケ”の日の食卓。おだしは、毎日いただくおみそ汁一杯で体験できる、和食の知恵の結晶です。和食の激戦区・京都で培われた、心と体にしみ入るおだしの力を、ぜひ体験してみてください。(撮影:津久井珠美)

【うね乃】
https://odashi.com

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PROFILE

  • 大橋知沙

    編集者・ライター。東京でインテリア・ライフスタイル系の編集者を経て、2010年京都に移住。京都のガイドブックやWEB、ライフスタイル誌などを中心に取材・執筆を手がける。本WEBの連載「京都ゆるり休日さんぽ」をまとめた著書に『京都のいいとこ。』(朝日新聞出版)。編集・執筆に参加した本に『京都手みやげと贈り物カタログ』(朝日新聞出版)、『活版印刷の本』(グラフィック社)、『LETTERS』(手紙社)など。自身も築約80年の古い家で、職人や作家のつくるモノとの暮らしを実践中。

  • 津久井珠美

    1976年京都府生まれ。立命館大学(西洋史学科)卒業後、1年間映写技師として働き、写真を本格的に始める。2000〜2002年、写真家・平間至氏に師事。京都に戻り、雑誌、書籍、広告など、多岐にわたり撮影に携わる。

本と映画をめしあがれ 商店街のカルチャー拠点「出町座」

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