イダキの音から伝わる、オーストラリア・アボリジナルピープルの自然と文化PR

「イダキ・イン・コンサートfeat.ジャルー&GOMA」でセッションするジャルー・グルウィウィさん(右)とGOMAさん(左)


「イダキ・イン・コンサートfeat.ジャルー&GOMA」でセッションするジャルー・グルウィウィさん(右)とGOMAさん(左)

里山の大地に日が暮れ、イベント会場には秋の始まりを思わせるひんやりとした空気が吹き抜ける。ステージで歌い踊るのは、腰巻きをつけ、白塗り姿のアボリジナルピープルたち。彼らの指揮者とも言える存在が、民族楽器であるイダキ(ディジュリドゥ)の音だ。イダキが生み出す重低音とその振動は、風のように、雷のように聞いている者の体に響く。会場に集まった聴衆たちは全身の感覚を研ぎ澄ませてそのメッセージを受け止めようとしているようだった。

  


イダキのコンサートが行われた会場「農舞台」

新潟県十日町市松代で9月8日に開かれた「イダキ・イン・コンサートfeat.ジャルー&GOMA」と題したこのコンサートは、今年も大盛況を博した「大地の芸術祭越後妻有アートトリエンナーレ」のひとコマ。
冒頭、イダキを演奏したのはオーストラリアから来日したジャルー・グルウィウィさん。著名なイダキ製作者であり演奏家でもある彼は、先住民・アボリジニ・ヨルング族の長老で、世界中のイダキファンより神様として慕われている。
一方、コンサート後半を盛り上げたGOMA and The Jungle Rhythm Section のGOMAさんは、日本で圧倒的な人気を誇るイダキ奏者。かつて単身オーストラリアへ渡り、ジャルーさんと生活を共にしながらイダキとその文化を学んだ。6年ぶりの再会であり、日本での共演は今回が初めてだ。
「ディジュリドゥから広がる新たなカルチャーが世界に根付き始めています。ジャルーに影響を受けて僕らが日本に持って帰ってきたり、ジャルーが旅することで世界中で進化してきたもの。そういうコンテンポラリーなものと、トラディショナルなものの対比を楽しんでほしい。(イダキの音には)ドレミがあるわけじゃない。バイブレーションを感じてもらえたら」と、GOMAさんは意気込みを語った。

ところで、イダキとはアボリジナルピープルの人々にとってどんな存在なのか。それを知るヒントが、同芸術祭で共催された展覧会「イダキ:ディジュリドゥとオーストラリアの大地の音」にある。
同展は、2017年に南オーストラリア博物館で開催された展覧会の日本巡回展で、貴重な楽器の展示や、振動でイダキの音を体感するコーナーのほか、楽器の製作過程も映像で紹介された。同展のキュレーターである、南オーストラリア博物館の人類学部長ジョン・カーティーさんが説明する。
「ユーカリの木からイダキが作られる過程は、まさにアボリジナルピープルの人々がnatureをcultureへ変貌(へんぼう)させるプロセスと言えます」

南オーストラリア博物館の人類学部長ジョン・カーティーさん


南オーストラリア博物館の人類学部長ジョン・カーティーさん

イダキは、中が空洞になっている木製の細い管楽器だ。伝統的には、ユーカリの木で作られるが、その空洞は、シロアリが幹の中心を食べることでできたもの。先住民たちは、林に入ると木をたたいて、音から中にうろができた木を探し出す。切り倒し樹皮をはがして整えたら、磨いてペイントを施す。そのようにしてできあがったイダキの形や機能は多様で、単なる楽器としてだけでなく、さまざまな儀礼と結びついている。
「実は、日本人の方々は、イダキに関心を持ってくれる人がとても多いんです。それは、伝統に対する価値観、先祖へのリスペクトなど、共感する部分があるからではないでしょうか」

蛇の模様が描かれたイダキ(ディジュリドゥ)


蛇の模様が描かれたイダキ(ディジュリドゥ)

  


様々なイダキが展示された会場内

今回3度目の来日となったジャルーさんもこう語る。
「イダキという文化を世界の人々と共有したい。イダキは目に見えない世界を物語る楽器でもあります。自然に関する物語を伝えることができる。私たちの歴史のようなもの。土地は私たちにとって聖なる存在です。土地との結びつきを持つことで、文化を形成し、アイデンティティーを持つことができます。土地そのものは先祖によって作られていますし、先祖はまるで神様のような存在なのです」
オーストラリア中北部に位置する準州ノーザンテリトリーに、ジャルーさんが生まれ育ったアーネムランドという居住区はある。6万年以上にわたって、ヨルング族が所有してきた土地で、ヨルング族の文化、精神にとって重要な場所だ。アーネムランドを訪ねるには許可証が必要で、入ることを許されている旅行業者のツアーに参加するなどの必要があるが、アルススプリングス、ダーウィン、カカドゥといった近郊の街でも、アボリジナルアートの文化に触れることができる。
現地で暮らしたGOMAさんも、ノーザンテリトリーの魅力を「なんといっても大自然が堪能できる。日本では見られないような色の魚が見られるし、夕日もすごくきれいなんです」と振り返る。
「残念ながらオーストラリアでは先住民の文化が失われつつあります。文化が失われていくのを見過ごすわけにはいきません。古代から受け継いだものを大切にしていきたい。イダキを吹き続けることは、文化を持ち続けること。楽器だけではなく、文化、言葉、夢を次世代に託していきたい」と、ジャルーさんは自身の想(おも)いを語った。

  

ジャルーさんがイダキを通じて、世界に伝えようとしているもの。それはオーストラリアの大地に立ったとき、本当の意味で感じ取ることができるのかもしれない。

※オーストラリア政府観光局の公式ホームページはこちら

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