楽園ビーチ探訪

勘違いが生んだ小さな街の灯台巡り アメリカ・ケープコッド

赤と白のツートンカラーのノーセット灯台。ポテトチップスのパッケージになっています

赤と白のツートンカラーのノーセット灯台。ポテトチップスのパッケージになっています

米国のマサチューセッツ州ケープコッドを目指したのは、勘違いがきっかけでした。

ネットで見かけた「ハリケーンポイント・ライトハウス」という灯台が愛らしく、実物を見てみたくなったのです。「婦人団体が1909年の7月4日、ケープコッドの村に寄贈した」旨が書かれたプレートの写真も出ていました。いろいろと情報が足りないけれど、現地へ行けば何か手がかりはあるはず。そう思って出発したものの、この灯台が東京ディズニーシー内の作り物だったと判明したのは、ケープコッドを訪れた後でした。

ケープコッドはマサチューセッツ州の南東部、力こぶを作った腕のような形をした半島で、外洋側には大西洋、内側にはケープコッド湾が広がっています。大西洋側は水深が浅く岩礁が多いために、かつてはニューヨークからボストンへ向かう船がたびたび座礁したそうです。

内陸へ約400メートル移動されたスリーシスターズ灯台。3基が仲良く並んでいます

内陸へ約400メートル移動されたスリーシスターズ灯台。3基が仲良く並んでいます

そこで大西洋側のルートを回避する方法として、半島の付け根部分に運河を建設する計画が始まったのが1623年、完成したのは1914年のことでした。それまでの約300年間、船の航行を見守っていたのが、半島の海岸線にいくつもたたずむ灯台でした。

毎日サンセットに合わせて国旗を降納するチャタム灯台

毎日サンセットに合わせて国旗を降納するチャタム灯台

ハリケーンポイント・ライトハウス探しの拠点に置いたのは、サンドイッチという小さな町。ドライブすると気持ちのいい、緑いっぱいの町です。並木の木漏れ日がちらちらとフロントガラス上を揺れ、手入れの行き届いた庭にケープコッド様式の邸宅が点在しています。三角屋根に白い板を重ねた外壁、観音扉の窓の、まさに「古き良きアメリカ」のイメージ通り。1639年に誕生したこの町は、北米でヨーロッパの人々が最初に移住した場所のひとつで、米国人にとっての憧れの存在なのです。

通り沿いに美しい邸宅が点在。庭を眺めながらポーチで紅茶を飲む家主の姿を想像してしまいます

通り沿いに美しい邸宅が点在。庭を眺めながらポーチで紅茶を飲む家主の姿を想像してしまいます

滞在した「ダニエル・ウェブスター・イン&スパ」も、1692年からこの地域で宿泊業を営んでいる老舗です。乗るのに台が必要な高さのある四柱ベッドや重厚感のある暖炉などクラシカルな風情を保ちつつ、大きなジェットバスなど今どきの快適性も備えたブティックホテルです。

緑に包まれたサンルームのようなダニエル・ウェブスター・イン&スパのレストラン

緑に包まれたサンルームのようなダニエル・ウェブスター・イン&スパのレストラン

このホテルの受付スタッフのカティアさんは休暇のたびにケープコッドの灯台を回っている灯台ファン。彼女のおかげで、効率よくめぐることができました。資料を集めてプリントアウトし、あるはずもない「ハリケーンポイント・ライトハウス」についても探してくれました。ウクライナ出身の彼女に「ひょっとして灯台のためにここへ?」と聞くと、「まさか、結婚した相手がここの人なのよ」。そりゃ、そうでしょう。

カティアさんが勤めるダニエル・ウェブスター・イン&スパのゲストルーム。クラシカルな印象です

カティアさんが勤めるダニエル・ウェブスター・イン&スパのゲストルーム。クラシカルな印象です

カティアさんがリストアップしてくれた灯台は個性豊かな場所ばかり。ポテトチップスのパッケージに描かれたノーセット灯台やケープコッド最古にして上ることもできるハイランド灯台、日没時に国旗を降納する沿岸警備隊の施設内にあるチャタム灯台など。灯台の役割は同じでも、見た目はそれぞれ違います。

水温の低さをものともせず、海に飛び込む中学生

水温の低さをものともせず、海に飛び込む中学生

あわせてビーチもチェック。チェアを並べてラジオに聞き入る老夫婦や、野外授業でやってきた中学生の一群など、浜辺では地元の暮らしを垣間見ることができます。ちなみにケープコッドには、全米トップ10ビーチにランクインしたコーストガードビーチもあります。

ところで、灯台情報をたくさん提供してくれたホテルスタッフのカティアさんは先日ニューヨークへ旅行したらしく、興奮ぎみのメールが届きました。「自由の女神はもともと灯台だったのよ! 知ってた?」。ケープコッドではハリケーンポイント・ライトハウスは見つからなかったけれど、ステキな灯台仲間ができました。

チャタム灯台前のビーチでくつろぐシニアのご夫婦。2人の間をラジオの軽快な音楽が流れています

チャタム灯台前のビーチでくつろぐシニアのご夫婦。2人の間をラジオの軽快な音楽が流れています

【取材協力】
マサチューセッツ州政府観光局
https://www.massvacation.jp/

ダニエル・ウェブスター・イン&スパ
https://www.danlwebsterinn.com/

ハーツレンタカー
https://www.hertz.com/rentacar/reservation/

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PROFILE

古関千恵子

ビーチライター。リゾートやカルチャー、エコなどを切り口に、国内外の海にフォーカスした読み物や情報を発信する。ダイビング雑誌の編集者を経てフリーとなり、“仕事でビーチへ、締め切り明けもビーチへ”を繰りかえすこと四半世紀以上。『世界のビーチ BEST100』(ダイヤモンド・ビッグ社)の企画・執筆、『奇跡のリゾート 星のや 竹富島』(河出書房新社)の共著のほか、ファッション誌(『Safari』『ELLE Japon』など)やウェブサイトに寄稿。ブログも配信中。

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